表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/159

第十七節 SIDE-美和-

 ミリアさんが苦悶の表情を浮かべてなにやら言いたそうでしたので、促してみたらまさかの親父ギャグが飛び出しました。


 あまりの予想外の結果に促した事を申し訳なく思いますが、後悔はしていません。


 意外な一面を披露したミリアさんですが、両手で顔を隠し崩れ落ちるとそのまま再起不能になってしまっています。


 これはそっとしておいたほうが良さそうですので、さっさと話を進めていきましょう。


「話をするにしてもこの人数では手狭になりますし、アレク君たちの部屋に行きませんか?」


「そうですね、響さん。案内します」


「すまねぇ。よろしく頼む」


 アレク君を先頭に響さん私と続き、少し間を空けて桜花さん、バルトがその後を追う形で部屋を移動しました。


 ミリアさんは…その内復活することでしょう。


 部屋へ到着するとアレク君と響さんは向かい合って座り、私は窓を桜花さんが扉を守るように佇みました。


 ネイアさんが行方不明ですので、バルトが不慣れながらも代わりにお茶の用意をしています。


 向かい合って座る二人の前に湯気を立てた紅茶が置かれると一口含むみ唇を湿らせると響さんが切り出した。


「つい先ほど桜花から連絡があってな。どうやらそちらの護衛隊長とメイドを西条の手下が攫って行ったとのことだ」


「やはり西条家でしたか」


「あぁ、それでどうやら襲撃の際にこれと言って戦闘が無かったらしいんだ」


「え?オグマはどうにかなるにしてもネイアが後れを取るとは思えません」


「護衛隊長さんよりメイドの方が強ぇってどんなんだよ。まぁそれは楓の話に繋がるんだが…」


 非常に言い出しにくそうに響さんが口ごもる。


 私はなんとなく予想がついているのであえて口を挟まない。


 アレク君も助け舟を出すつもりがないのかあえて無言で続きを促す。


 数秒の間を置いて意を決した様に頷くと響さんは続きを語り始めた。


「恐らく護衛隊長とメイドには眠り薬の一種を使って昏睡状態に陥らせたんだと思う。それから運び出されたって寸法だ」


「ほぉ楓さんがですか。それで何で西条家に攫われた事になるんですか?楓さんは南条家の御付でしたよね?」


「楓は『西条家と繋がりあり』と確認された。現状は当家すらも裏切られた状態だ」


「それの話を俺たちに信じろと?」


「正直な話なんも証拠が提示できねぇ。話だけで信じてくれってぇのが虫の良い話だってのも理解している。だけども今回の件は当家も被害者だ。どうか協力して事の解決に当って欲しい。この通りだ!」


 響さんは椅子から立ち上がると、少し下がって床に正座で座ると逸れは見事な座礼を披露した。


 着崩してた胸元からはたわわに実った果実が二つ零れ落ちそうになるのも厭わず。


 高い視線から見ているので、その双丘を確認することはままなりませんが、とりあえずこの場にミリアさんが居ない幸運を素直に喜ぶとしましょう。


 そんな礼を受けたアレク君ですが双眸をしっかりと閉じて目の前の光景を強制的に排除しつつ思考の海へと旅立っているご様子。


 いつもなら念話で相談を受けていることでしょうが、なんせ今は魔法が使えませんから自分で判断するほかありません。


 ここは成長したアレク君がどのような審判を下すか楽しみにしていましょう。


 座礼の体勢のまま不安になったのか思わず響さんがチラッとこちらを伺ってしまう程度には時間が流れるとアレク君は考えが纏まったのかゆっくりと瞼を開き静かに語り始めた。


「わかりました。俺は響さんを信じることにします」


「本当か!」


 ガバッと上半身を起き上がらせた響さんの二つの果実は重力仕事しろよと言いたくなるほどバルンと盛大にゆれた。


 あと少しでも着合わせがずれたら大変なことになってしまいそうな状態ですが、ある意味完璧なガードで守られているご様子。


 こんな鉄壁ガードの方法があるのなら前世のコスプレイヤーさん達にお教えしてあげたい所存。


 そしてやはりこの場にミリアさんが居ないことを喜ぶことにしましょう。


 さもなくば無駄な血の雨が降り注ぐことになっていたことでしょうから。


 サンドバッグ候補のアレク君ですが、こちらも慣れた物で直視しないようにスッと目を逸らしフラグを回避するとそのまま続きを語りました。


「だたし、こちらからの協力関係は無いものとしてください。流石に全面的に信用できるほど俺も馬鹿ではありませんから」


「ありがてぇそれだけでも十分だ!こちらからは仕入れた情報は全てそちらに報告させてもらう。せめてもの罪滅ぼしとして受け取ってくれ。早速でわりぃが桜花、説明を」


「はっ!」


 扉の前に控えていた桜花さんがいまだ床で正座をしている響さんの脇まで駆け寄ると片膝立ちになり片手を床に着けるとアレク君に向かって頭を垂れて報告を始めました。


「護衛隊長殿とメイド殿を捕縛した西条家の入国審査官たちは犯罪者護送の体を装って連行していきました。しかし行き先は本来の留置所ではなく西条家の本邸です」


「そいつは面倒なことになりそうだな…」


 どうやら響さんも詳細報告は初めて受けたようで苦虫を噛み潰したような表情で腕を組み思案しているご様子。


 しかしその腕組の所為でたゆんと全面に押し出されることになったたわわな実り。


 防波堤決壊まで残り2mmとなったところで流石に目に余ったのか桜花さんが立ち上がり「失礼します」と一声掛けて着合せをグイッと直しました。


 と、いっても2mmが1cm程度になったぐらいですが。


 たかが8mmされど8mm。アレク君の命の灯は確実に伸びることになったことでしょう。


 何とかまともに顔を合わせて会話できるようになったアレク君は響さんへ視線を合わせると問いかけました。


「なにか問題でもありそうなんですか?」


「問題ってほどの事じゃ…いや、正直に話そう。大問題だ。これは国家機密に関わるなんだが四条家は互いに不可侵条約を結んでいて何があろうとも本邸には手を出すことは出来ねぇんだ。これが通常の留置所であれば南条の名の下にごり押し出来たんだが、そうもいかなくなっちまった」


 響さんは心底悔しそうに「くそっ!」と悪態をつきつつ拳を床に打ち立てると室内にゴッと低い音が響き渡りました。


 丁度その時、部屋の扉が勢い良く開かれミリアさんが登場した。


「話は聞かせて貰いましたわ!」


 キバヤシィィィィィ!!!って、なんて登場の仕方するんですか。


 この後は「人類は滅亡する!」「な、なんだってー!?」のコンボでもかます気ですか。


 こんなネタ私かわかりませんよ!?


 当然、そんなことにはならず普通に語り始めるミリアさん。


「それな当家だけで攻め込んでしまえば良いじゃないですか。不当逮捕であれば正当な理由で奪還可能ですよね?」


「確かにそりゃそうだが…」


「オグマもネイアも居ませんが、ここには例え一軍に攻め入ったとしても余剰になるほど戦力満載ですよ?それに私たちの正当性は南条家さんが保障してくれましょう?」


「当家の名に掛けて正当性は保障する。しかしどれだけの戦力を保有してんだよ」


 響さんが勘弁してくれとでも言いたげな呆れたような表情でアレク君を見る。


 しかしアレク君には当然だろ?と言わんばかりの表情で返され、困惑を張り付かせる。


「まさか、本当にそんな戦力があるのか?」


「俺の口からはなんとも。ですが地下牢で見せたミリアの動きは全力の10%も引き出されてませんよ」


「ははっ…どんだけ規格外なんだよ…」


 乾いた笑いと共に呆れを通り越して響さんからは最早脱力感さえ感じてきます。


 ですが、直ぐに意識を切り換えたようにシャキッと背筋を正すと膝を叩いて豪快に宣言しました。


「良し!分かった。これから何をしようとも全て南条家が責任を持つ!父上からは色々言われるかも知れねぇが絶対に黙らせる。思う存分やってくれ!」


「『何をしても』構いませんね?」


「あぁ『何をしても』構わねぇ!」


 言葉の意味が分からないでも無いであろうミリアさんと響さんは互いにニヤリと悪い笑みを浮かべると何かの意思疎通が完了したのかどちらともなく頷き視線を外しました。


「ではアレク、美和様。『出撃』にご準備を」


「桜花!『後詰』の準備だ!」


 各々がやれる最善の行動を互いに取るところ、似たもの同志なのでしょう。


 ミリアさんが扉からアレク君に向かって歩き出し、響さんがスクッと立ち上がると扉に向かって歩き出します。


 そう広くはない室内です。


 数歩で互いにすれ違うと、二人だけにしか聞こえないような声で言葉を交わしました。


「後衛をよろしくお願い致しますわ」


「前衛をよろしくお願いするぜ」


 二人の女帝の号令で今、反撃の時を迎える。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ