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第十一節 SIDE-美和-

 アレク君が幼女を連れて帰ってきました。


 ミリアさんの話を聞く限りじゃ身請けをしてきた模様。


 何があったかは分かりませんが、ミリアさんの表情が呆れ半分喜び半分なところを見ると円満な結果だということだけは理解できます。


 それにしても留守番の幼女メイド見習い三名に加えて幼女くのいちまで手中に収めるとはアレク君もなかなかやり手のロリ道・伝道者のようですね。


 あながち私の容姿について『趣味です発言』をしたのも間違いなのではないかもしれませんね。普通そんな出来ひんやん。アレク半端ないって。


 先ほどからバルトが羨望の眼差しを向けておりますが、勤めて無視をしているようです。


 恐らく同類と思われたくないとの行動でしょうが、時既に遅し。完全に完璧に同類としての道を突き進んでおりますよ。例え本人の意思に反していようとも。


 幼女くのいちの楓さんですが、今はネイアさん連れられて部屋で寝かされているます。


 目覚めた時にパニックにならないようにとオグマさんも同席しております。


 二人を除いた私たち四人は定位置なりつつある食堂の一角を占拠してアレク君の報告を元にこれからについてを話し合っております。


「やはりというか響さんは俺たちの襲撃に関わりはなさそうな雰囲気でしたよ?」


「それは良かったですがブラフと言う事も考えられますし、最悪の場合、楓さんもスパイだと考えられない事もないので気にはしておきましょう」


「そうですね。あの行動が演技だとは思いたくないですが、念のため警戒だけは怠らわないようにします」


「そうしてください。ところでアレク君。響さんは『結界』を張ったと言ったそうですが、間違いありませんか?」


「えぇ間違いないと思います。『結界』によって室内での魔法が制限されてと言ってました。現に俺のスーツの機能が無効化されたようで急に重たくなりました」


「ふむふむ。他に気がついたことは?」


「そうですね。。確かその時に鈴の音が響いたような気がしました」


「鈴の音ですか」


 魔法の阻害が可能な『結界』ですか。


 範囲指定して魔力の集結でも阻害してるのでしょうか?もしくは精霊の行動を制限するとか?


「結界が張られた時、ミリアさんはどうでした?」


「私はこれといって違和感を感じませんでした。あとはアレクと同様に鈴の音を聴きました」


「アレク君のスーツに作用して、ミリアさんに影響なしっと。うーん。発動後の魔法に反応して消去しているんですかね?」


「俺もそう思ったんですけど、このスーツ見てください」


 アレク君はそう言うと上着の胸元を肌蹴た。


 見たところ特に外傷は見られませんね…あれ?電力が残ってる?


「アレク君…これは…」


「そうなんです。まだ電力が残っているんです。これって魔法の消去じゃなくって一時的に無効化したってことですよね?」


 なるほど、これは不味いですね。


 仮に消去であれば最悪の場合、発動し続ければ効果が得られるかもしれませんが、無効化という事になると魔法そのものが発動しない可能性があります。


 そうなれば、アレク君の戦力低下はもちろん私に至っては行動不能に陥る可能性があります。


 ミリアさんが影響なかった事を考えるとバルトやネイアさんは問題無いかもしれませんが、ここに来て私が足手まといになるとは。


「結界発動の条件が分からない以上、当面はアレク君と私は単独行動は控えるべきですね」


「俺も美和さんに賛成です」


「でしたらアレクには私が、美和様にはバルトが常に付き添っての行動でどうでしょうか?」


「それが現実的ですね。対外的にも言い訳がつきますし、それで行きましょう」


 なんとも空しい限りで。後でやけにニコニコ笑顔のバルトでストレス解消しておきましょうか。


「ネイアさんとオグマさんはもしもの時に備えて宿に待機。このまま監視も込みで楓さんに付き添って貰いましょう。アレク君から伝えてもらっていいですか?」


「分かりました。監視についてはそれとなく伝えておきます」


「それで、次の訪問は何時なんですか?」


「定例どおりに三日後の予定です」


「では、それまでに可能な限り情報収集に勤しみましょう」


 情報の共有と今後の方針が決まった私たち一同は一斉に立ち上がり互いの顔を見合いって頷くと各々それぞれの目標に向かって歩き出した。


 私はバルトを伴って、とあるお屋敷にやってきました。


 あまりいい思い出のないこの屋敷にバルトは顔を引きつらせておりますが、私は気にすることなく門横に控えている門兵に声をかけました。


「こんにちはー」


「どうしたお嬢ちゃん?道にでも迷ったのかい?」


「いえいえ、『北条忠孝』様に用があってきました。エクルストン家の者が来たとお伝え願えませんか?」


「む?暫し待たれよ」


 門兵は怪訝そうな表情を浮かべるもあからさまに外国のそれもそれなりの身なりをした少女と執事服に身を包む長身の男を只者ではないと感じたのか門前払いにせず、中へと確認に走っていった。


 暫くおとなしく待っているとご隠居の護衛の一人、刀を扱うスケさんが屋敷のほうから歩み寄ってくる。


「ご老公がお会いになるとのことだ。茶室の場所は分かるな?」


「えぇ。存じ上げておりますとも。まだ貴方に突きつけられた刀の恐怖がしっかりと残っておりますゆえ」


「はっ!戯言を」


 スケさんは私の返しがお気に召したのかニヤリと笑うと門の脇へと避け道を明けて入場を促した。


 門を潜る私とバルト。


 どこかにスイッチがあるのか今回は警報が鳴らなかったことからオンとオフの切り替えができるようですね。


 わびさびの効いた庭園を歩いていくと庭の端っこにぽつんと佇む茶室を視界に捉えた。


 先日私が突き破った扉は綺麗に修復されていた。


 修復荒れた扉を開けて少しばかり屈むと茶室の中へと入っていく。


 後ろのバルトはその長身が仇となりかなり窮屈そうに茶室へと入ってくる。


「手土産でも持参するべきでしたか?」


「いえいえ、王国の貴族様にお持ちいただくなんぞ恐れ多い。こちらで全てご用意させていただきます」


「それでは失礼します」


 私は既に用意されていた座布団へ正座をするとバルトもそれに倣い座る。


 ですが、一分もしない内に正座を解き胡坐を掻き始めました。


 正座も出来ないとは、これだから最近の若い者は…って、私もまだ若いです!ピチピチのギャルです!ナウなヤングなんです!


 私がいつものように誰にするわけでも無い言い訳を脳内で繰り広げていると、先回と同様に茶釜に視線を落としたままご老公が独り言のように問いかけてくる。


「さて、不思議な王国のお嬢さんがこんな鄙びた老人にどんな御用時ですかな?」


「お茶を飲みに立ち寄った、では駄目ですか?」


「ほっほっほっ。それは誠に光栄ながらそうはいきますまい?」


 心のそこから楽しそうに笑うと、淀みない動作でお茶を点てはじめる。


 問いかけに対してあえて間を空けるように暫くその動作に見入っていた私は無言のままのご老公からお茶を受け取ると記憶の片隅にあった作法を引っ張り出してお茶を頂く。


 地球のそれとは変わりないように感じたそのお茶に少しばかりの懐かしさが胸を打つ。


 それと同時に私の中で様々な疑問が確信へと変わっていった。


 私は見事な茶碗をバルトに回すと静かに語り始めた。


「ご老公…いえ北条忠孝様。貴方は魔族ですね?」


 私の衝撃発言に無作法にもお茶を口に含んでいたバルトがその中身をぶちまけた。


 ご老公が驚きの表情でこちらを見るが、果たして私の発言によるものかバルトの行動によるものか判断がつかなかった。


 しかし、私は気にすることなく続ける。


「最初の疑問に思ったのは始めてお屋敷にお邪魔した時です。あの門は『人類以外の魔力』に反応すると言いましたよね?」


「え、えぇ確かに言いました」


「こう言ってはなんですが私も人類ではありません。ではなぜバルトだけに反応したのでしょうか?」


 ご老公は黙して語らない。


「答えは簡単です。私がご老公の『直後』に門を潜ったからです」


 腕を組み、目を閉じるご老公。その口も横一文字微動だにしない。


「先ほど知ったことですが、あの門はオンとオフが切り換えれるようですね。となると私があの時門を潜った時に警報がならなかった理由はただ一つ。警報が『オフ』になっていた以外に考えられません」


 一拍置いた私はその小さな右手でブイサインを作るとご老公に向ける。


「この二つが意味することはなんでしょうか?北条忠孝様。もう一度問います。貴方は魔族ですね?」


 ご老公の右眉毛がピクリと動くとまた茶室には静寂が訪れました。


 誰も動くことが許されないと錯覚してしまうほどの緊張が走っています。


 やがてご老公の双眸がカッと見開かれるとその容姿からは想像も出来ないほどの甲高い声が茶室に響く。


「あはははははは!あーあ、バレちゃいまーした。結構自信あったんでーすけーどねー」


 ご老公が眩い光に包まれ、その光が晴れる頃にはご老公の姿はなく、金髪碧眼の女性が座ってました。


 年齢的には丁度、ネイアさんと同じくらいでしょうか?


 見た目麗しいその女性。しかしその側頭部からは羊のそれに似た角がしっかりと生えております。


「『はじめまして』で合ってますか?私は『テレーゼ=ロズゴニー』と申します。今後ともよろしくお願いしまーす」


 どこかイントネーションのおかしい日本語を操る美女はそれはそれは楽しそうに自己紹介を始めた。


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