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第二節 SIDE-美和-

 さてはて陰陽道ときましたか。


 皇国とやらの歴史が日本に酷似していることを考慮にいれるともしかすると建国当初から異世界人が関与していた可能性もあります。


 ほかの可能性があるとすれば鎖国開始時か開国時が濃厚ですね。。


 皇国建国時だった場合、歴史が正しければ七百年ほど前に転生した人という事になります。


 私とバルトの世代がほぼ変わらないことを考えると元の世界とこの世界の時間軸はそれほどズレが無い様に思われます。


 そうなると当時の日本は14世紀頃、鎌倉時代から室町時代に当ります。


 その頃の有名な陰陽師といいますと、超有名陰陽師の安倍清明さんから数えて14代目の安倍有世さん。


 安倍家の分家にあたる土御門家の基礎を築いたといわれている方で、公卿である従二位にまで上り詰めたとも文献に残ってます。


 ある意味物語として有名な清明さんより現実的に有名な有世さんと言ったところですね。


 陰陽道を謳ってるわけですから恐らくこの辺りの方が皇国の建国時に英霊として降臨したと考えたほうが良さそうです。


 流石に当事者は亡くなってるでしょうし、それに伴い英霊様もお帰りになられていることでしょう。


 と、なると名称だけが残ってしまったパターンですかね。


 もしかしたら英霊として再降臨なさっているかもしれませんが、時代が違いすぎて同じ転生者だとしてもきっと話も合わないでしょう。


 ぶっちゃけ元の世界に居たとしても七世紀も違えばある意味で異世界ですよ。


 ただ当時の最先端『技術』の陰陽道とやらがどのようなものであったか研究者として興味ありますので、一度お話くらいは聞きたいなーとか思ってました。


 えぇ思って『ました』なんです。


 なぜこんなことになったのか、少々お時間いただきましてご説明させて頂きたい所存。


 急ぎ屋敷に帰って出立の準備をしていたアレク君一同は準備が遅くまでかかってしまった事もあり明朝出発することに。


 今回の出向は貴族として出なくあくまでも研究者としてですので、メンバーはアレク君、ミリアさん、ネイアさん、バルト、オグマさんの五名。


 セイルちゃん等他の人は屋敷の維持やその他雑務の為お留守番です。


 誕生日を向かえ、十一歳になったというのにほっぺを膨らませて拗ねるセイルちゃんはそれはそれは可愛いお人形のようでした。


 馬車に乗り込み王都を出たのが十三日前。途中の村々で休憩しながらの旅でしたので随分と時間が掛かりました。


 それにしても魔法があるのにいつまでたっても交通手段が発達しないのはなぜなんでしょうかね?


 何か見えざる力でも働いているんですかね?


 王国と皇国の国境までやってきた私たちは何事も無く関所を通過。


 そこからは馬車を飛ばして二日、皇国の首都にあたる都まで到着しました。


 強行スケジュールだったこともあり、一同はへとへとで着任の挨拶はまた明日ということで宿をとりそれぞれに分かれて宿泊することにしました。。


 私の目に映る都の町並みは資料で見た十六世紀頃の日本文化を中心にところどころ独特な進化を遂げたであろうどこか違和感があるもののどこか懐かしい空気がしました。


 バルトも同じように感じたのか物珍しそうに周りを見渡しながら歩いていました。


 私も自動人形に憑依していたので二人してアレが懐かしい、コレは無かったなと話をしながら不思議な雰囲気の楽しみながら町並みを進んでいました。


 執事服を着込んだ長身の男とゴシックドレスを着込んだ幼女が仲睦まじくあるいている姿は周りの目にはどう映ったのでしょうか?恐らくどこか外国のお貴族様の娘が執事をお供に遊びに来たとでも思われていたのではないのでしょうか。


 開国後、国交があるとは言え洋服が珍しい町並みです。さぞ目立ったことでしょう。


 普通の住民からは奇異の目で見られる事もしばしば。当然、普通でない住民からも。


 私たち二人はそれに気が付くと「はぁ…」と小さくため息をつくとあえて人通りの少ない路地を選び入り込みました。


 すると路地に入ったのも束の間、私たちの行く手を阻むように三人の男が立ちふさがりました。直後、タイミングを見計らったように後方からも四人の男が後をつめてきます。


 総勢七人の大歓迎。見た目正しく荒くれ者。予定調和よろしくゲスな台詞。もう少しどうにかならなかったのか申し訳程度の刃物。栄養状態が良くないのかあまりにも悪い顔色。


 どっからどう見ても強盗の類でした。


 折角の楽しい気分を台無しにされた私たちの怒りのボルテージは最高潮まで高まってました。その表情はさながら金剛力士像のようであったことでしょう。


 私は怒りの感情を爆発させると前方の三人へ飛び掛り顔面を踏みつけるように蹴りを三発。


 数秒の浮遊ののちドサッと背中かから倒れ込む悪党三人。


 私が着地をして後ろを振り返ることにはバルトが後方の四人のうち先頭にいた一人の腹部へに横蹴りをぶちかますとボウリングのように後方の三人を巻き込みつつ吹き飛んでいきました。


 私たちはどちらとも無く無言で歩み寄るとハイタッチ―片方は全力で背伸び、片方は肩口くらいに手を掲げ―を交わします。


 辺りにパンッと軽快な音が響きました。


 後方の四人が吹き飛んだ先から新たな人影が現れました。


 強盗の増援かと思った私たちは再び戦闘準備のために構えをとりました。


 しかしそこに現れたのは体格の良い二人をお供に山吹色の頭巾を被り、同色の着物を着て、その上に臙脂色のチョッキを羽織り、さらには杖を突くご老人でした。


 その姿はさながら某世直し時代劇のご老公のよう…というかそのまんまでした。


 左右に控えるのはスケさんですか?カクさんですか?あえて漢字は使いません。いろいろと大人の事情がありますので。


 そこからの展開は説明するのが憚れますが、簡単に申し上げますと起き上がった強盗が一行に襲い掛かるとご老人の「懲らしめてやりなさい」の一言で戦闘が始まったり、頃合を見計らって家紋の描かれた手のひらサイズ小物入れを懐から出したり。


 その家紋を目にした強盗たちが「ははー」とひれ伏す頃には見た目完璧な同心が現れ、七人全員を連行していきました。


 私たちは完全に蚊帳の外でしたがこれだけは間違いなく言えます。


 皇国には転生者が居ます。それも割りと近い世代の。


 見事事件解決へと導いたご老公は「ほっほっほっ」と笑うと私たちに同行を求めました。


 出来ることならば直ぐにアレク君の下へ戻り事の顛末を報告したかった私たちは当然お断りしましたが「それではお茶だけでも」と引き摺られるように連行されました。


 抵抗むなしく平屋造りの豪華な屋敷までつれてこられた私たちはこれ以上の抵抗は無駄になると不承不承お呼ばれすることにしました。


 屋敷へ向かう門をバルトがくぐったところで何処からとも無く警報が鳴り響き、視線の一点集中攻撃を受けることとなりした。


 訳も分からずあたふたしていると鋭い目つきをしたご老公から「お話を聞かせてもらえますかな?」と一言いただくとバルトは両脇をお供の二人に抱えられどこかへ連れていかれてしまいました。


 私はご老公に手を取られ気が付けば豪華な茶室でお茶を頂いているところ。


 相対しているご老公は物腰こそ柔かいですが、これは確実に監禁されているなーというところで現在に至ります。


「お嬢さんは王国から来られたお方だとお見受けいたしますがいかがですかな?」


「えぇそうです。王国の貴族セイル=エクルストンと申します」


 今回はお留守番なのを幸いにセイルちゃんを語らせてもらうことにしました。


 なんせ私はこの世界に戸籍なんぞ存在しませんから、下手に偽名を使うよりも実在する人間に挿げ代わったほうが無難だと判断しました。


「これはご丁寧に。儂は『北条忠孝』と申す者。それで皇国へは何用で参られました?」


「義兄のアレク=エクルストンが王国からの技術支援の為に出向してきました。私はそのお手伝いにと」


「それはそれは。お若いのに良く出来た方で」


 ご老公はほっほっほっと一頻り笑うと目を細め本題を切り出した。


「して、あの者は?」


「私の執事をしております者で名はバルトと申します」


「ふむ、それ以外には何もないと?」


「義兄よりお預かりした大切な僕であること以外には何も存じ上げておりません。それにこのような仕打ちを受ける理由も全く持って理解できません」


 私がキッとにらみ返すと、ご老公は細めた目を見開き一瞬だけ驚いた表情を見せると直ぐに破顔した。


 にこやかな表情を浮かべるとこちらを諭すように静かに語り始めた。


「そうカッカされるな。この屋敷に備わった門ですがな、原理は機密ゆえ割愛させていただくが、あれは人類以外の魔力に反応するように作られておってな」


 ご老公はそこまで語ると今まで横を向くように茶釜へ向いていた視線を体ごとこちらへと向ける。


「お嬢さんのお供…バルトと申しましたかな。あの者に反応してしまった以上、どうしても取調べを行わねばならんのですよ。それがこの皇国を守る陰陽師の役目というわけでして」


 ご老公は全てを見透かしたような視線を私に向けると再び問う。


「それを踏まえた上でもう一度お聞かせ願おうか。お嬢さんはどなたかな?」


「くっ!」


 自らの失態に気が付いた私は急ぎ立ち上がると茶室の扉をぶち破りつつ外へと飛び出した。


 無理な体勢で飛び出した為か茶室の直ぐ傍にある石畳の上へと座り込むような体勢で着地した。


 刹那、私の首筋には一本の刀があてがわれていた。


 少しでも動けば首が飛ぶ。そう悟った私は動く事もままならずその体勢のまま硬直することになった。


 私が吹き飛ばした扉からゆっくりとご老公が姿を見せる。


 そして三度私へ問う。


「お嬢さんは何者かね?」


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