エピローグ SIDE-アレク-
「以上が今件の本末でございます」
俺はミリアとセイルを伴って始めて入室した謁見の間で英雄王へ事件の詳細を報告していた。
いくら改心したとはいえ、王の御前に魔族を連れて行くわけにも行かずライコフは馬車で留守番だ。
黒幕のパクは兵士へ引き渡し牢へ投獄さえてている。
帰路の途中何度か目を覚ましたけどその度にセイルによって強制的に静かにさせられていた。
「なるほど。ではそのライコフをここに連れて来て貰えんか?」
「え、英雄王様!流石にそれは危険かと!」
英雄王様の脇で控えていた大臣が驚き、嗜める。
「そうか?アレクの話では改心したそうではないか。どうなんだアレクよ?」
英雄王様はニヤリと笑うと俺へと問いかける。
その横では大臣が願いを込めた視線を送ってくる。
大臣すいませんと、俺は心の中で大臣へ謝っておく。
「なにも問題ございません」
そう言い切った。
盛大に笑う英雄王様とがっくりと肩を落として落胆する大臣。
程なくしてライコフが謁見の間へと連行されてきた。
両腕は後ろ手で拘束こそされているがそれ以外は特に強制されている様子は無い。
恐らく英雄王様のご配慮によるものだろう。
俺の隣まで連れてこられたライコフは自ら跪き敵意のないことを示した。
堂々とした態度ではあるが俺からだけはその膝が震えている様が良く見えた。
「さて、ライコフよ」
「はっ!」
「此度のそなたの所業は許されざる行為であることは間違いない。しかし報告を聞く限りではそなたもまた被害者であった事も理解できなくも無い」
静かに英雄王様の言葉を受け止めるライコフ。
「ある程度の減刑は認めるが無罪とはしては少女たちに面目が立たない。よってその命続く限り無期限で強制労働に従事することを刑とする!」
「ははっ!謹んでお受けいたします!!」
ライコフは全てを受け入れた。そしていつの間にか膝の震えは止まっていた。
「まぁそう急くでない。儂の判決はまだ終わっておらんぞ?」
「はぁ?」
覚悟を決めて判決を受け止めたつもりだったライコフはまだ続きがあることに思わず声が漏れた。
英雄王様はまるでいまから取って置きのイタズラをしはじめるような笑顔を顔一杯に貼り付けると宣言する。
「強制労働先はアレク、そなたに一任する」
俺とライコフは謁見中にも関わらずその顔を上げて互いに見合った。
英雄王様の言葉を何度も頭の中で繰り返し理解するまで反芻しなんとか数秒後にはストンと胸に落ちるように言葉が染み込んだ。
俺たちは慌てて頭を垂れると二人同時に大きな声で宣言する。
「はっ!拝命いたします!!!」
ライコフの足元に二粒の雫が毛足の高い絨毯を濡らしている。
そのシミはどんどん広がっていくが俺は見て見ぬ振りをした。
「時にアレクよ」
「はっ!」
「今回の事件解決に対し褒美を授けよう。王都内に王家所有の屋敷がある。その内の一つをやろう」
「はっ!ありがたき幸せ!」
「それともう一つ。面を上げよ」
英雄王様はそこで言葉を区切ると大臣に目配せを送る。
大臣は何かを手に持って俺の前までやってくる。
手に持つ羊皮紙をくるくると広げると声高らかに読み上げる。
「アレク=エクルストンならびにその妻、ミリア=エクルストンを本日付けで王宮付き研究所『錬金宮』への入所を命ずる!」
研究所へ入所!?俺が!?
しかも王宮付きだって!?
あまりのことに呆けていると大臣が続きを読み上げた。
「また、その研究内容は我が王国にとっても秘匿性が高いことから自宅での研究を認めるものとする!」
読み上げが終わった大臣は羊皮紙をくるくると元に戻すと、
「英雄王様たっての希望だ。受けてくれるな?」
と、一言添えて俺へ差し出した。
俺は差し出された羊皮紙を、
「喜んで拝命いたします!」
と震える両手で受け取った。
こうして俺、アレク=エクルストンは王宮付き研究所『錬金宮』への入所が決定した。




