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第五節 SIDE-アレク-

「おぉ!アレク!無事に戻ったか!!」


「うん!」


 教会の出口で父さんを見かけた時、思わず安心感と喜びで走り出してそのまま飛びついた。


 父さんはそんな僕をがっちりと抱きとめてそのままくるくると回り出した。


 昔よくやってもらった遊びだ。


 ここ最近はちょっと恥ずかしくてやって貰ってなかったけど、やっぱり楽しい。


 僕達は暫くのあいだくるくる回って再会をかみ締めた。


 短い時間ではあったけど、僕にとっては今後の人生を大きく変える大冒険であったのは事実だ。


 父さんもそれを良く分かってくれているだろうから、父さんの気が済むまで回されようと思った。


 視界の端でビッタンビッタンとのた打ち回っているミワさんを見つけるまでは。


「父さん!ストップストップ!!」


「うん?どうした?気持ち悪くなったか??」


「いや、そうじゃないんだけど、説明するから一旦下ろして」


 僕は父さんから開放されて、精霊降臨の儀から今までの話を掻い摘んで説明した。


「はぁぁぁぁ!?英霊様が降臨したぁぁぁぁぁ!?しかも新しい系統の可能性もあるだってぇぇぇぇ!?」


 そういう反応になるよね。うん。知ってた。


 儀式の最中は僕も混乱の頂点を一瞬にして突破してたし、ミワさまのアレな状態もあってむしろ冷静になれたけど、説明だけ受けると衝撃の事実が多すぎて何から処理していいか分からないくらい驚くよね。


 多分、父さんの反応が普通なんだと思う。


「父さん。気持ちは分かるけど、とりあえず落ち着いて」


「あぁ、いや、ん?うーん。うん。分かった。いや、理解は出来ないが、とりあえず分かった」


 あちゃーまだ完璧に混乱してるね。


 これはあえて、新しい系統が他の系統のほとんどを跨ぐってのは説明しなくて正解だったかも。


 おいおい間を空けてじっくり説明することにしよう。


「新しい系統って言っても基本は第二系統の治癒になるみたいだからそこまで気にしなくてもいいみたいだよ?」


「そ、そうか、治癒か。アレクが望んでた系統に近くてよかったな。」


「うん!」


 父さんはまだ引きつる頬を無理やり笑顔に変えてる。


 そんなに無理する必要ないのに…僕が儀式を終えたばかりだから気を使わせちゃったかな。


「ところでアレク。その英霊のミワ様はいまどの辺にいるんだ?」


「ここにいるよ」


 僕は右斜め後ろを指差した。


「そうか。ミワ様。どうかアレクをよろしくお願いします」


 父さんが僕の指差した方向におじぎをしつつ、ミワさんに挨拶をする。


「……………」


 当のミワさんはさっきの、のた打ち回りでダメージを受けたのかお腹を上にして漂っていた。


 その様はまるで死んだ魚のようだった。


 ちょっと待ってみたけどもちろん無反応。


 もしかして本当に気を失ってる?


「…お、お任せくださいだって」


「おぉ、それはありがたい」


 ごめんなさい。父さん。僕は嘘をつきました。


 とてもじゃないけどこの情景を説明出来るものじゃないし、したくない。


 なんかものすごく情けない英霊様なんだもん…


 それでも、ごまかしはうまく言ったようで父さんは笑顔で喜んでくれた。


「なぁアレク。せっかく英霊様が降臨なされたんだ、ここらで一発、魔法でも使ってみたらどうだ?」


「えぇ!?」


 まずい。ミワさんは気絶してるっぽいし、まだ何一つ魔法を教えてもらってない。


 魔力の制御すら分からないのに魔法なんか使えるわけがない。


 どうしよう。どうしよう。どうしよう………そうだ!


「ぼ、僕は儀式が疲れたから、は、はやく家に帰りたいなーなんて」


「ん?そうか?それじゃ家に帰るとするか!」


「う、うん。そうだね!帰ろう!」


 一行は意気揚々と帰路に着く。


 ぷかぷかと浮かぶ約1名を除いて。


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