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第十節 SIDE-美和-

 ただいま絶賛説教中でございます。


 激おこモードアレク君の言うことにゃ、


「人質が居るのになんてもの打ち込むんですか!?」


 とのこと。


 私的にはフッ化重水素レーザーによって射出された赤外線を可視化しただけのつもりなので、人体に当ったところで無害もいいところ。


 ちょっくら某霊界探偵の真似はしましたけど、そこは若気の至りという事で。


 私だって伊達にあの世は見てませんからね!


 そう説明したところでアレク君の怒りは収まるところを知れず。


 むしろその炎はより勢いを増しているような気がします。


 一緒に地上に降りてきた魔族も居場所無さげにオロオロしてますよ?ついでに王女様も目を覚ましたようで、魔族のとなりで一緒にオロオロしてますよ?。


 そりゃお二人(一人と一匹?)にしてみれば私の姿は見えないわけですから、アレク君の一人芝居を見ているような感じですから余計にどうしたら良いか分からないでしょうね。


 それにしてもそろそろこの説教も終わってもいいんじゃないかーと思う今日この頃。


(あの、アレク君?)


「なんですか!!」


 おぉう。まだ激おこぷんぷん丸ですよ。それでも勇気を出して進言しましょう。そうしましょう。


(あちらの方々がどうしてよいか迷っておいでですよ?)


 怒りに我を忘れていたアレク君ですが、私がお二人(魔族と人質王族)を指出すとようやく状況を思い出していただけた様子で、魔族へ向き直り臨戦態勢をとりました。


 それに対して、魔族は肩を竦めると王女様へ行けと促し、アレク君の下へと歩かせました。


 なんとも人間臭い動きをする魔族なようです。


「もともとあまり乗り気な任務でなかったのでな。こんなところで死にたいとも思えないし、妨害に遭い任務失敗ということにするさ」


 キャーシャベッター!


 …ネイアさんみたいな前があるわけですから喋れても不思議はありませんね。


 ぶっちゃけ人類と魔族の違いなんか外的要因だけで、角と羽さえ隠せばほぼ同じですもんね。


 あとは魔力発動時に瞳が変化するくらいですか。


「そうか、こちらとしても人質が無事であればこれといって問題はない。出来れば理由を知りたいところだが」


「すまないがそれは勘弁してもらおう。流石に軍務に関わる機密を明かすわけにはいかん」


「そうか。まぁ無理にとは言わないさ」


 こちらまで歩いてきた王女様を背に隠し、少し距離を置きながらも平和的に会話が続いています。


 一応、魔族さんからのせめてものお詫びなのか個人的な行動ではなく『軍務で動いている』事はもらしてもらえたわけですし。


 それはアレク君も気が付いたのかそれ以上追及する姿勢は見せない。


「それで、これからどうする?」


「任務に失敗したからといって直ぐに殺されるわけでもないし、このまま自国に戻るとするさ」


「魔族に対してこんなこと言うのも変な話だが、気をつけてな」


「はっはっはっ、まさか人類から行く末を心配されるとはな!これは傑作だ!」


 魔族さんがお腹を抱えて大笑いしています。


 いままで出会ってきた魔族と違い、まるで人類を相手にしているような錯覚に陥るほどです。


「随分と変わった人類も居たもんだ。これも何かの縁だ。名前を聞いてもいいか?」


「あぁ構わん。俺はアレクという。変わり者だとよく言われるさ」


「だろうな。アレクか。覚えて置く。俺は」


「ライトニング・ボルト!!」


 こんな形で出会わなければ良い友人になれたであろう人間臭い魔族はその名を告げることなく、空から響いた第三者の声によって召還された大きな雷に飲み込まれた。


 少し距離があるとはいえ目の前に現れた巨大な閃光をまともに見てしまったアレク君はその視界を完全に奪われているようでした。


(アレク君!?大丈夫ですか!?)


(すいません美和さん!目がやられました。治癒をお願いします!)


(了解です!)


 相手に悟られないよう咄嗟に治癒魔法を生成し、無詠唱で完成させる。


 視力が復活したアレク君はまだ少し眩しいのか目を細めながら空を見上げて誰何する。


「誰だ!?」


 十mほど上空で滞空していた人影は小馬鹿にするように笑いを含めて応える。


「ふん、誰かと問われて素直に答える者は少なかろう。まぁ良い、せめて地獄で自慢できるよう我が名を心に刻んで死に逝くが良いわ」


 なにやらどこかで聞いたことがあるような言い回しですね。


「我は魔族十三貴族のうちの一つ。ペーツェル家のライコフ!さぁ恐れおののくが良い!!」


 思い出しました。この前のハルトリッヒさんと同じような方なんですね。


 こちらは無駄に暑苦しいテンションですが。


 しかもダブルスーツに襟高のマントって映画に出てくるようなTHE・吸血鬼って感じの格好する人この世界でもいるんですね。


 アレク君達が日頃は割りとラフな感じなので、こんな形式ばった格好はあまり見ません。


 もしかしたら人類と魔族では感覚が違うのかもしれませんね。


 ライコフさんは名乗りを上げると満足したのかゆっくりと地上へ降りてきました。


 ふと私と視線がぶつかったような気がしましたが、気のせいでしょうか?


 なんせ私は英霊ですから同じ英霊か精霊でなければ見えないはずです。


「おい。そこのお前!」


 暑苦しいライコフさんはアレク君を指さして…いや、ちょっとずれてる?


 不思議に思った私がアレク君から離れるように横にスライドしてみました。


 するとライコフさんの指が私を追随してくるではないです!


「なぜ、逃げようとする。そこのAVに出てくるよな保険医の格好をした痴女!」


「ち、ち、ち、痴女とはなんですか!痴女とは!!」


「どっからどう見ても痴女ではないか。もしくは『この変態』とでも言えば良いか?」


「へ、変態って…あなただって吸血鬼テイストバリバリな格好じゃないですか!中二病のお子様ですか!?」


「なっ!中二病って!ちゃ、ちゃうわボケェ!!」


「私だって転生して三年経ってようやく自分の格好に踏ん切りがついてきたというのにコイツは…って、何で会話が成立してるんですか!?」


 私はあまりにも自然に会話が出来ていることに驚きを隠せなかった。


 見えるだけならまだしも普通に会話ですよ!?ありえないですって!!


「お互い公用語なのだから会話が成立して何がおかしい?それよりもお前はなぜ宙に浮いているのだ?」


「なぜって、私が英霊だからですが?」


「………なぜ、英霊と会話が成立するのだ!?」


「だからさっきから私がそう言ってるでしょうが!!!」


 その場はまさにカオスと言って差し支えない状態でしょう。


 当事者でないアレク君と王女様は静かに事の顛末を見守ってますが、おそらく内心は混乱の渦の中であることでしょう。


 特に王女様には私の声は聞こえないのでより一層混乱していることでしょう。


 それにしてもコイツ私のことをAV保険医呼びしやがって…ん?AV?保険医??どちらも私の世界での言葉ですが!?


 まさかこの中二病吸血鬼魔族のライコフさんは私の世界の知識をもってらっしゃる?


 いや、もしかして転生者!?


(神様ー!かーみーさーまー!!)


(はいはい。お久しぶりでございます。いかがなされました?)


(あっ、どうもご無沙汰してます。ちょっとお聞きしたいことがあるんですがよろしいでしょうか?)


(私に答えれることであれば)


(単刀直入にお聞きしますが、この世界って私以外に転生者って居たりします?)


(私の管轄では最上美和さんだけですが、他の者の手によって送り込まれた可能性がございます)


 天界にも管轄とかってあるんですね。なんか一気に神々しさが無くなった感じがします。


(そうですか。ありがとうございます)


(いえいえ、この程度であればまたいつでもどうぞ)


 プツンと通信が切れるよな音とともに交信を終えました。


 なんにせよ本人に聞いてみましょう。なんかライコフさん馬鹿っぽいですしうっかり口を滑らせてくれるかもしれませんからね。


「ライコフさん。ライコフさん」


「む?何用だ?」


「ライコフさんって転生者ですか?」


「あぁ、そうだが。それがどうしかしたか?」


 あっさり認めてくれました。


 馬鹿なのか、素直なのか判断に困るところではありますが。


 いつの時代か分かりませんが、転生者である以上前世の知識を持っているわけですから相手にするには非常に厄介です。


 ここは情報を取れるだけ取ってさっさと逃げ出すに限りますね。


 そうと決まれば即実行です!


(アレク君。この魔族は非常に厄介な相手ですよ)


(そのようですね。まさか美和さん以外に転生者が、それも魔族だなんて)


(ですので、私はこのまま会話を続けて奴から情報を取れるだけ取ります。アレク君はいつでも逃げ出せるように準備しておいてください)


(わかりました。お願いします)


 さて、なにから聞きましょうか。


 私をAV保険医呼ばわりしたことを後悔させてやりますとも!


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