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第四節 SIDE-美和-

「わかりました。では間を取って『おねぇちゃん』で手を打ちましょう!!」


「「………え?」」


 私ってば学習しない女ぁぁぁ!!


 司祭様(幽霊)もアレク君も再フリーズしちゃってんじゃん!!


 生前は兄しかいなかったもんで、アレク君みたいな可愛いショt…じゃなくって弟が欲しかったんだよね!


 そしたら思わず出ちゃったよ。口から出ちゃったよ。欲望が。


 なんとかこの場の収拾をつけたいところだけど、正直どうしていいか分かんない。


 だって私も絶賛大混乱中だから。


 こういうの『カオス』っていうんだね。身を賭して実感したわ。


 だからごめんなさい。謝るから誰かどうにかして!!


「そ、それでは間を取って『ミワさん』はいかがでしょうか?」


 司祭様ナイスフォロー!ちゃっかり私の発言を無かったことにして更に完璧な提案。


 ありがとうございます!!さっきから何度かありがとうございます!!


「え、あっ、はい。分かりました。『ミサさん』でいかがでしょうか?」


 司祭様の提案に巧いこと乗っかるアレク君。


 君もなかなかコミュ力が高いね。お姉さんは関心したよ。


「そ、そうですね。それでは『美和さん』でお願いします」


 アレク君を見習って司祭様の提案に乗っかる私。


 それから私とアレク君は司祭様に一言お礼を言って儀式の間から出て行く。


 扉の前で受付のお姉さんとやらが待ってた。


 話によるとアレク君とここまで案内してきてこれから出口まで一緒に帰るらしい。


 この女は私の敵だ。間違いなく敵だ。


『私の』アレク君から『お姉さん』とか呼ばれてるし。なにより隣に並んで楽しそうに話し込んでる。


 さらには私のことをガン無視しやがる。


 私が会話に入ってもシカトするし、目すら合わさない。


 因みに今の私はアレク君の1mくらい後ろで地上2mくらいの高さに浮いてる。


 驚いたことにアレク君が移動すると自動的に追尾するみたい。


 オートマチック・ストーキング・システムって最高かよ!!


 結局、儀式の間からの道のりは階段を上って扉を二つほどくぐった先まで続いた。


 最後の扉をくぐるくらいにアレク君がおそるおそる受付のお姉さんに尋ねる。


「あの、お姉さん…」


「はい?どうしました?」


「さっきからミワ様が話かけてるんですけど…」


「え!?英霊様が!?どこ?どこに居るんです!?」


 …あれ。これってもしかして私のこと見えてないし、言葉も聞こえないパターン?


「もしかしてお姉さんはミワ様のことが見えないの?」


 ナイス!流石は『私の』アレク君。


 もうすっかり以心伝心だね!


「えぇ。アレク君も私の精霊様が見えないでしょ?それと同じで英霊様もその身に宿した人としか意志の疎通が出来ないんですよ」


 そーなのかー私からは受付のお姉さんとやらにまとわり着いてる緑色の妖精っぽいのは見えてるんだけど。


 もしかして、英霊と精霊はお互いコンタクトとれるんじゃない?


「もしもーし。そこの緑の妖精さんやーい」


 物は試しで妖精さん(緑)に話しかけてみた。


「はい?なんでございましょう?」


 おぉ!やっぱり喋れるじゃん!!


「いえ、特に用事はないんですけど、妖精さんと話せるかなーと思いまして」


「そうですか。では出来るだけ話しかけないでください。精霊の取り決めでは緊急時以外は精霊同士のコンタクトは禁止されておりますので」


「えっ、ご、ごめんなさい」


 全長30cmくらいの可愛らしい妖精さんに怒られてしまったよ。


 まぁ知らなかったことだし、これからは気をつけよう。


 それはそうと意図的に無視してたわけじゃなかったのか受付のお姉さんとやら。


 勝手に敵視してちょっとだけ、ほんのちょっとだけは申し訳ない気がしてきた。


「でもミワ様は司祭様と会話出来てたよ?」


 そうそれ、私も気になってた。


 流石は『私の』アレク君。


 もうすっかり以心伝心だね!(2度目)


「それは…司祭様は…その………」


 あっ、これ極秘な感じのやつだ。


 教会の闇ってやつですか?これが世界の選択ってやつですか?


「既に亡くなられて半英霊となっておりますので」


 言うんかーい。言っちゃうんかーい。


 なぜ溜めた。なぜめっちゃ重要な感じで溜めを作った。


 しかも司祭様はマジで幽霊だったんかーい。


 いや、まぁ私も幽霊みたいなもんですけども。


「ふーん、そういうことですか。あっ、父さーん!」


 アレク君が教会の出口付近に立っている30代半ばくらいの男性に向かって満面の笑みで手を振って走り出した。


「ちょ、アレク君。急に動き出すと私も引っ張られて体勢が!?」


 そう、私の現状は無重力で浮いてるのとほぼ同じような状態。


 もちろん無重力状態になったことなんかないし、特殊な訓練も受けていないごく普通の一学生だった私には体制の維持が非常に困難だった。


 体勢が整った状態でアレク君の歩行速度についていくことは割りと出来るようになってはいたけど、急に引っ張られると抵抗のしようがなかった。


 イメージとしてはぎりぎり水面に顔が出るような深さのプールに立ってる状態で足を横方向に思いっきり引っ張られる感じに近いと思う。


 10m程度の距離でもビッタンビッタンと釣り上げられたばかりの魚のように跳ね回る。


「おぉ!アレク!無事に戻ったか!!」


「うん!」


 走った勢いのまま父親に飛びつくアレク君。


 そのアレク君をしっかりと抱きとめる父親。


 親子は抱き合って感動の再会って奴だね。


 父親はアレク君を抱き上げたままぐるぐるメリーゴーランド。


 私もそれに合わせてぐるぐるビッタンビッタン。


 なんかこういう拷問ってなかったっけなーと思わず現実逃避したくなる感じ。


 父親の傍に居る赤い妖精さんよ、どうか私を憐れみを含んだ視線で見ないでおくれ。余計悲しくなるから。


 ぐるぐるメリーゴーランドはそのあと最低でも1分程度続いた。


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