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第三節 SIDE-ネイア-

 さて、アレク様は無事ミリア様に引き取られ馬車の中へと入っていかれた。


 まだ人型が残るゾンビとの戦いではお優しいアレク様では相当、心に負担がかかったことだろう。


 あのような状態で検分を行われるとそれこそお倒れになられてしまう。


 そんな事になってしまえば旦那様に面目が立たない。ここから先はあたしのような者にこそふさわしい。


 そうと決まれば即断即決。検分を始めることにしよう。


「先ほどはありがとうございました」


「いえ、我々も職務ですので…」


 手始めに先ほどアレク様へ報告をしていただいた護衛の方へ声をかける。


「ところで先ほどは十五名中十四名が確認できたとのことでしたが」


「はい。なぜか一名分だけ確認出来ませんでした。もしかしたらアレク様の火力が強すぎて焼失したかもしれません」


「そうですか。またなにか分かったら教えてください」


 あたしは早々に話を切り上げ、一人思案する。


 調査団は十五人全員が行方不明になっている。であれば生き残りが居なかったと考えるの妥当だ。


 生存者なし、つまり全員がゾンビなったと考えるべきだろう。


 そうであった場合、この場には全員の装備ないとおかしい。


 いくらアレク様の火力が高いと言っても鉄の鎧や兜など装備一式が跡形もなく焼失することなどありえるだろうか?


 まずありえない。普通に考えるのであればこの場に居なかった可能性の方が高い。


 ではなぜ居なかった?調査団に生き残りが居た?


 ではなぜ帰還しない?いや、しないのではない出来ないのではないか?


 捕縛された?いや、そんな必要はない。敵は十四名を相手に全員をゾンビに変えている。


 ゾンビに変えてしまえば命令に従順なのだから、一人だけ残す理由が見当たらない。


「…まさか!」


 あたしは護衛の馬車へと走った。そこで目的のものを見つけると即座に反転、現場へ走る。


「装備の持ち主の照合を行いたいのですが」


 現場へ戻ると近くにいた護衛に声をかけ、集めた装備品へと案内してもらう。


 そこで、馬車から持ち出した調査団名簿と装備品を照らし合わせ、ここに居ない一人を炙り出す。


「ダンテさん…ですか…」


 知らない名前だった。


「どなたかダンテさんのお知り合いの方はみえませんか?」


「あぁ、ダンテなら知ってるぜ」


 集まった護衛の中から一人手を上げてこちらにやってくる。


「あの、ダンテさんとはいつ頃からお知り合いで?」


「あぁアイツが領都にやってきてからだから……まだ二ヶ月程度だな」


「失礼ですが、貴方は?」


「俺か?俺は親の代から領都で衛兵やってるよ!」


「なるほど、ありがとうございます」


「なに、いいってことさ」


「他にダンテさんを知って見える方は?」


 それからはもう二人ほど名乗り出たが、どちらもここ二ヶ月ほどの顔見知りだった。


「集まっていただいてありがとうございました。それでは積み込み作業をお願いします」


 護衛の方々は口々に挨拶を交わしまた作業へ戻っていく。


 それにしてもまだ経験が浅い人間を調査団に入れるだろうか?


 旦那様がそんなミスを犯す?ありえないことではないが、可能性としてはかなり低い。


 調査団が十五名ということは恐らく五人小隊を3つあわせての編成だろう。


 通常であれば小隊に編成されている時点で衛兵の基礎訓練が終了しているのだから最低でも半年。長ければ一年は経過しているはず。


 それが二ヶ月で編成された?それこそ天才的な戦闘技術を持っていれば無くはない。


 しかし、そのようなスキルを持った人間が現れればあたしの耳に入らないわけがない。


 もしあたしの網を掻い潜っていたのだとしても旦那様の網はより広くより細かい。


 よって、気が付かないことはありえない。


「まさか…入れ替わって?」


 それだと名簿に名前があること自体に矛盾が生じる。


 名簿に名前がある以上は正常な手続きによって編成されて調査団として派遣されたことになる。


「おい!この木箱はなんだ?積み込み一覧にないぞ!」


 護衛の声によってあたしの思考が一時中断される。


 舌打ちしたい気分にかられるも、あたしがここにいる事が異常なのだから仕方ない。


「よく見ろ!下にもう一枚あるだろ?」


「おぉ!わりぃわりぃこっちにあったわ!」


「お前なーいい加減にしろよ!」


「「「「「はははははは!!」」」」」


 あんなことがあったばかりだというのに護衛の方々は明るい。


 いや、無理やりにでも明るい雰囲気を作ろうをしてくれているだろう。


 その心遣いがありがたい。


「………ん?もう一枚?」


 …そうか!もう一枚!もう一枚、別に名簿があるんだ!!


 今回持ち込んだ名簿が偽者であったと想定すると、全てつじつまがあってくる。


 調査団の出発時には正常な名簿で点呼を行い提出。その後、偽の名簿に切り替えて保管する。そして今回、その偽名簿を持ち出す。


 編成前の人間であればろくに管理もされていないから発覚しづらい事も原因のひとつだろう。


 もしかしたらダンテさんとやらは調査団の派遣と同時に別件で既に消されているかもしれない。


 であれば、生き残った一人が今回の騒動を起した可能性が高い。


 正常な名簿が発見できなければその名前を知るすべはないが。


 さらには名簿の偽者が用意できるということはその管理を行っていた共犯者が居ることになる。


 つまり今もまだ領都に裏切り者が居る可能性があるということだ。


 ………まてよ、今日の襲撃はゾンビが待ち伏せしていたことが発端だ。


 しかも十四名全員が待ち伏せしていたという事は、可能性のある全ての街道に分散して待ち伏せしていたわけではない。


 そうなると巡回のコースを知っていたことになる。


 逆に言えば巡回コースを知りえる立場にいた人間に裏切り者が?


 では今回の全巡回コースを知っている職務にあり、いまこの場に居ない人間は誰か?


「…まさか事務官の中に裏切り者が!?」


 思わず声に出た。出てしまった。


 周りに人の目があるというのに。


「ネイアの穣ちゃん。どういうことだ?」


 当然、疑問に思う者がいる。あたしが言い放った内容はそれほどの事だ。あたしだってそう思う。


 まだ一人であればと希望を持って周りを見渡すが護衛の方々の視線が一斉に集まっている。


 どうやらいまさら誤魔化せそうにないみたいだ。


「えぇっとですね…」


 これは失態だ…仕方ない、全部話してしまおう。


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