表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/159

第十三節 SIDE-アレク-

「父さん。いってきます」


「あぁ。気をつけてな。美和様、どうかアレクをよろしくおねがいします」


「はい。任せてください!…って、聞こえませんよね。アレク君!お願いします!」


「はいはい。父さん。任せてくれって」


「ははは。それは頼もしいな」


 旅立ちの日。


 俺は昨日、十五歳の誕生日を迎えた。


 この世界では十五歳で成人として扱われる。


 成人すると通常そのまま親元に滞在し後を継ぐか、親元を離れ自らの道を進むか選択する。


 俺は後者、自らの道を進むことにした。


 そう、科学の研究者になる為に。


 十二歳の誕生日に初めて英霊様……美和さんをこの身に宿してから三年、俺は様々な学問を学んだ。


 異世界人である美和さんはこの世界では考えられないほどの知識を保有していた。


 その全て…とはいかないにしても大量の知識を学ぶことが出来た。


 そのおかげもあって、俺達は科学を魔法に流用することに成功した。


 結局、全属性・全系統の魔法が科学で再現することが出来た。


 更に驚く事もあった。父さんのことだ。


 農家にしては随分と魔法の知識があると思ったら、元々は王宮仕えの研究者だったらしい。


 王宮内の権力争いに負けて逃げた先で母さんと出会い、農家に転職したとか。


 そのおかげで通常、学校に通って学問を修め研究者になるところを父さんの指導―正確には美和さん―を受けたことで学問を修めたとなり、研究者の道へ進むことが出来た。


 美和さんが『裏口入学だ…縁故採用だ……』とか言ってたけど何のことだろう?


 そして俺は美和さんから知識の一つとて『日本語』を学んだ。


 美和さんが前世の世界で使用していた言語らしい。


 俺の使用する魔法を記す書物の内、科学に関する知識は基本的にこの『日本語』で記載している。


『日本語』自体がこの世界では俺と父さんと美和さんの三人しか分からない最高の暗号となるためだ。


 まだこの世界に科学の知識が広まるには少し時間が必要だと美和さんの判断によるものだった。


 美和さん曰く、魔法と科学が融合した所為で前世の科学とは別物になってしまったらしいが。


 こうして俺と美和さんが三年かけて研究し、作り上げた『超科学』はこの世界にとってのまったく新しい概念の系統として産声を上げた。


 新系統『超科学』は俺達の生活を大きく向上させた。


 特に農業に関しては『肥料』を合成することで飛躍的に収穫量が増加した。


 やりすぎると土地の生態系を崩すことになるとかで、そこそこの成果で留めてはいるけど、残していく父さんの生活が良くなることは大変望ましいことだった。


 それに俺のメインウェポン『デュランダル』も進化を遂げている。


 大きな改善点としては、変形構造と取り入れて一つの武器で七つの性能を発揮できるようになった。


 変形構造といっても極小の金属片を多数生成、磁場によって集結形成させて変形するので、伸びるし縮むし質量も変わるし弾として射出されたりと自由自在に変形可能だ。


 実際は七つどころじゃない形状に変形させることが出来るけど、余りありすぎても美和さんと俺のイメージが共有できなければ完成しないので、絞り込んだ結果だ。


 美和さんが『変形構造持ちの武器は全人類の夢です!後は変身構造さえ構築できれば!!ベルトを持てい!!』と叫んでいたけど何するつもりなんだろうね?


 因みに七つの形状はこんな感じ。命名者は当然、美和さんね。


 セイバーモード:剣・一見すると普通のロングソード。グリップを握って魔力を通すと刃自体を微振動させることが出来る。微振動させた状態で切りつけると岩さえもバターのように斬れる。実際は斬るというより削るに近い。


 アーチャーモード:長銃・銃身を伸ばすことでレールガンの威力、飛距離を上げることに成功した。弾は魔力が続く限り無限に生成できる。連射性能は相変わらずイマイチ。


 ランサーモード:槍・2mほどのランス。投げても極細のワイヤーで俺と繋がっており、魔力を込めると手中に戻ってくる。投げて刺してワイヤーを使って壁登りとかにも使える。


 アサシンモード:鞭・長さを自由に変えられる上に思うように動かせる。前に美和さんに最長は何mか聞いたら帰ってきた答えが『13kmや』だった。きっといつもの発作だろう。


 ライダーモード:靴・見た目は膝下まであるロングブーツ。靴底からのジェット噴射で高速移動が可能。姿勢の維持にも魔法を使うので、非常に疲れる。ある程度なら飛行も可能。


 キャスターモード:拳銃・2丁のハンドガン。俺の魔力を使って全属性の弾を射出する。飛距離はそれほどないけど連射速度はものすごく速い。射出する属性はグリップ横のスイッチで切り替える。


 バーサーカーモード:槌・ハンマーを打ち込んだ後に手元のスイッチと押すと内臓した杭を射出する。技名はパイルバンカーだそうで。以前、古い砦の石壁で試したら跡形もなく吹き飛んだ。


 磁場が干渉してしまうので、近くで複数同時に出すことが出来ない制限はあるものの、切り替えは一瞬で出来るので、それほど困ることはない。


 基本的にはセイバーモードのロングソードとして持ち歩いている。


 こうしてロングソードを腰に佩き、革の鞄を背負ったどっからどう見ても普通の旅人の青年が出来あがった。


「ところでアレク君。どこに向かっているんです?」


「え?父さんとの会話を聞いてなかったんですか………」


「その時はちょっと出かけてまして…」


 この三年間で美和さんは俺を中心に1km圏内くらいまで自由に移動できるようになっていた。


 その練習も兼ねてここ半年くらいは頻繁に出掛けていた。


 おそらくその時の話だろう。


「あぁ外出訓練の時でしたか。今からは領都に行くんです。本当は直接王都に向かいたかったんですが、父さんが領主様と知り合いらしくて俺の研究所入りの話をした際にお願い事があるとか依頼されたみたいです。それでこれから領主様に会いに行くんですよ」


「ほぉーお父さんは領主様ともお知り合いなんですか。本当に顔が広いですね。アレク君の研究所入りも所長からの推薦状があるからですよね?」


「け、研究所入りは俺の実力もありますよ!それにあくまでも内定で向こうについてからの試験に合格できなきゃ入れませんから!」


「えぇ、分かってますよ?この三年間、アレク君がどれほど努力したか私が一番知ってますから」


「うっ………」


 こういう時だけ真面目になるのは…本当にこの人は卑怯だ………。


 俺は赤面した顔を見られないように美和さんから背ける。


「まぁ、その魔法も私の協力がなければ発動しませんがね!」


 最後まで真面目空気が持たないのが美和さんクオリティー。


 いつものように、いつまでも続く当たり前のそれでいて心地の良い間で俺達は互いにどちらからとも言わず吹き出し、笑い合った。


 ライザ村から領都までは通常通りに歩いて行けば三日くらいの距離だ。


 俺の場合はライダーモードがあるので、ぶっ続けで飛行すれば半日も掛からない。


 ただそれでは体力も魔力も持たない。


 そこで朝早くに出発して途中の村まで飛んで行き、昼食兼休憩の後さらに飛んで領都に向かう計画を立てていた。


 ちょっとした遠出ような旅は計画通りに進行したが、領都に着く頃には当りは真っ暗になっていた。


「ふぅー疲れたー」


 直接、領都に飛行状態で降り立つわけには行かないので、俺は領都からちょっと離れた道に降り立った。


「さて、このまま道沿いに歩いていけば門までいけそうだな」


 俺はさっき空から見た領都の情景を思い出した。


 うちの村とは比較にならないほど大きい町で外周をぐるっと塀で囲んでいた。


 北と南にそれぞれ門があり、このまま行けば南門にたどり着けそうだった。


 この辺にはそれほど強い魔物は居なかったと思うけど、それでも被害がないわけじゃない。


 だから居住地を護る為に塀を建てるのは常識だった。ライザ村でも柵で囲っていたほどだ。


「セイバーモード移行!」


 流石にデュランダルをライダーモードのまま履き続けるわけには行かないので、ロングソードに戻して腰に佩く。


 着地地点から30分ほで進んだ先に門を見つけた。


 最初に視界に入った大きな門は大型の運搬などに使われるようですぐ隣に馬車1台分くらいの小さな門があった。


 僕はその小さな門のすぐ横にある衛兵詰め所へ声をかける。


「すいませーん。領内に入りたいんですけどもー?」


 詰め所の小窓か中に向けて軽く叫ぶ。


 暫しの間待ってると小窓から一人の衛兵が顔を出した。


「はいはい。いやー待たせて、すまんね。日が暮れてからは衛兵の仕事は見回りくらいだもので、軽く居眠りしてたよ」


 後頭部をボリボリと掻きながら、あまりすまなそうでは無い態度で衛兵が謝罪してきた。


 ん?見回りくらい?


「あのーもしかして、今日ってもう入場出来なかったりします?」


「おっ、察しが良くて助かるね。悪いけど今日はもう店じまいだ」


 やっぱり。治安の良し悪しにもよるけど、こういう事は珍しくない。


 夜間は通常であれば何事にしても対応できる人数が少ない。


 なので、内部の治安を護る為に門を閉ざしてしまい、出入りする人間を制限する。


 どうやら領都も利便性よりも治安を取っているようだった。


「それなら仕方ないですね。外回りの宿かテントの貸し出しはありますか?」


 ここで文句言ったところで面倒なことになるだけなので、俺はさっさと考えを切り替え、今日は外周で一泊して翌朝入場することにした。


 こういう事はよくあるので、外壁の周りには素泊まりの格安宿やテントの貸し出しもあったりする。


 そして、俺は領都は始めてなので、この辺の施設の知識はもちろん無い。


 こうなると分からないことは専門家に聞くに限る。


 この場合の専門家はこの衛兵ってことだな。


「北門に行けば宿はあるが、こっちには無いな。テントの貸し出しはあるが、保証金はもらうぞ?」


 ありゃ、宿はないか。残念。


 まぁテントがあるだけマシか。


「わかりました。それじゃあテントを一つお願いします」


「あいよ」


 その後、俺は言われたとおりの保証金を払い、衛兵が奥から持ってきたテントを受け取る。


「外周を東に少し言ったところに野営地があるからそこにテントを建てな」


「ありがとうございます。それと、領主様にライザ村のアレクが来たことと明日の朝にそちらに伺いますと伝えてもらってもいいですか?」


「あぁ、任せときな」


 ついでに領主様への言伝をお願いして、野営地まで向かう。


 さて、夕食はどうしようか。


 領都の中で宿をとってそこで食べる予定だったので、あてが外れた。


 土地勘のない場所で猟師の真似事なんかしたくないし…


 鞄の中には保存食が入っているので、最悪これを水で戻して食べるか。


 あんまり食べたくないんだよな…硬いし、まずいし。


 俺は夕飯のことで悩みながら衛兵に教えてもらった野営地までやってきた。


 どうやら俺の他に4組ほど野営しているようだ。


 三つのテントと一つの馬車が視界にはいる。


 テントは俺と同じように一般の旅人だろう。


 馬車は……乗り合いか商人かな?


 俺は馬車の近くで焚き火を囲んでいる三人に声をかけた。


「こんばんはー」


 三人はバッと一斉にこちらに振り向き警戒する。


 一人にいたっては腰の剣に手をかけている。


「あぁ!すいません!旅のものなんですが、領都に入れなくって野営することになりまして、そこで食料を分けていただけないかなーとお声をかけさせてもらったんです」


 俺は足早に自分の置かれている現状を説明した。


 一瞬ではないけどもそう長くは無い時間が流れる。


 そうこうしていると一番手前に座っていた男性が立ち上がり、こちらに右手を差し出した。


「商人をしております。こちらの二人は私の護衛です。驚かせてしまい申し訳ありません」


 商人を自称する男性は物腰柔かく自己紹介と握手を求めてきた。


 俺はその手を握り、上下に振る。


「近辺の村からやってきました。領内の者です。こちらこそ不用意にお声がけして申し訳ございません」


 そして自己紹介と謝罪を済ませる。


 この世界では自己紹介と言えど初対面で名前を明かしたりはしない。


 せいぜい身分を明かす程度。


 身分証明が出来るものが無いような平民では、どこで自分の名前と身分を勝手に使われるか分かったもんじゃない。


「それで食料をとのことでしたが、お分けすることは可能です。こちらも商人ですので、ただというわけにはいきませんが…」


「いえ、お売りいただけるだけでも助かります。ありがとうございます」


 俺はそのまま商人からパンと干し肉を購入した。


 因みにぼったくりでも格安でもなく、ありふれた適正価格だった。


 野外という事も考慮に入れるともう少し割高でも良い気もするけど、きっと良い人なんだろう。


 購入した食料をさっさと食べて、テントの組み立てを開始する。


 それにしてもさっきの護衛の反応はすごかった。


 一瞬にして剣に手をかけあと一息で俺に切りかかってくる寸前であった。


 美和さんはこの世界で魔法が攻撃の主体だと考えていたようだけど実際は違う。


 大規模な戦争とかなら組織的に運営されるから魔法部隊が遠距離攻撃とかもあるらしいけど、個々の魔力なんかたかがしれているので、そうそう連発も出来ない。


 更に小規模の戦闘では一瞬の間が命取りに繋がることもある。


 そんな状態で精霊に指示を出して繰り出す魔法を使おうとすると、意識がそちらに行くどころか発動まで数秒の隙ができてしまう。


 そうなると魔法を使って攻撃するよりも剣で切りかかった方が断然早い。


 中には斬り合いながら魔法を使う人は居るらしいけどそんなのは一握りの天才だけだ。


 そうなると個人戦では魔法による攻撃は遠距離からの不意打ちにしか使えない。


 俺の場合はキャスターモードで連射出来るから攻撃に使用出来なくもないけど、それでも魔力を込めたり準備が必要だ。


 つまり、いくら攻撃魔法があろうとも個人戦では剣や槍などの近接武器による斬り合いが主流になる。


 そんなことをぼんやりと考えてながら作業していたら通常の倍は時間をかけてテントが組みあがった。


 俺は移動の疲れもあってか、テントの中で早々に眠りについた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ