第十節 SIDE-美和-
「「「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
アレク君に鉄の塊をご注文いただきまして、地中の鉄分を抽出して精製すればいいかなーと思って気軽にやりました。
やってしまいました。
そりゃね、前回2回の失敗の後に、3回の大成功を迎えましたので、調子に乗っていたのは認めますけども。
それにしても…すごく…大きいです………
いや、塊って言われたものでちらっと脳裏に氷山が浮かびました。
タイタニックにぶつかったやつ。確か高さ20mくらいでしたっけ?
アレが思い浮かんじゃったんですよ。
そしたら、そのイメージを修正する間もなくアレク君が発動してしまったもので。
出ちゃいました。頭のおかしいサイズの鉄の塊が。
これ何トン?もう想像もつかないんですけど。
もうここら一帯の鉄鉱石から根こそぎ抽出してしまったんじゃないかと。
「と、とりあえず小分けにして置いておきましょうか」
「そ、そ、そうですね。お願いします…」
やらかしたものはしょうがない!私は失敗から学ぶことが出来る女!次は失敗しない!きっと!!
後で加工しやすいように1kgインゴットを大量に作った。
それでもほとんどを地中に埋めなおした。後で使うかも知れないから場所を覚えておこう。
アレク君の家の横に格納庫があったので、作ったインゴットを格納しておいた。
食品の貯蔵庫も兼ねているのか干し肉とかも置いてあった。
純鉄のインゴットはそのままでは錆びるのが早いので、クロムを混ぜてステンレスにしておいた。
おかげで1割くらい増えちゃったけどね!
これって地中にある金を抽出して………
(貴女の良き行いを常に見守ってますよー見守ってますよーますよーますよ………)
頭の中で神様の声がエコー混じりに響く。
やーりーまーせーん!………アレク君がお金に困らない限りは。
「あっ、ミワさん。ひとつ作りたいものがあるんですが…」
アレク君の為ならお姉さんなんでも作っちゃうよ!金貨でも!何枚でも!何十枚でも!!
(ですからー貴女の良き行いをー)
なおも響くエコーの聞き流して、(表面上は)真面目を取り繕う。
「なんでしょう?」
「剣が1本欲しいので、錬金したいんです」
「剣ですか。わかりました。サイズはどれくらいですか?ショート?ロング?」
ゲームの知識なら人一倍有している私からすれば剣と言われれば色々浮かんでくる。
「片手剣が欲しいので両刃のショートソードが欲しいです」
「わかりました。ちょっと待ってくださいね」
ショートソードをご所望ですか。
この世界の鋳造技術や鍛冶技術がどの程度か分かりませんが、恐らく私の知識の中にあるショートソードで問題ないでしょう。
アレク君のショートソード…アレク君のショート…ソード…アレク君のショートなソード………ぐふっ。
いかんいかん!ヤバイ妄想でトリップしそうになってたわ!
いい加減にしないと本当に失望されてしまう。
英霊のクーリングオフとかないよね?
あまり待たせると不安がられるだろうし、まともにイメージしよう。
たしかショートソードって刃の部分も柄の部分も持ち手の部分も全部一体なんだよね?
成型して刃をつけて持ち手の部分に革とか巻いてすっぽ抜け防止にする感じ。
持ち手の部分はどうしよう。流石に革を生成するのは難しいだろうし、合皮を作る?いや、ここはゴムのほうがいいか。
剣自体の主成分は鉄にしておこう。また非常識とか言われたくないし。
それでも刃の部分だけでも超硬合金を使おう。
見た目は鉄だけど異常に硬くてものすごく切れ味あってさらに手入れいらず。
私のアレク君が持つ剣としては最高じゃないか!
そうと決まればイメージしよう。
剣の形は良くある感じで刃の外周部分だけにコバルトを固結材としてタングステン炭化物の粉末を焼結させる。
そして超硬合金部分を限りなく薄くゼロに近づける。
これで刃の入射角が限りなくゼロに近づく。そうすればほぼ抵抗なく切り込みが入れれるはず。
切り込みさえ作れてしまえばあとは剣の重みや腕力で難なくカットできるはず。そう、いまここに斬鉄剣の誕生だ。
まぁ魔法が主体のこの世界で剣が必要になることなんかほとんどないだろうけどね。
基本的にロングレンジ攻撃が主体だろうし。
「準備が出来ました。いつでもどうぞ」
「ありがとうございます。それではいきます!」
ありがとうございますだって。アレク君は良い子だね、ほんと。
そうこうしているとものの数秒で目の前にショートソードが出来上がった。
あまりの早さにアレク君が出来上がったショートソードを受け取り損ねた。
そのまま地面に落下するショートソード。
刃の部分に一部超硬合金を使っている為、他の部分に比べて重い。
重力に逆らうことなく落下するショートソードは当然、重たい刃の部分が下になる。
そうして地面まで落下したショートソードはそのまま地面に刺さった。
まったく抵抗を感じさせずに柄の部分までぶっすりと。
いやーもう何度目になるかなーこの感じ。
毎度毎度お付き合い頂きまして、まことにありがとうございます。
それではご一緒に!
「「なんじゃこりゃ!!!!」」
あっ、お父さんこの章初めての台詞ですね。
ところで、私は失敗から学ぶことが出来る女と言ったな。すまない。ありゃ嘘だ。