第一話 ~街へ行こう~
魂は保護され異世界に用意された新たな肉体と魔法、そしてスキルを適合させ、その世界に魂を定着させる。
そして生まれ変わる。
「ここはどこかな?転生したのかな?」
≪その通りだと肯定します。≫
「なんだ君?」
≪世界を渡る際に獲得された一部のスキル、“導く者”だと答えます。≫
「へぇー、やっぱりここ地球じゃないんだ。」
≪その通りだと肯定します。≫
「前世と同じ球体の世界?地球と変わった所ってあるのか?」
≪その通りだと肯定します。これ以上の情報へのアクセス権限がないため説明を中断しました。≫
「ねぇ、毎回しゃべって会話しなきゃダメ?」
≪その必要はありませんと否定します。念じるだけで十分です。≫
(そうなのか、ところでさっきのアクセス権限って?)
≪アクセス権限はアクセス権限です……説明不足を感知。説明を追加します。この“導く者”はこの世界に存在する公表された事実、すなわち知りえることが可能なことを探し、それを用いて主に説明するためのスキルであり、このスキルは一つしか存在しません。≫
(へぇー、大層なスキルだな。)
(なぁ、ちょっと堅苦しいよね。)
≪それはないと否定します。≫
(その肯定しますとか否定しますとかが堅苦しいよね。それなくてもいいんじゃない?)
≪…………承知いたしました。≫
なんとか堅苦しい会話は終わりを遂げることが出来そうだ。
(じゃあ最寄りの町とその街に入るには?)
≪最寄りの町はこの先北東に1㎞、名前はシェーフィム。町に入るには正銅貨1枚です。≫
(正銅貨って今もってないよね?)
≪問題ありません、正金貨を一枚所持しています。≫
(そうなのか、ってどこに入ってるの?)
≪魔法、収納魔法によって管理されています。≫
(ああ、わかった、助かった。)
≪念じれば発動します。≫
(収納魔法)
ポコッと目の前の空間が亜空間と接続し、待機している。
亜空間に手を入れて直接取り出してもいいが念じれば出てくるとかいう便利機能はついてないのかな?
結論から言うとついてました。
欲しいものの名前を念じれば出てきます。
「へぇー。便利やな。」
≪魔法ですから。≫
聞いたつもりはなかったのだが回答が返ってきた。
まぁいいだろう。問題なく街に…………
そういえばこの服装目立たない?
(服装目立つよね?)
≪冒険者に見える服装が魔法、収納魔法によって管理されています。≫
(へぇー、そうなのね。)
まだ収納魔法を閉じていないので服装を取り出すことに成功した。
閉じ方を聞いていない。
(閉じ方は?)
≪もう一度収納魔法と念じれば閉じます。≫
(収納魔法)
閉じることが出来た。
というか前世が化学の世界に生きた人である以上、魔法の仕組みも気になってしまう。
魔法もある一定の法則に従って事象が起こっているのだろう。
だがまぁ今それを研究することは出来ないに近いであろう。
とりあえず心にそれを残しておく。
◇◆◇◆◇
着替え終わったので正金貨1枚を持ってシェーフィムへと向かう。
(この方向で合ってるか?)
≪合っています。≫
道中なにを出来るか考えたが1㎞なのだ。出来ることもないだろう。
仮にあったとしても魔物との遭遇、それもゴブリンなどの弱小な魔物だろう。
ただこの辺りが整備されていないというのは少し気味が悪いが。
そんなことを考えていたら――――
狼が出てきた。
赤い角の狼だ。
あまり強そうには見えないが。
思ったがここは魔法の世界だ。
火・水・風といった魔法が存在するだろう。
だったら適当に魔法を放てば良いのでは?
(なぁ、あれを倒すには?)
≪魔法を放ちましょう。風属性が最適との解析結果を得たため風圧斬を推奨します。詠唱は必要ありません。≫
「風圧斬!」
まぁ言うまでも無いが風が斬撃となり、それが赤い角の狼の首に直撃した。
風が斬撃と化したので首から上……どっちかというとそれは人に対して表す言葉だろう。
なのでどちらかというと頭と胴体が分離している。
ちょっとグロい。
首の血管や血液、肉がボロボロしていて気持ち悪い。
R-18指定しても良いのではないかと思ってしまう。
ということで脳内フィルター――――もっとも意味は無いがモザイク――――を脳内でかけておく。
(ねぇ、これどうにかできない?)
≪収納魔法にしまいましょう。あと慣れは必要です。≫
(おう……そうかい)
(収納魔法)
きれいに一瞬で収納される。
てか慣れたほうがいいも何も慣れたくないよね。
このグロさはやばい。
例えるなら人間の内臓飛び出しちゃってるみたいな感じ?
いや、そっちのほうがもっとグロいぞ。
我ながらにやばい発想をしたものだ。
とりあえず忘れよう。
◇◆◇◆◇
町の城壁と町に入るための門を見つけた。
街に入るためには門の前の審査をクリアしなければいけないというわけではなく、正銅貨一枚を渡せば入れるらしい。
ちなみに通貨なのだが正銅貨100枚で正銀貨1枚になり、正銀貨10枚で正金貨1枚になる。
両替された後の正銅貨の99枚は非常に置き場所に困ってしまう。