ショートアロー!「エノラ・ゲイ撃墜指令」第8状況
作戦の概要が決まった。刻々と近づきつつある運命のカウントダウンが始まった!
第8状況 刻々と近づくその時。
1945年8月5日、マリアナ諸島テニアン島、ノースフィールド飛行場。ここにはB29の基地がある。原爆投下用に改造されたB29を装備し、原爆投下を実行する実働部隊である第509混成部隊がいた。「ティベッツ大佐、超強力爆弾を投下するのは、いよいよ明日となりましたね。腕が鳴ります!」B29爆撃手トーマス・フィアビーが509混成部隊隊長であり、6日の原爆投下機エノラゲイ号の機長となるポールティベッツに話しかける。「超強力爆弾は、広島に投下する予定だが状況によっては第2、第3目標の長崎、小倉のいずれかになる場合もある。どっちにしろ明日は頼むぞ、フィアビー」ティベッツはフィアビーに親指を立てて笑う。「サーイェッサー!では準備がありますので」フィアビーは敬礼しティベッツと別れた。「超強力爆弾か・・・・。」ティベッツは複雑そうな表情をする。「本当は原子爆弾なんだよな、まだ実際に使用したことのない新兵器だ。飛行中、投下時にも何が起こるか解らない。厳しい任務になるが皆頑張って欲しい」ティベッツはフィアビーの背中を見送りながら思った。6日、広島に投下される新兵器が原爆と知っているのはティベッツを始め、一部の科学者やスタッフのみであった。エノラゲイの乗組員さえ、超強力爆弾としか聞かされておらず。実際に広島に投下し、爆発の後、初めてそれが原爆だと聞かされたという記録が残っている。
御門島。指揮所となっている業務用天幕に隊員たちが集まっている。「では、諸君、作戦会議を実行する。」小田原が言うと各自がそれぞれどうするか話始めた。「大平、エノラゲイの当日の行動も暗記してるって言っていたな、まずエノラゲイの一団の動向を教えてくれ。ショートアローを打ち込むポイントを見いださねばならん」言ったのは小隊長である板橋。太平洋戦争に詳しい大平はエノラゲイの当日の動向も全て記憶していた。「0時37分、気象観測機3機がが離陸。そして1時45分、エノラゲイ離陸。そのまま飛び続け5時5分硫黄島上空にて先行観測機と合流。7時25分、気象観測機ストレートフラッシュ号より広島投下可能の連絡が入り、広島投下が決定。7時50分愛媛県新居浜を通り瀬戸内海上空へ。」大平の言葉から瀬戸内海という言葉が出た。「いよいよか・・」板橋が息をのむ。「8時4分福山上空から左折、広島方面に向かい、8時9分、エノラゲイの視界に広島が入る。そして8時15分、ついに原爆投下」大平は要点をしぼってエノラゲイの当日の動向を語った。「7時50分に瀬戸内海か。我々のいる御門島の位置は?」板橋がさらに大平に聞く「ちゃんとした地図なんて有りませんので車両に積んであった道路地図で見ただけですが、御門島は新居浜と福山を結ぶちょうど中間点にあります。新居浜上空を7時50分、福山上空に到達するのが8時4分ですのでこの時間の間に御門島上空を通過すると考えられます」大平が答える。「よし、では7時50分に管制レーダー起動。エノラゲイの動向をキャッチできたらそのままモニタリングしショートアローの射程に入り次第発射することにしよう」板橋はそう言うと、さらに大平に聞いた。「エノラゲイの攻撃後の影響は?放射能汚染などの危険は?」大平が答える。「エノラゲイは瀬戸内海上空は約9000m前後で飛行しています。かなりの高空ですので特に影響はないと思います。ただ、中途半端に破壊すると何かの拍子で核分裂などが起きると厄介ですので原爆もろとも文字どおり完膚無きまで破壊する必要が有ります。ショートアローは4発全て発射、命中させるのが良いと思います」大平の話を聞き終わると板橋は「よろしいでしょうか?」と小田原に言う小田原は頷き、「よし、それで行こう。管制要員と誘導弾射手以外の人員は、不測の事態に備えて厳重警戒態勢で待機。誘導弾発射間に敵機の襲撃等があるかもしれない、それに備える!」小田原は隊員たちの方を向き言った。「了!」隊員たちは一斉に敬礼をした。作戦の内容がついに決まった。「有り難うございます、我々に出来ることは何かないでしょうか?園下が小田原に聞く「警戒任務に参加し、発射機と統制装置を守って欲しい・・・・あと・・」小田原の「あと」に対し「あと?」と聞き返す園下。「礼ならエノラゲイ撃墜に成功したら言ってくれ、」小田原の言葉に園上は「はいっ!」と答え敬礼をした。
1945年8月6日午前0時25分。広島市
ウーウーウー、けたたましいサイレンとともに警防団が走り回る。「空襲警報発令!空襲警報発令!」深夜の広島市内に空襲警報が鳴った、日が変わる直前にも警報が鳴っていて市民達は「またか、多いな。」、と思いながら防空壕に身を潜めていた。市中心部から東に約3km、段原地区。ここには園上の婚約者、中郷有香の勤めている会社がある。有香はこの日も夜勤で会社にいて、その敷地内にある防空壕の中にいた。「ねえ、有香、警報何回目?もう日も変わったのよ。」一緒に避難していた同僚が言う。「ホント多いわね、毎日こんなんじゃ気が滅入る、報告や書類整理なんかあるから、これじゃ仕事明けても定時にはあがれないわ、8時には家に帰れるはずだったのに。」有香はそう言い同僚の顔をみる。「ほうじゃのう・・・」同僚はため息をつく。結局警報は2時10分に解除された。
第9状況に続きます
第9状況に続きます