ショートアロー!「エノラ・ゲイ撃墜指令」第7状況
自分たちがこの時代に来た理由、自分たちに何が出来るのか?その答えがついに導き出される!
第7状況 やるべき事、守り抜きたい事
瀬戸内海上空。B29が飛んでいる。広島市内上空を飛んできたらしい。射撃統制装置のレーダーにはバッテリー等の制限がある。節約のために目視でカバーできる所は個々の隊員たちが見守っていた。「B29が1機か・・偵察形のF13かもしれないな」大平は悠々と飛ぶ機影を見ながら思った。空は夕焼けに染まっている。「夜が明ければ8月4日、何事もないとして2日後には広島に原爆が落ちる。俺たちはその事実を知っている、なにか出来ることは無いか?昭和最大の悲劇とも言えるこの原爆投下に関して・・」大平はそんな事を考えるようになった。「どれ・・」大平は通信車に車載されていた道路地図を開いた。開いたページは瀬戸内海沿岸。その中には御門島も書かれている。「やっぱりそうだ、6日に原爆投下機エノラゲイはこの島の上空を通過するぞ・・・。」大平は原爆投下当日のエノラゲイの航路も記憶していた。
中隊長、小田原の詰める業務用天幕、小田原と板橋の前に園下、園上がいる。短い時間で公私ともに中隊長含め隊員たちとうち解けた事もあり2人は全てを話す事にしたのだ。「つまり、君たちは部隊を脱柵・・いや脱走してきたと言う事だな。」小田原は2人を見渡しながら言う「はい、我々はこの戦争の戦局を憂いていました。どうみても我が軍は連合国には勝てません。」園上が悲しそうな目で言う。「なのに、軍部は最後の1人になるまで戦え、そして死んで国を守れと言います。我が陸軍の航空隊や海軍などは特別攻撃隊なんてモノをつくり人の命を兵器として戦場に送り出し、多くの兵が無駄死にしています。」園下が続ける「自分と園上は卑怯者、裏切り者、非国民と罵られても絶対に生き抜きたいと思っています。犬死にはしたくありません。そのために脱走を企てたのです、こんな国に殺されたくありませんから」黙って聞いていた小田原が口を開く「我々は自衛隊、日本軍ではないし、この時代の人間でも無い、君たちをどうこうするつもりもないし、君たちの考えも理解できる。どうだろう、正式に我々と行動を共にしないか?我々が元の時代に戻るまで、また、万が一戻れなくてもこの時代の事を知っている君たちが我々には必要だ。」小田原が言うと園下、園上は大きく頷いた。
次の日。1945年8月4日。隊員たちがあつまりミーティングを開始している。「さて、ここに来て2日経った。旧軍兵士との合流、グラマンの襲撃など色々あったが、未だに我々は時の流れの中の迷子のようなものだ」小田原が隊員達を見回しながら言う「迷子にならず、我々がこの時代に来た事の意味、なすべき事、その答えを出せば、何か進展がかならずあるはずだし、もしかしたら現代に戻る糸口を見つける事に繋がる可能性もある。部隊を預かる中隊長たる私が客観的なことを提案して申し訳ないが皆の忌憚のない意見を聞きたい」小田原は続けた。「中隊長!」大平が手を挙げる。「なんだ、大平?」小田原が聞く。「今日は8月の4日です。史実通りだと明後日6日、何が起こるかご存じでしょう?」大平の言葉に小田原は眉を顰める。「大平・・・」。「大平士長・・・」隊員たちは大平を見つめる。隊員達は皆気がついて居るようだ。何が起こるか。「広島への・・原爆投下だな」小田原が呟くように言う。「一体何なんですか?原爆って、しかも広島とは、大平さん、前に聞いた、日本を敗戦に導いたという新兵器のことですか?」声を発したのは園上だった。前日に現代の日本人が歩んだ歴史を大平は旧軍兵士2人に話してはいた。だが広島への原爆投下については、あえて触れず、とある新兵器が2つほど使われ、それが敗戦の要因の一つになった。としか言ってなかった。「隠しても無駄なようですね・・・・」大平はため息を付き話し始めた。大平は原爆についても詳しいようだ。小田原も大平を凝視する。「1945年8月6日、8時15分に広島は新兵器、原子爆弾により壊滅します。死者、負傷者は正確な数は解っていませんが、昭和20年だけで約14万人が死亡したと推定されています。4000度の熱線、爆風、さら人間に重度の障害を発生させたり死亡させる放射線の被害、その放射線はその後何十年も人間を苦しませつづけます」大平は淡々と語る。園下と園上、自衛隊員たちも無言で大平の言葉に耳を傾けている。「それが、明後日広島に落ちると言うのですか!」園下がおもわず声を上げる「原爆が落ちるのは広島の何処です!?中島本町、中島本町は大丈夫ですか!?中島本町には婚約者が居るんです!」園上は大平にすがりつく。「落ち着け!園上」、園下が園上を引き離す。「中島本町は、ほぼ爆心地です。中島本町で生き残った人は誰一人いません。一瞬で、自分の身に何が起こったか解らないまま中島本町にいた人たちは骨も残さず蒸発しました・・・」その言葉に園上は項垂れた「爆心地から1.2キロメートルでは、その日のうちにほぼ50%が死亡。それよりも爆心地に近い地域では80~100%が死亡したと推定されています。即死あるいは即日死をまぬがれた人でも、近距離で被爆し、傷害の重い人ほど、その後の死亡率が高かったようです。」淡々と話続ける大平に園上が聞く。「自衛隊の力で、原爆投下を何とか出来ませんか?未来兵器の力で・・・。」その問いに大平はニヤリとして小田原の方を向いた「中隊長、今、我々に出来ることはコレじゃないですか?」大平は続ける。「昭和最大の悲劇、原爆投下を阻止すること、我々はそれが出来る力を持っています。それに・・」小隊長の板橋が言う「それに?」「この島の上空を6日当日、原爆搭載機B29エノラゲイが通過します。」隊員たちは大平が何をしたいか理解したようだ。「我々は本当ならこの時代には居ない人間、それに歴史を改変することになる、はたしてこんな事許されるのか?」そう言うと小田原は大平の顔を見る。「歴史を改変するとどうなるか解らない、いわゆるタイムパラドックスと言うものですがそんな物SF作家が勝手に考えた事です。それにここは日本。我々は国を、国民を守る自衛隊です。未曾有の惨劇に襲われようとしている国民を守るの事に時代は関係ないと私は思います!」大平は強く言った。「よし解った。他のみんなは大平の意見に賛成か?」小田原は隊員達を見回す。「風祭曹長!大平士長の提案に賛成いたします!敵機の捕捉は任せてください!」誘導弾統制班長の風祭が1歩前へ出る。同じ統制装置班の入生田も続いて前に出る。「湯本2曹、大平士長の提案に賛同します!誘導弾射手として必ず目標に命中させます!守るべき物も見つけましたので!」湯本は1歩前に出ながら宮ノ下の方を見る。「湯本2曹・・・」宮ノ下が微笑む。「もちろん自分も賛同します。本作戦を実行する前に昨日のようなグラマンの襲撃があれば、自分のハンドアローで必ず阻止します」塔ノ沢も前へ出た「補給班野森2曹、賛同します。小涌っ!糧食班帰りの腕を見せてやれ、作戦開始まで皆に力付けてもらわんといかん。戦闘糧食を使って、力の出るメシを作るんだ!」「ハイっ!」野森と小涌も前へ出た。「私も賛同です、中隊長、やりましょう!」小田原の横にいた強羅が言うと小田原は頷き、声を上げた。「命令を下達する!第12高射中隊1小隊は全兵力を持って原爆投下阻止作戦を実施する!作戦開始は明後日6日、エノラゲイを撃墜せよ!」「了解!」全隊員が敬礼する。その光景を頼もしそうに見つめる園上。「お願いします、未来の日本の皆さん・・・・」園上は心の中で呟いた。
第8状況に続く
第8状況に続きます。