ショートアロー!「エノラ・ゲイ撃墜指令」第5状況
脱走日本兵二人組と自衛隊がついに接触。現代と過去との記憶が今、交差する・・・・・。
第5状況 過去との交流
「園上!まもなく上陸だ!」園下が言う。2人の大発は唸りを立てて砂浜に乗り上げた。「小隊!警戒を厳重にせよ、小銃!安全装置解除!」自衛隊小隊長板橋が命令を下達する。チャキ!チャキ!、89式小銃の安全装置、アの位置からタの位置に切り替える音がする。命令の声が聞こえ、「日本人!?日本語!?友軍か?」園下がつぶやく「敵意は無いことを伝えましょう。」園上はあらかじめ用意していた白旗を振った。「白旗です!敵意は無い模様!」最初に確認した風祭が言う。「よし、小隊前進、大発の位置へ、ただし警戒は厳となせ」板橋小隊長以下隊員たちは大発を取り囲む「やっぱり、旧陸軍の制服だ・・・・階級は上等兵と一等兵だ・・・・」太平洋戦争オタクの大平はその姿に息をのむ・・・
大発の前部上陸用ハッチが開く。そして、肩に38式歩兵小銃を掛け、園上と園下が降り立った。園上は白旗を持っている。「帝國陸軍船舶部隊、園下上等兵!」「同じく、園上一等兵!」園下と園上は板橋に敬礼をした。「銃を降ろせ!」板橋の声に自衛隊員たちは銃を降ろす。「陸上自衛隊第12高射特科中隊第1小隊長、板橋3尉である」板橋が敬礼を返し、言った。「自衛隊?聞いたことない部隊だ、見たことのない迷彩服に、あの銃は自動小銃か?そもそも日本軍なのか?」見慣れない装備を纏った自衛隊員たちを見て園下は思った。「あなたたちは・・・・一体?」園下のが敬礼をやめ板橋に聞く「本当の事を言った方がいいだろうか?答礼した際、自衛隊とは名乗ったが、まさか70数年後の日本の防衛組織とは彼らも思って居ないだろう・・・・・・」そう思ったが、真実を語ることにした、「信じられないだろうが、我々は原因不明の事態により、この島に漂着した70数年後の日本人だ、我々は自衛隊といって、戦後解体された日本軍に代わり国防の任務を担っている」板橋の答えに「戦後・・・70数年?・・・・解体!?日本は戦争に負けたんですか!」園上が言う「このまま、ここで押し問答してもしょうがない、よし!」板橋は二人を指揮所に招き入れた。
「第12高射特科中隊、中隊長、一等陸尉・・・・いや、大尉と言えば解るかな?小田原だ」小田原は自己紹介をした。「帝國陸軍暁部隊、園下純一上等兵、」「同じく暁部隊、園上拓也一等兵」二人も自己紹介をする。「君たちは何の目的で、この島にきた?」小田原は2人に聞く。「そ、それは・・・・」園下が口ごもる。まさか自分たちが脱走兵で、しかも基地の施設を爆破し、大発を奪ってきたなんて言えそうもなかった。「まあ、良い、軍事機密か何かだろう。それより2人に聞きたい」小田原は言った。「はい、我々に答えられる範囲でなら」園下が答える「ここはどこで、今は何年何月だ?」何を聞かれるかビクビクしていた園下は、意外な質問に眉を顰めた。「今は1945年。今日は8月3日です。ここは御門島と言って瀬戸内海の無人島です。」園下の答えに、「やはりな・・・・太平洋戦争中か・・・」と思いため息をつく。「小田原大・・・いえ一等・・陸?殿。本当に・い・・殿は・・」園上が困惑する「一尉だ、」小田原が微笑みかける。「い、一尉殿たちは70数年後の日本・・・軍なんですか?」「自衛隊だ、武装はしているが軍人では無い」小田原の言葉に驚く2人、「では、軍隊では無いと言うことは、一体?」園下が言う「この辺については・・・・大平!、お二人に解りやすく説明をしてやれ、」大平が「はいっ!」と返事をし園下と園上をパイプ椅子に座らせる。女性自衛官、宮ノ下がコーヒーを持ってくる。「どうぞ。」宮ノ下は笑みを浮かべ二人にコーヒーを差し出す。旧日本軍に女性兵士など存在しない。「軍隊に女がいるはず無い、本当に日本軍ではないんだな・・・」と思いつつコーヒーを一口啜る。「美味い、こんなコーヒー飲んだこと無い・・・・」現代のインスタントコーヒーだが昭和20年代のコーヒーよりは素材も良く味には雲泥の差があった。「それ飲むと落ち着くでしょう。申し遅れました。自分は大平大陸士長、軍隊で言えば上等兵、園下さんと同じです。」そう言って小田原に指名された大平が、自衛隊の生い立ちや日本の戦後史などをかいつまんで説明した。敗戦から始まった戦後史。現役で戦っている旧軍兵士に敗戦したという事実を話すことについては大平も躊躇したが、敢えて全てを語った・・・・・・あくまでかいつまんで。
第6状況に続く
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