ショートアロー!「エノラ・ゲイ撃墜指令」第3状況
第3話です。徐々に自分の置かれている状況に気付き始めた高射隊員たち。旧日本軍暁部隊でも動きがあった・・・・。それは・・・・・
第3状況 ここは1945年!?
日本海側島根県沖合、米空母ランドルフ。「デッキクリア!発艦せよ」1機のF6Fヘルキャット戦闘機が飛び立つ。島根県を横断し、広島県に出て、広島師団司令部等の偵察が任務だった。搭乗員は米海軍大尉エドワード・トーマス。日本軍機20機以上落としている精鋭だ。そのF6Fは迎撃を受けることなく広島上空を通過。偵察を完了し一旦瀬戸内海に出て旋回、ランドルフへ帰還しようとしていた。瀬戸内海には大小の島々があり、無人の島も沢山ある。「島々が美しい、戦争で来なければ良いレジャーなのに・・・・」とエドワードは思った。
第12高射第一小隊が漂着?した島。73式小型トラックが海岸線の砂浜を走っている。偵察にでた小田原と強羅の中隊長車だ。「道が悪いな・・・・。」小田原がつぶやくと「ラリーやってた頃を思い出します。国際的な大会にも出たかったんですがね」と強羅。「ん!?」小田原が太陽に何か反射した何かに気付いた。小型の飛行機らしかった。小田原はミラー越しに接近しつつある飛行機を見たまま「プロペラ式か?民間のセスナか?」と呟く。機体が近づいてくる。高度が低い。そのまま海岸線を走る中隊長車を横目に飛行機が追い越す。濃いブルーに塗装された太い胴体、翼と機体に星のマーク、アメリカ軍のマークだ。「なんだ、あの飛行機?」小田原が言うと「あれは大戦中の米軍機です、たしかグラマンF6Fです。前に大平士長がプラモ作ってました。」飛び去るグラマンを凝視しながら強羅が言った。「何で大戦中の米軍機が・・」小田原も飛び去る機影を凝視した。グラマンは旋回し、また近づいてくる。「中隊長、嫌な予感がします。一旦茂みに入ります!掴まってください」強羅は海岸線に平行する茂みへ急ハンドルを切りアクセルを踏む。中隊長車は猛スピードで茂みに入った。戻ってきたグラマン。エドワードは中隊長車が消えた茂みの方を見ながら思った。「なんだ、あの車。あっという間に視界から消えたぞ、日本軍の新型車か?武装は無さそうだったが、今まで見た日本の自動車にあのような加速をする車はない。ランドルフに帰って報告だ。」エドワードのグラマンは離脱していく。「中隊長・・・・・。」茂みに停車した中隊長車のハンドルをにぎったまま強羅がいう。「自分たちは過去に来てしまったのでは・・・」強羅の方を向き小田原が続ける「おれもそう思って居たところだ・・・・。よし集結地に戻ろう」
「あっ中隊長戻ってきた!」中隊長車が停車し、小田原が降りる。強羅が中隊長車を移動し偽装を始めている。「中隊長・・・・」隊員たちが中隊長の元に集まる。自然にミーティングが始まった。各々が業務用天幕に入る「ここはどうやら無人の島らしい、それ以外はまだ解らない・・・。」小田原は薄々感じていた事態について言おうか考えた、隊員たちにあらぬ不安を与えることになる?そうとも思って葛藤していた。「無線通信を試みましたが応答が有りません、私物携帯やスマホ等も圏外、というか全く使用できません。」通信班の大平が報告する。「それに、ここに到着したとき・・・・紫電・・・旧日本軍の戦闘機、紫電改を見ました。もしかして此所は・・・。」大平の報告を聞き小田原は偵察の結果の全てを言うことにした。「此方はグラマンに遭遇した、大平、お前の思っている通りだろう、おそらく此所は過去の世界、しかも太平洋戦争中だ・・・・」小田原の言葉に隊員達は息をのむ。「我々は、とにかく、常識では考えられない事態に遭遇している。まずは一致団結してこれを打開しなければならない。」小田原は言い放った。隊員たちは不安を隠せない状態ではあったが、各人が打開策を考え始めた。日はすっかり落ちていた。「あれこれ考えても直ぐに答えは出ん、メシでも食って落ち着こう。」補給班長の野森がそう言いながら戦闘糧食のパックを配り始めた。
「おい、爆破は大丈夫か?」暁部隊兵士、園下が部下の園上に言う「時限式を仕掛けました。そろそろです、ほら!」ズズズンーン!資材倉庫が爆発した、部隊の兵士達が資材倉庫に向かう。この騒ぎで大型発動艇、大発の桟橋は誰もいなくなっている。幸運にもエンジンがかかっている大発がある。「行け!」二人はまんまと大発の奪取に成功。一路、瀬戸内海の無人島、御門島を目指した。大発が奪われ、兵士2名が脱走したことに暁部隊の兵士達が気付くのはもう少し後だった・・・・・。
第4状況に続く
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