第3話 『異世界2日目』 初魔法
~翌朝~
イフリュートは魔法書の魔法を確認して、家の中のほこりなどの汚れを掃除して、お風呂に入りベッドで寝た翌朝。
川に向かって魔法書に書かれていた雷魔法『サンダー』を唱え、魚を感電させた。
川に浮かぶ魚たち。
森の中に落ちていた木の枝を使い、魚を刺し、火魔法の『ファイヤ』を使い、焼き魚にして朝食の完成。
「よしっ、じゃぁ行こうかな」
こちらの世界の服であろう生活用品一式としてクローゼットに入っていた服に着替え、最後にマントを羽織る。
クローゼットの中に入っていた大き目のリュックサックに生活用品一式に入れなおして、家を出る。
洋服類はクローゼットの中にハンガーでかけられており、タオルなども畳まれて綺麗に置かれていた。
ラピィちゃんは、整理整頓ができる良い子なのかな?とそれを見てイフリュートは思った。
レイニー王国に向けて、森を抜けるために進む。
「あっ、果物っぽいの発見」
でも届きそうにない。木登りしても、落っこちそうだ。
「トルネア」
風の刃を使い、果物のなる木の枝を切る。
数回、外したが、何とか成功した。
「ウォーティ」
水魔法で果物を洗う。
出したい手に魔力を集中させ、魔法名を唱えることにより、魔法が発動する。
魔法の威力は固定ではなく、魔力の構成を行なうことで、水の出る量、スピードを変更することができた。
「うんっ、おいしいな。これは、あれだな桃だ」
一口食べる。みずみずしく甘い。
日本で食べた事のある桃そのものだ。
見た目も味もそん色ない。
と、イフリュートは思った。
『カキン、キーン、キーン』
桃を見つけレイニー王国に向けて進むこと、数分、人道に出そうな距離にまでついた。
何か、争う音が聞こえてきた。
高価そうな馬車が襲われている。
闘っているのは女性1人対男5人。
女性は、顔色が悪そうでふらふらと剣を振っている。
剣を地面に突き刺し、杖のようにし両手で持ち、肩で息をしている様子だ。
「ふっ、どうだ毒が回って身体をむしばみ辛いんじゃないか?」
剣を手に持ちにやにやとした顔で女性を見ている男たち。
「きさま……」
話を聞くに、男たちが悪者そうだ。
女性も男性も騎士っぽい格好をしている。
「こんにちはー」
あっ、まだ、おはようございますかな?とイフリュートは軽く考えた。
危機感が足りない。
ゆとり世代とはこんなもんだろうか?
「誰だ、きさま?」
あれっ、出て行かないほうが良かったかな?とイフリュートは軽く首を傾げた。
「えっと、新名 イフリュートといいます。あっ、イフリュート・ニイナって言い方が正しいですね。中学の授業でそう書いてあった気がする。改めまして、こんにちは。あの、自分レイニー王国を目指していましてどちらにありますか?」
親切に教えてくれそうにもなさそうな状態なのだが、イフリュートは空気が読めない子の様だ。
「ふん、死ね」
走ってきた男性騎士がイフリュートに向かって剣を振りかざした。
全身鎧で、顔だけ見える状態の騎士。
それよりも、春の季節ということで薄着のイフリュート。
軽々と避ける。
「えっ、危ないですよ?剣なんて振り回したら」
後ろに飛びのいたイフリュート。
周りには木しかない。
武器になりそうなものと言ったら、そこらへんに落ちている木の枝、木の棒。
「俺たちの姿を見たからには生かしておけねぇんだよ」
完全に悪役と化している男性側。
「女性側に加担しようかな?グラビティア」
イフリュートは、重力魔法を放った。
両手が先ほど手に入れた桃たちで塞がっているイフリュートは、グラビティアと言い目線で魔法を発動する。
その魔法名を唱えると同時に、イフリュートの足元と男たちの頭の上に同じ魔法陣が浮かび上がる。
「なっ、身体が重いぞ」
「あいつ、魔法使いか」
「平民みたいな恰好しやがって」
イフリュートは、マントは脱いで、もぎとった桃を入れるために袋代わりに使っていた。
イフリュートは知らないが、マントを着るのは魔法使いである。
その魔法使いの象徴であるともいえるマントを脱いでいたため、男性騎士たちは魔法使いであるという考えに及ばなかった。
それに、平民ごときに本気を出すほどでもないと安易に考えていた男性騎士は、イフリュートに切りかかるときも手を抜いていた。
そのため、あっさりとイフリュートは避けることに成功した。
上から下に押されるような感覚で、男たちは身動きがあまりとれない。
グラビティア自体が、日本での何かしらのゲームのレベル10以下で覚えられる魔法であるため、威力は大したことない。
ゆっくりとスローモーションで動く騎士たちから武器をホイホイと取り上げたイフリュートは、くるしそうな顔をした女性に近寄っていく。
女性は、目を開けているのがギリギリのような状態で、言葉を発することはできなさそうだ。
冷や汗だらだらである。
「あとは、毒だったかな?」
女性が毒に侵されている旨を男性達が言っていた。
毒は、水で薄めたり、それ用の解毒薬を使うのが日本では行う行為であろう。
「キュルー」
解毒魔法を女性に向かって放つ。
最低限必要そうな魔法をラピィからもらった魔法書で確認していたイフリュートは女性に向かって『キュルー』と唱えた。
「なっ、貴殿感謝する」
女性はイフリュートにお礼を言う。
即効性のある解毒魔法のようだ。
その後、一瞬のうちに男性騎士5名の気を失わせた女性。
血が出ていないのを見るに死んではいなさそうだ。
女性と男性で実力差がかなりあるのだろうが、多少の身動きしか取れない者など、恐るるに足りないと言った感じで仕留めていっていた。
殺さないで生かす方が難しいと聞いたことがある、中1の頃の社会の先生が武士道について語っていたなーとイフリュートはその光景を見ながら、手に持っている桃を1つ掴みむしゃむしゃと食べた。
マイペースである。
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