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第10話 アリストア大食堂




 フリューミア学園の食堂は、大きかった。

 アリストア大食堂と呼ばれるみたいだ。


 とても長いテーブルに座り心地のよさそうなイス。


「このテーブルみたいです」


 教務部でもらった1年生のしおりをみながらユアがイフリュートに教える。


 テーブルは全部で4つあった。

 右の列から1年生、イフリュートの座る2年生、そして高学年の3年生、最後に教師などが使用可のテーブルが並んでいるみたいだ。


「どうぞ」


 ユアがイフリュートとラピィの分のイスを座りやすいように後ろに引く。


「ありが…」


 お礼を言おうとすると、ユアが咳払いをした。

 安易に使用人に礼を言ってはいけない、と部屋を出る前に言われていたっけ。

 貴族は大変だ。とイフリュートは気持ちを引き締めた。


 ラピィは、慣れた感じで普通に座っている。

 因みに、イフリュートの使い魔が人型であるのと、お姫さま直々のイフリュートの推薦入学により、便宜が図られ、本来使い魔は食事を食堂では取れないのだが、イフリュートと一緒にできることになった。


 使用人たちは、貴族と同じ席で食事を取ること等許されていない為、大食堂とは別に存在する小さな食堂で食事を取るみたいだ。

 

 すべてのテーブルにテーブルクロスが敷かれてあり、アリストア大食堂を華やかに飾る為であろう花々が見受けられた。

 

 イフリュートとラピィが座ったのを確認すると、ユアがおもむろにキッチンへと向かっていった。


 数分後、レストランなどで見たことのある、サービスワゴンに料理を乗せて戻ってきた。


「おいしそ……」


「ゴホンッ」


 ユアがまたしても咳ばらいをした。

 おいしそうと言ってはいけないみたいだ。


「普段から、良い物を食べていないと思われてしまい、他の貴族の方々に舐められてしまいます」


 ユアは、イフリュートの耳元に口と右手を持ってくると周りに聞こえない声で理由を教える。



「いただきます」


 おいしい。でも、量が多いと思う、とても食べきれた量じゃない。とイフリュートはユアが持ってき並べた料理を見て思った。


「やぁ、早速会えたね」


 マルックがイフリュートの隣に座った。


「そうだね、マルック」


 手慣れた感じで席に座るマルック。


「春はおなかが空くねー」


 おなかをさするマルック。


「そうだねー」


「おっ、今日は、朝からステーキか。やっぱり肉は牛肉のステーキだよねー。ローストチキンもおいしいけどー、1番は牛のステーキだよ」




 

「おーい、アルトー。こっちこっちー」


 マルックは、急に立ち上がり、男の子を呼んだ。


「おはよう」


 アルトと呼ばれた男の子とその使用人は小走りでイフリュートたちのいるテーブルへとやってきた。


「えっと、紹介するね。今来たのが、アルト・ルア・ジューン。そして、僕の隣にいるのがイフリュート・ルア・ニイナ・ステュアート」


 マルックが紹介してくれた。


「はじめまして、よろしくおねがいします」


 異様に低姿勢な感じの男の子、中世的な感じのアルト。

 

 自分で言うのもあれだけど、僕も、可愛らしい顔立ちである。

 最近まで、母親や親せきのお姉さんたちに女装させられていた。

 しっかり化粧までしていた。

 そんなアルトくんは、僕よりも可愛らしい。

 笑った時に両頬にえくぼがでているからそう感じるのであろう。

 さらさらとしてそうな髪。

 髪の色は、きつくない感じの赤色で、髪の長さはショートカットの女の子に近い。

 瞳は大きく、青空によく似た色をしている。

 身長は155cmくらい、僕よりも小さく、マルックと同じくらいだろう。

 アルトくんは、マントの星を見るに、準男爵か騎士爵みたいだとイフリュートは思った。


「よろしくお願いします。お互いに敬語は、なしでどうかな?これから仲良くしてもらえると嬉しい」


「ぜひっ!!」


 イフリュートが差し出した手を、ブンブンと握るアルト。



「イフリュートくんは、当主さまなんだね。若いのにすごい」


「お姫様にいろいろ、配慮してもらったんだよ」


「どういうことー?」


 マルックがステーキを頬張りながら聞いてきた。

 貴族としての食事のマナーはどこに行ったんだろう。


「お姫様をたすけたんだ」


 特に口止めはされていない。

 むしろ、言ってよいと言われている。

 急に名も知らない子爵が出てきて、いちゃもんを付けられる可能性があるからと。


 爵位を受け賜わったお披露目会を、伯爵家になったアスリア邸でイフリュートの分も含め合同で行うと聞いている。




「んっ、食べる物みんな一緒じゃないの?」


 イフリュートが森の中で育ち(一日だけだけどね笑この内容は秘密)、お姫様を助けこの学園に来たまでの過程を説明し終えたころ。

 ラピィが使い魔である旨も説明した。

 驚いたみたいで、マルックは、ラピィに握手を求めていた。

 ラピィも敬われて、まんざらでもない感じだった。


 アルトの使用人ことメイドがサービスワゴンに料理を乗せてきた。

 その料理は質素な感じ。

 メニューはパンにスープ、サラダであるが、まだ、ステュアート村の宿屋で食べた料理の方が豪華に感じるものだった。

 

「爵位によって、食べられるものが違うのさー。準爵位の貴族は領地を持たずに、親が平民であることも多いから王国がお金を代わりに出してくれるー。だから、準爵位たちはお金がないから学園では貴族として最低限の生活を送ることになるのさー」


 マルックがイフリュートに説明した。


「寮の部屋なんかも、爵位によって格差があるー。僕が知る限りでいうと、子爵位は、部屋にセミダブルベッド、使用人用のシングルベッド。大きなソファー2つに大きなテーブル。シャワールーム、バスルーム、トイレに、クローゼット、タンスなどなどさまざまな物があるー。アルトの準男爵位の部屋は、シングルベッドに小さめのクローゼット、テーブルも小さ目で、2人席だし、部屋の割り当ても玄関から遠かったり日当たり悪かったりと、劣悪とまでも言わないながらの環境さー」



 デザートのメロンを両手に持ちムシャムシャ食べながらいうマルック。


「僕のあげようか?」


「ごほんっ」


 またユアから咳払いをくらうイフリュート。


「えっ、ダメなの?僕食べきれないんだけど」


「アルトさまが、お情けを受けているように周りの人は思ってしまいます」


 なるほど、そういうことか。

 うーん、困った。

 アルトくん、見るからに食べたそうな感じなんだけど。

 とイフリュートはあごに右手を持ってきて少し考えた。

 

「僕は、アルトくんよりも爵位が上だから、命令って感じにすればいいんだよね。なら、僕はアルトくんがおなかいっぱいで授業中眠くなってしまい集中できないことを望んでる。だから僕の料理を食べて」


 ちょっと、無理やり感があるけど。どうかな?とイフリュートはおそるおそるアルトとユアを見る。


「あはは、イフリュートくんはおもしろいね。でも、ありがとう、命令に従わせていただきます」


 イフリュートが言い終えた後、アルトはふざけた感じで命令に乗っかった。


 対面に座っているアルトの後ろに立っている使用人さんも、どこか嬉しそうな感じだ。

 使用人さんはアルトに似ている。


「あっ、ぼくのふたごのおねえちゃんのソプラノです」


 イフリュートの視線に気づいたのだろうアルトが自身の使用人を紹介した。


 年齢を考えると、ソプラノは、魔法が使えないみたいで平民のようだ。

 見た目はアルトにそっくりで、違いといえばAカップぽい胸に、ポニーテールにしているアルトと違い長い髪。







 イフリュートたちは、朝食を摂った後、少し他愛のない話をし、そろそろ、授業の行なわれる教室に行こうということになり、アリストア大食堂を出た。


お読みいただきありがとうございます

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