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第一話「エンカウント」

初投稿です!気軽に読んでいただければ幸いです☆

 


 全世界の天文学者は頭を抱えていた。なんでこんな事が起きたのか、誰も説明できなかったからだ。

そして人々はこぞって天体望遠鏡を手にこう叫んだ。


「ホントに、ない!!」


 なにが「ない」のか?それは、地球から遠く離れた第五惑星、木星である。


 宇宙から木星が突然消えた―――謎の物質にゆっくりと食い荒らされドラマチックに消失したのではなく、でっかい彗星がボガーン!と衝突しダイナミックに木っ端微塵になったのでもなく、木星は全人類が目を離した隙に忽然と消えた。元々そこに惑星などなかったかのように…。


 ☆


「まーたこのニュースぅーーー!?」


 天気予報を期待していた私はテレビをつけるなりうんざりする。どのチャンネルも昨日の晩から消えているという木星の話ばかりで、一向に天気予報を教えてくれない。遠い宇宙の天体より、地球の気象情報の方がよっぽど必要な情報のような気がするんですけど!ってか、もうこんな時間じゃん!?週間予報では確か、今日あたり雨模様だった気がするけど、そんな事気にしてる場合じゃない。


 私は急いで部屋を出て、住居者用の駐輪場に走る。最近買ったばかりのミニベロにまたがり、猛烈にペダルをこぎ出した。通勤途中見上げた空は、もやもやと曇っているが、なるべくそれは見ないようにする。


 ものの数分で会社に着き、さっさと自転車を停めオフィスに向かう。大丈夫大丈夫。始業時間まであと5分もあるい何か起きない限り普通に歩いたら間に合う間に合う。

 自動ドアを抜け、数歩歩いたところだったろうか。ふと何か強烈な気配を感じる。


 ……?


 なんとなく視線を気配の方向にうつす。


「!!!!!!」


 思わずのけぞった。ヒールがかろうじて床を突き後ろにずっこけるのはどうにか免れたが、カッ!!というヒールの音が無機質なロビーにやたら響き、なんともいえないマヌケな風情を醸し出した。しかし、そんな事は視界の先の衝撃に比べれば何でもなかった。


 街路に面したガラスの外には、古代ローマ人がいた。 のみならず、それはまっすぐ私を見つめている。ガラスを隔ててしばし、


 見つめ合う。


「な、何……!?」


 遅刻しかけているのも忘れ呆然と立ち尽くす。ガラスの外の通行人たちも同じように呆然としている。ゆるくパーマのかかった髪に、たっぷりとたくわえられた口髭。着ているゆったりとした衣服(というか布)は、たしかトーガという名前だと何かで読んだ事がある。

 見れば見る程古代ローマ人だが、その姿はなぜが滑稽には見えない。明らかに異次元の存在であるはずなのに、その存在感、、威圧感が違和感を軽々と凌駕している。


 神?


 そうだ。そうに違いない。しかしそれは見た目がまんま神だからじゃない。オーラというか、存在そのものが神としか言いようがない。


 しばらく時が経つのも忘れて呆然と神に間違いない人物と見つめ合っていたが、ふと壁の時計が目に入る。8:45。…8:45!?遅刻!!!!慌ててオフィスに走り出す。立ち去る寸前もう一度だけガラスを見遣ると、その人は消えていた。なんだったんだ?普通に考えたら恐怖体験でしかないはずなのに、不思議とそんな気がしなかった。むしろなぜかすごく気分がよい。朝からいいモン見たなーっという感じだ。


 ☆


 結局一日中上の空で、何も手につかない一日が終わる。帰り道、ボーッとしたまま自転車置き場に着き、ボーッとしたままミニベロにまたがる。


「フギャッ」

「!?」


 な、なんかお尻にムニュッと!?全力でサドルから身を引きこわごわミニベロを見ると、そこには茶色いしま模様の猫が鎮座してこっちを見つめている。私はなぜかサドルにいた先客(猫)の上に思いっきりまたがってしまったらしい。


「ちょ、なんで猫~!?」

「にゃおん。」

「もー、びっくりしたあ。こんなとこに乗ったらだめだよ!!踏まれちゃうよ!!」


 しっしと猫を追い払いつつ、猫ふんじゃったを自分がナチュラルにしてしまった事に正直驚いた。ていうか逆にナチュラルにふまれちゃう猫って猫としてどうなんだ。しかもこの猫、どかないんですけど。何か言いたげに、赤い瞳で私を見つめている…けどごめん、私猫の気持ち分からない。

 というかこの視線、どこかで感じたことのあるような。不思議な懐かしさとともに、言いようのない幸福感というか、とてもラッキーな事に遭遇しているような気がする。


 あ、神だ。この感覚は朝の謎の神(?)に見つめられていた時の感覚だ。


「おまえ、もしかして」


 問いかけた言葉は空しく、その猫はまたしても忽然と姿を消していた。

 もしかしてどっちも幻覚??はあ。なんか今日は……やばいな。頭を振って、さっさとミニベロにまたがる。


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