第21話 商談をしよう 2
商談を進めるトリス。果たして上手く纏まるのでしょうか?
暫くグレゴールを放置することに決めたトリスは、転移した場所が、以前来たことがある場所なのかと、岩礁に付けておいた目印を確認してから、そこに空気調整の機能が付いた机を設置し、お茶の準備をする。半径3メートルほどに魔道具の効果が及ぶように付与したので、水の中でも優雅にお茶会が出来るようになっいる。
現在この世界での付与術の認識は、自身の使える魔法を物に付けることが出来るものというのが一般的だが、トリスは気付いてしまった。『魔法がイメージで変化するなら、付与術もイメージ次第でどうとでもなるのでは?』と。その結果『こういう効果を付与するぞ!』という強い意識により、ある程度自由に様々な効果が付与できるようになった。まぁそれもトリスであるからこそ出来る芸当ではあるのだが。
今回の空気調整の魔道具は、周囲に円形の空間が広がるようなイメージで付与され、その中は一定の空気の状態(地球での空気の組成をイメージ)が保たれるようにされたものだ。
「さて、いい目を覚ましてください!」
準備が整ったトリスは、グレゴールの顔の前で手を叩く。
「はっ!?…わ、私はどうしてここに?あ、転移か。ってそうじゃなくて何故海の底!?魚が泳いでる!?」
完全に興奮状態に陥ったグレゴールに、トリスは御満悦の笑を浮かべながら言う。
「落ち着いて下さい!確かにここは海の底です。具体的にはウェルト大陸の北東部から数十キロ離れた場所です。」
「ウェルト大陸だって!?そんな所に一瞬でどうやって…って転移か。じゃなくて、何故態々こんな所に!?」
ウェルト大陸はオーストラリアに似た形をしていて、温暖な気候が広がっており、地球でいうオセアニア地方やインドネシアがあるような場所である。そのためサンゴや熱帯魚など、見る者を魅了するような光景が広がっている。
この世界は、球形の星に3つの大陸がそれぞれ隣合って存在している。ウェルト大陸はステイブル大陸の東部に位置しているが、海を隔てて数百キロはある。その上最も遠い北東部まで来たのだ。グレゴールでなくても驚くであろう。
「まぁ、ここに来たのは、ここが一番手っ取り早く説明が出来るかなって思ったからですね。」
「そ、そんな理由でこんな非常識なことを…。はぁ、分かりました。ではどうして海の底を説明場所に選んだのか教えてください。」
「ええ、分かりました。その前に質問いいですか?」
「?どうぞ。」
「今、この光景を見てどう思いましたか?」
「…そうですね。とても綺麗で、叶うならば毎日見たいですね。あと私の妻や息子、娘達にも見せてやりたいと思いましたね。」
確かに色とりどりの魚が、青い海の中を泳ぐ姿はとても美しく、万人を魅了するだろう。
グレゴールの言葉にトリスは手応え感じ、熱く語り出す。
「もしもこの光景が、お手軽に見れるとしたらそれは素晴らしい事だとは思いませんか?それも内陸部に位置する王都においてです。」
「た、確かにそうは思いますが、幾ら何でも無茶なのでは?」
「その気になれば、私1人でもそのような施設を作ることも可能です。」
「な!?それは本当ですか!?し、しかしならば何故私に商談など持ちかけたのですか!?…あ、成程。貴方は幾つか提案したいことがありそうな事を言っていました。それに正体も隠すような格好をしています。ということはその事業だけに力を注ぐつもりは無く、もっと多くの事業をしたいから、運営を我々カレンベルク商会に任せたいということですね?分かりました、引き受けましょう。」
最初は戸惑いのあまり思考が定まらなかったグレゴールだが、持ち前の頭の回転の速さで、あっという間にトリスの真意を見抜く。
「ありがとうございます!流石はグレゴールさんですね。私の考えをあっという間に見抜くとは。確かに私はこれとは別に提案したい事業が幾つかあります。その為には、土地やら運営やら複雑なことは専門家に任せなければ、その内首が回らなくなるのは目に見えてますからね。」
「やはりそうですか。漸く貴方の真意が分かって良かったですよ。」
「いえ、こちらこそ回りくどいやり方ですみませんね。何としてでも受け入れて貰いたかったものですから、色々と揺さぶりをかけてみたりしてたんですよ。ではこの事業の施設を、『水族館』とでも名付けましょう。入場料やグッズの販売、それとパフォーマンスで多くの収益が見込めると思います。」
「成程。詳しい話は後ほどにしますか。それでは土地を用意しますので、建造はお願いできますか?」
「はい、分かりました。あ、あと魚類の専門家とかも呼んで頂ければありがたいですね。世話とかするのに生態をよく知らなければなりませんから。」
と、こんな感じに水族館に関する話は進んでいくのだった。
長々と説明ばかりですみません。




