第15話 街に出よう 1
街に出るとは一言も言っていません(笑)。
それでは本日2話目、どうぞご覧下さい。
パーティーの翌日、トリスはアリアーヌ以外には内緒で王城の外に出ようと画策していた。勿論例の哀れな仔羊の下へ向かうためである。
「──という事で、私のアリバイ工作に協力していただけませんか?今なら私の前世の知識の一部を開放しないこともありませんよ?」
妖しく微笑みながら魔法の言葉を口にし、アリアーヌに協力を要請する。
「乗った!!」
即答である。
それもその筈であり、魔法の発動には確かにスキルによる適性が必要だが、それに加えてイメージがとても大切である事が最近分かってきたためだ。自身の事を喋らない代わりに、アリアーヌに燃焼の知識を教えたところ、威力の向上が見られた。
更なる魔の高みに至れるチャンスとあらば、アリアーヌは悪魔にでも魂を売りそうなレベルで魔法には貪欲に向き合っているのだ。
「では、具体的にはどうすれば良いのだ?」
「そうですね…。私の身代わりを作れる魔法とかありません?」
「勿論あるぞ。『影分身』。」
アリアーヌがキーワードを口にすると、アリアーヌのそっくりさんが生み出された。
「す、凄いですね。どっからどう見ても本物にしか見えませんよ!」
「あぁ。これならば外に出ても問題無いだろう。どうせお前の事だ。通常1時間保てればいいものを、数日間はもつだろうよ。」
アリアーヌにジト目で睨まれる。
トリスに散々非常識な光景を見せられたため、ちょっと根に持っているのだ。
「そ、それもそうですね。あははは…。」
そんな視線を向けられたトリスは、笑いながらそっぽを向く。
「そ、それと肉体年齢を自在に操る魔法とかありますか?」
「ふむ。それなら聞いたことがあるぞ。確か時空属性の上級魔法だったか?え〜っとだな。…あ、思い出した。年齢操作っていう魔法だったと思う。自身の年齢を年単位で変化させられる。元の年齢から離れれば離れるほど魔力の消費が激しくなるが、一度発動すれば数日間は効果が持続するはずだな。」
「へぇ。便利な魔法ですね。じゃあ、やってみますか!『年齢操作』!」
トリスが魔法を使うと、体が光に包まれみるみる大きくなっていく。そして光が収まると、そこには20歳近くの青年が居た。
「お!成功したみたいですね。どうです?師匠?」
「…。」
トリスがそう問いかけるが、アリアーヌは顔を手で覆い、指の隙間からチラチラと見るだけで無反応である。
「え?何ですか?その反応は?…あ!!服が!!」
そう。急激に成長してしまったため、服が破れてしまい、伸びやすい繊維で出来ているパンツだけが残っている状態になっているのだ。
「か、『解除』!そして『収納』!」
トリスは慌てて年齢操作を解除して、元の年齢に戻ってから異空間から服を取り出して急いで着る。
「…ま、まったく。少しは考えれば分かるだろう?」
漸く覆っていた手を離したアリアーヌから文句を言われる。
「す、すみません。…それにしても師匠。」
トリスは謝りながらも、ニヤニヤしながらアリアーヌに言う。
「ん?…何だ?」
そのニヤニヤ顔に、アリアーヌは嫌な予感を覚える。
「師匠って、案外むっつりなんですね。」
「フン!」
「グホッ!」
トリスがアリアーヌを揶揄うと、アリアーヌがどこからともなく取り出した杖で頭を殴られたのだ。
「す、すみませんってば。」
「ふん。次はもっと強く殴るからな。」
アリアーヌは顔を少し赤くしながらそっぽを向いて言う。思わず揶揄いたくなったトリスだが、殴られるのは嫌なのでぐっと堪える。
こうして、着々と街に出る準備を整えていくのだった。
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