第146話 年甲斐もなく、心が踊ります!
明日も更新予定です!よろしくお願いします!
「フフフフフフフ。フハハハッゴフッ!ゴホゴホ。」
「え?いきなりどうしたの?おかしくなったの?」
平日のある日の夜、夕食後にゆっくり居間で、読書を楽しんでいると、いきなりトリスが気味の悪い笑い方をしたかと思うと、自爆して噎せたのだ。
それに対し、地味に辛辣な言葉を浴びせるホルス。
「いや〜、今度の夏合宿楽しみにだな〜ってさ。」
「あ〜、うん、そうだね。今年は何処なんだっけ?」
「西部地域の、海岸沿いの、ハーフェンって街だな。港町らしくて、海鮮類がめっちゃ美味しいらしいぞ。」
トゥール学園で毎年開催される、夏休み前の合宿についての話が膨らむ2人。
「近くに浜辺もあって、そこでは海水浴も楽しめるってさ。」
「へ、へぇ〜。何か詳しいね。若しかして、行ったことあるの?」
やけに情報を持っているトリスに、若干引きながらも質問するホルス。
「いや、無いけど。まぁ、純粋に楽しみで、本を色々と漁っただけだよ。」
「なるほど。にしても、気合いの入りようが凄いよ。いつもとは違って、何か子供っぽく見えるね。」
「む。確かに15歳の子供だけどさ…。」
トリスが浮かれていると、遠回しに言うホルス。その言葉に、少し頭が冷えたトリスは、頭をブンブンと振る。
ー幾ら精神年齢が30を越えようと、元々旅行は好きなんだし、加えて、夏の合宿といえば、勿論水着イベントだ!これで浮かれない訳が無い!うん、しゃあない!ー
別に、見目麗しい女性陣の水着姿が目的な訳では無い。勿論、見たいか見たくないかで問われれば、前者を選ばざるを得ないが、それはトリスにとって、些末な事であった。
ーフフフフフフフフフフフフ…。そう!この夏合宿で、ホルスには存分に、ドキドキしてもらわねばならぬのだ!そろそろ誰か、彼の心を奪ってくれ!そうすれば、他の女子も、危機感から、焦ってアピールをせざるを得ない状況になる。そうなれば…。クククク…。ー
心の中で、真っ黒な事を考えるトリス。また何か企んでいるようである。
「と、トリス。人には見せられないような、ドス黒い笑みを浮かべてるけど、何を企んでるの?」
「お?あ、すまんすまん。何でもない。楽しみだな〜って。」
「え〜、ホント?とてもそうには見えなかったけど?」
「ふむ。では今度から顔に出ないよう、気を付けるとするか。」
「え!?やっぱり何か企んでるんだね!?」
「さ〜てな〜?お、そろそろ寝るわ!おやすみ!」
まだ22時くらいなのに、一目散に自分の部屋に退散するトリス。普段なら天辺を回っても起きているというのに。
「今度、じっくり聞かせてもらうからね〜!」
逃げるトリスの背中に、ホルスからの宣言が届く。
しかしトリスは、見向きもせずに、だが手を振りながら、居間から飛び出すのだった。
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「おはようございます。皆さん、ちょっとこちらに注目、お願い出来ますか?」
翌朝、トリスは教室に到着すると、ローゼマリー、リタ、リア、フロレンティーナ、トートに声を掛ける。
この女性陣は、いつの間にか仲良くなっていたらしく、この教室ではいつも一緒に居る事が多かった。
「「「「「お、おはよう (((ございます)))。」」」」」
一度に大人数に声を掛けたせいで、括弧が…じゃなくて、普段、トリスが単体で彼女達に話しかける事は実に稀であったため、戸惑いながらも挨拶を返してくれる。
「実は皆さんに、ちょっとお渡ししたいものがございまして。」
トリスは、どこか彼女達に対して、壁のある口調で話し始める。クラスメイトであれば彼女達は、『敬語なんて要らない!』と言って、タメ口を利かせる事を半ば強制しているのだが、トリスだけはどうも敬語を止めないのだ。
そのため、何を考えているか分からない、壁を感じるという事で、少しトリスに苦手意識を抱いている者も多い中、そんな事は構わないリアが、躊躇なく話しかける。
「え?何かくれるの?」
「えぇ。でも、あげると言っても、特に価値のある物じゃ無いんですけどね。」
そう言って、トリスは懐から5冊の冊子を取り出して、それぞれに手渡していく。
その冊子の表紙には、マル秘と書かれており、見た感じとても怪しい物であった。
「これは一体何ですの?」
当然に疑問に思ったフロレンティーナから質問が飛んだため、トリスは彼女に小声でその内容を教えてやる。
「これはですね…(ゴニョニョ)。」
「…トリスさん!ありがとうございます!」
少しの間、トリスから説明を受けていたフロレンティーナは、彼の話を聞く内に段々と表情が輝き始めた。終わると、通常なら『感謝しますわ!』と言いそうなところ、嬉しさからか普通の口調で礼を述べるフロレンティーナ。
「フロレンティーナ様。後の説明は、よろしくお願いします。」
「えぇ!請け負いましたわ!」
フロレンティーナは元気良く返事をする。彼女を引き付けるような何かが冊子に詰まっていたのか。
ーフフフフ。これで根回しは半分ほど完了した。後は恙無く彼女達が動けば、九分九厘、俺の狙い通りになる。…しっかしまぁ、あのデザイナー、あんな際どいの作りやがって。色んな意味でイレギュラーに気を付けないと、彼女達を、延いてはホルスも悲しませる結果になりそうだ。ー
トリスは、少しの間お気楽モードで思考していたが、その目に段々と真剣味が帯びてくる。
彼の目には、フロレンティーナによって説明を受けた女性陣が、とても嬉しそうに話し合っている姿が映っている。彼が望むのは、そんな彼女達とホルス達が幸せな未来。その為ならば、自身が切れるカードならば、どんな犠牲を払ってでも良いと覚悟をしている。
それが他人の人生に、大きく干渉する対価である。そうトリスは考えているのだった。
【速報】血迷ったトモ、超重大なミスに気付く。
えっと、ちょっとやばいミスなんで、取り敢えず修正してからご報告します。何卒ご理解の程、よろしくお願いします。