第141話 御両親に挨拶を…?(2)
あまり間を空けずにで投稿が出来ました!丁度トリスから、『ホルスの活躍ぶりを、さっさと文字にして、大勢に広めろ』って脅は…イエ、ナンデモナイデス。ハイ。
翌日、トリスとホルスは、普段より早くに起きて、朝食を摂っていた。
「モグモグ…。ゴクン。…なんでこんなに早く起きてんの?まだ、朝の5時だぞ?」
「いや、だって、トリスのお父さんに会うんでしょ?しっかりと仕度して、失礼のないようにしないと!」
「いや、人の親父をなんだと思ってんの?レンバッハ家に楯突くほど、権力は無いぞ?…敵に回したら、社会的に死ぬのは確定だけど。」
いやに仰々しいホルスに、トリスは呆れを隠さずに呟く。しかし、社会的に死ぬとは、一体どういう事であるのだろうか?
「まぁ、その…、友達のお父さんに会うなんて、初めての事でさ、ちょっと緊張してるのかも。あははは…。」
トリスの最後の方のセリフは聞こえていなかったようで、その指摘に、ホルスは顔を少し赤くし、頬を掻きながら言う。
「畜生!可愛いな!」
「え?何て?」
ホルスの表情と仕草に、思わず叫んでしまったトリスだが、これも上手く聞き取れずにいたようだった。
―――見よ!これが超鈍感の実力である!
「いいや、何でもない。」
そんな事は勿論知っていたトリスは、内心などおくびにも出さずに、首を振る。
「そう?なら良いけど。…あ、そういえば、お父さんの好きな食べ物とか、物とかある?」
「ん?何で?」
唐突のホルスの質問に、トリスは首を傾げる。
「手土産を持って行きたいんだ。会うまでに、途中で何か買いたいな〜って。」
「あ〜、そーゆーね。なるほど。…う〜ん、難しい質問だな。」
「え?…何で?」
取り分け難しい事を聞いたつもりは無いのに、トリスが答えを渋るため、そんなに特殊な人物なのかと、少し胃が痛くなってくるホルス。
「いや、適当にお菓子でも買えば良いよ。特に好き嫌いは無いし。」
「え、うん。分かった。そうするよ。」
ホルスの疑問には一切触れずに、曖昧に買っていく物を決めるトリス。
この10年間で結構な時間を共に過ごして来たが、未だに仕事と家族以外に興味を示している姿を見た事が無いのだ。まさかそんな事をホルスに話す訳にはいかず、結果として曖昧な答えになってしまったのだ。
「さ〜て、集合時間は朝の10時だから、あと4時間はのんびり出来るな。…ちょっと体を動かしとくか。」
朝食を食べ終わり、一息着いた2人。そこで、トリスは提案をする。
「うん、良いよ。」
「よっしゃ!今日は負けんぞ〜!」
勝負事において、あまりホルスに対して白星をあげられていないトリスは、今日ここはと気合を入れて、2人で仲良く庭に出るのだった。
「ちくしょ〜。ぼろ負けやんか〜!」
数時間後、庭にトリスの悔しげな声が響く。どうやら、ホルスにコテンパンにされたようだ。
「あははは…。でも、割合的には6対4位だよ?」
実際、トリスとホルスの現在のステータスは、魔法以外は言うほど離れてはいない。しかし、対等なステータスでの打ち合いの経験数では、ホルスに軍配が上がるため、結果としてホルスの勝利に繋がる事が多いのだ。
「まぁ、いっか。よし、そろそろ行こう。」
「良いんだ…。」
さっきまで本気で悔しそうだったのに、あっさりと立ち直るトリスに対して、ある意味尊敬の念を抱くホルス。
こうして2人は、トリスの父親に会うため、街に出るのであった。
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「え?本当にここで合ってる?」
戸惑うホルスの視線の先には、街の中心部にある、とある商会の建物であった。
「おう、合ってるよ。」
「まさか、トリスのお父さんって…。」
「ん〜、その想像は、多分あってるぞ。」
「えぇ〜…。」
あまりにも予想外過ぎて、ホルスは言葉が無いようだ。
「さて、入口でたむろってても、迷惑になるだけだし、さっさと入ろうか。」
ポカーンとするホルスを置いて、スタコラサッサと建物に入って行くトリス。
「あ、ちょっと待って!」
トリスの背中を慌てて追うホルス。
建物内部に入ると、奥の方にある受付に座っている女性が顔を上げる。
「あ、トリスさ〜ん!お久しぶりです〜!」
「お〜、アメリア。久しぶり。相変わらず元気良いな。」
「えぇ、お陰様で!トリスさんには足を向けて寝られないですよ!」
「あははは。またまた、大袈裟な。って、そうじゃなくて、会長は何時もの部屋に?」
トリスは、彼からアメリアと呼ばれた女性と、何やら親しげなやり取りをしていたが、今日の本題を思い出し、慌てて話を止める。
「はい、そうです!」
「分かった。お疲れ様。」
「いえいえ!あ、今度、食事行きません?良いディナーを出す店を見つけたんですよ!」
「あ〜、また今度な!」
いきなり食事に誘われたトリスは、今までの満面の笑みから一転、非常に困った表情で、言葉を絞り出し、アメリアに背を向けて、目的地である上の階へ向かうべく、階段に向かう。
「はい!約束ですよ〜!」
トリスの苦し紛れの言葉とは知らずに、アメリアは滅茶苦茶に良い笑顔で、手を振りながら言う。
「はいはい。」
トリスは振り返らず、右手をヒラヒラと振りながら、階段を登って行く。
「…。はっ!?あ、待ってよ〜!」
アメリアの、あまりのパワフルさに、我を忘れていたホルスは、今度こそトリスに追い付くべく、大慌てで階段を登り始めるのだった。
おやおや?この流れは…?