第123話 事後ですね(事件のって意味です) 2
思ったよりも、ギリギリで詰め込めました…。危うく次回予告と違うものが出来そうでしたよ(笑)。
「さて。では今は、取り敢えず元通りの状態にするという事でよろしいですね?」
話し合いも一段落ついたところで、トリスは話を纏める。
そしてそれに頷くフロレンティーナ。
「ええ、そうですね。」
「えっと、つまりこれでお別れとかじゃなくて、学園に戻ってきてくれるという事だよね?」
地味に嬉しそうな表情で、ホルスはフロレンティーナに聞く。
「はい、そうなりますわね。お隣同士、よろしくお願いしますわ。」
「う、うん。よろしく、ティーナ。」
かなり畏まった口調に、ホルスは戸惑いながらも『ティーナ』と笑顔で愛称呼びをする。
「!…よろしくですわ、ホルスさん。」
笑顔プラス愛称呼びで、少し顔を赤くしたフロレンティーナは、ボソッと小さくホルスを愛称で呼ぶ。
そんな2人のやり取りに、ちょっと居心地が悪くなったトリスは、トートが慌てて出て行ったまま開いているドアから、そっと抜け出す。ホルスなら気付くかもしれないが、あのまま甘ったるい雰囲気の真っ只中に居るよりはマシと考えたのだ。
-さて、トートはどこに行ったんだろうか?あれから30分くらいは経ってる筈なんだがね?-
それなりに時間が経過しているのにも関わらず、中々帰ってこないトートの行方が気になるトリス。
するとそこに、丁度タイミング良くトートがダッシュで帰ってくるのが見えた。
「あ!トリスさん!」
「し〜!ちょっと今、ホルスとフロレンティーナ様が良い感じなので、少し離れたところで話しましょうか。」
今後のため、トートから更なる情報の収集は必要であると考え、王城の中庭が見える窓辺を指で示すトリス。
「は、はい。」
一方のトートは、トリスと2人で話す事を、心の中では少々不安に思っていた。
-うぅ。トリスさん、何を考えているのか、ちょっと分からないから怖いな〜…。ホルスさんの話では、平民の方と聞いたけど、普通の平民が隣国の王城まで乗り込んでこられるものかな?
それに、たまに酷く感情のない目をしてるのも、ちょっと気になるよね…。-
トートに酷い言われようのトリスだが、声には勿論、顔にも出していないため、気付いてはいないようだ。
「さて、では先程纏まった事をお話しますね。」
「纏まった事ですか?」
「えぇ、目を覚まさまれたフロレンティーナ様含め、私とホルスの3人で話したんですが、―」
話し合いの結果、現状維持を演じ続けるという事をトートに伝えるトリス。
「はい、分かりました。では、私もトリスさん達にご一緒しても良いですか?」
分かりましたと笑顔で頷きながら、何やらおかしな事を言うトート。
トートの発言に、ちょっと理解が追い付かなかったトリスは、思わず反射的に聞き返してしまう。
「はひ?」
「先程、王族全員の暗示を解いてきました。念の為にと暗部の方々から教えてもらっていた事が役に立ちましたね。恐らく、強制がかけられているから何も出来まいと、油断していたからでしょうね。」
「…。」
最初は間抜けな顔をしていたトリスだが、トートが話を進める毎に笑顔になって、うんうんと頷いている。
「あと数時間もすれば、完全に意識が戻ると思います。あ、それと、魔導師団団長に、退団届けも出してきました。暗部の方々が用意した身分ですからね。漸く退団できたかと思うと、嬉しくってたまらないですよ!」
本当に嬉しそうに話すトート。
そんなトートに笑顔で、棒読みなセリフを言うトリス。
「ほほぅ、そうですかそうですか。それは良かったです。」
「は、はい?あの、笑顔が怖いです。可愛い顔をしているのに、何故か怖いです。」
その様子に、恐怖を感じるトート。しかし何故トリスから恐怖を感じるのか分からないため、素直にそれを口にしてしまう。
「ははは。それはありがとう。それよりも、俺の話は聞いてましたか?敵にバレないように、表向きは何も変わらないように動こうっていう結論を、伝えた筈なんだが?」
段々と粗雑な口調に変化していくトリス。
「え?トリス、さん?口調が変わってますよ?」
「そんな事より、トートはまだ気付かないのか?自身の過ちを。」
「え?」
ポカンとした顔をしているトートに、トリスは我慢がきかなくなったのか、ついに堪忍袋の緒が切れる。
「は、ははは…。こんの、ド天然が〜!!ゆるふわ系お姉さんキャラにプラスして、天然まで属性として備えてるとか、どんだけ欲張ってんだよ!?じゃなくて、よくも俺達の話し合いを無駄にしてくれたな〜!!」
「え、えぇ!?」
いきなりの叫びに戸惑うトート。
しかしこの叫びだけではトリスの怒りは収まらない。
「他の王族の封印を勝手に解いた事については、俺がストップかけなかったのも悪いから過失相殺するとしても、魔導師団を退団した事については、トートが一方的に悪いよな!?退団すれば、暗部とやらが動くのは確定だろうが!!」
「あ…。」
トリスの叫びに、今更ながら自分がやった事について、どれほどまずい事か理解したトート。
「…。コホン。さて、お説教はこの辺で終わりにしときますか。トートさんがやっちゃった事に関しては、もうどうしようも無いので、今は先を考えましょうか。」
「はい…。」
トリスの叫びに驚いていた表情から一転、意気消沈した様子のトート。
「人払いの結界が効いてる間に、さっさとずらかっちゃいましょうか…。」
人払いの結界とは、よくファンタジーものに出てくるような代物で、一定時間特定の人物以外は入ってこれないようにする魔道具である。お札のようなもので、効果時間は1時間ほどである。それが効いている間に、トリスの不手際と、トートの判断ミスにより計画が崩れた事を、部屋に残るホルスとフロレンティーナに説明し、王城から逃げるように立ち去るのであった。
次回は、閑話になります。
暴力とか入れる予定なので、ご注意ください。