第119話 呆気なく解決に進みますね…
何やらテンションがおかしかったのか、コント回になってしまいました…。下ネタ(?)注意ですね。
「だ、誰!?」
驚いて大声を出してしまったため、トートから誰何を受けてしまう。
「あは、あははは…。すみません。」
最初は笑って誤魔化そうとするが、ホルスからの視線がめちゃくちゃ痛かったので、観念して謝る。
「はぁ〜。もう、しょうがないな。ま、トートさんが完全に敵じゃないって判明したんだから、もう良いんじゃないかな?」
ホルスにも前科はあるため、あまり強く責めずに許したようだが、笑いながら言った後、『トートさんへのフォローは?』と視線でトリスに訴えかける。
「そ、そうっすね。じゃ、直接赴きますか!あ、トートさん!ちょっとお部屋にお邪魔しますね!」
そのため大声でトートに向かってそう叫んでから、隣の部屋を出て、トートの部屋にするりと2人して入り込む。
因みにフロレンティーナは、隣の部屋のソファに寝かせてある。
「え?え?ど、どちら様ですか?」
部屋に入ると、見るからに無害そうなゆるふわ系の女性、すなわちトートが目を白黒させていた。
「ちょっと色々とありましてね。フロレンティーナ様経由で貴女の事を知り、色々と調べた結果、貴女も色々と酷い目にあってたみたいなので助けに来ました。」
「え?フロレンティーナ様の状態を知っているのですか!?それに私が暗示する事を引き継いだ事も!」
トートは非常に驚いた表情で、口を手で抑えて叫ぶ。
「引き継ぎ?まぁ、詳しい話は後にして、まずはこっちのホルスが解呪を使いますから、じっとしてて下さい。」
「じゃあ、使いますね。『彼の者を解き放たん 解呪』!」
トートの口からサラッと重要なキーワードが飛び出すが、話している内に強制が発動しても困るので、取り敢えず光属性上級魔法の解呪をホルスに使ってもらう。
するとトートが神々しい光に包まれたかと思うと、次の瞬間にはドス黒い鎖がトートに巻き付くようにして現れ、そしてその鎖がポロポロと崩れ落ちていく。
「う、うそ…。光属性魔法のスキルレベルが、最低8は必要な筈なのに…。」
完全に鎖が消えると、トートは驚きのあまり呆然と呟いている。
「嘘じゃありませんよ。これで貴女は解き放たれた。狭い鳥籠からね。」
情報屋から教わっていた、最近のトートの趣味を絡め、ホルスはウィンクをしながら優しく語りかける。
-あ〜あ。こりゃ完全にやっちまったな。冗談で言ってみたものの、まさか本当に実行するとは。流石はホルスだな。-
情報屋でマスターとトリスで言っていたように、本当に敵である筈のトートを落としたホルスの手腕に、トリスは心の中で賞賛を送る。
「う…。」
トートは震えながら、顔を俯かせて何かを呟いた。
「う?」
「ホルス、抱き締めてやれ。それが正しい行動だろ?」
上手く聞き取れなかったホルスは聞き返すが、間髪入れずにトリスが助言をしてやる。
「え?何で?わ、分かったけどさ…。」
状況が分かっていないホルスであったが、取り敢えずトリスの言う通りにしようと腕を広げる。
と、その瞬間―
「うわぁぁぁん!!よ、ようやく解放出来るよ〜!!」
「ホワイ!?…ぐほぉ!?」
―何とトートが泣き出し、目の前に腕を広げていたホルスに向かって抱き着いてくる。
慌てて勢いを消そうと、叫びながら身を引こうとするが、消しきれずホルスの胸にトートの頭が強く打ち付けられ、ホルスから悲鳴に近い声が漏れる。
「よし、依然問題なし!」
「も、問題大ありだよ!」
トリスの他人事な発言に、ホルスは困り果てた顔で叫ぶ。
「なになに?泣いてる女の子を冷たく突き放すの?え〜、マジないわ〜。」
そんなホルスに、追い討ちをかけるようにトリスがニヤニヤしながら、軽蔑した表情を作って馬鹿にする。
「トリス〜!後でたっぷりと素手のタイマ…じゃなくて、訓練に付き合ってもらうからな〜!!」
そんなトリスに、ホルスは額に青筋を浮かべてお仕置きタイムについて宣言する。
「おぉ〜、怖いっすよ!そんな事よりも、今はホルス君の腕の中に居る子を、慰める方が先じゃない?」
トリスはニヤニヤとした顔を維持しながら、ド正論をぶちかます。
「ぐっ。確かにそうだけどさ…。僕だってトリスと同じように、女の子の扱いは慣れてないんだよぅ。」
するとホルスは、何時になく弱気な発言をする。
「はっ。」
「え!?思いっきり鼻で笑った!?」
本音を述べただけなのに、トリスに鼻で笑われたため、ホルスは目を見開いて驚く。
「ま、兎に角早く慰めてくれよな?でないと、フロレンティーナ様が自由になれないだろ?」
「う、うん。納得はしないけど、分かった。?トリス、どこに行くの?」
トリスの言う事は一応は正しいため、ホルスは頷く。するとトリスが部屋のドアに手をかけたため、ホルスは不思議に思って聞いてみる。
「ん?そんなの、勿論フロレンティーナ様をこっちに運んで来るためだろ?なんならわざと時間をかけて、トートさんと2人っきりの時間を増やしてやろうか?」
「何でさ!?」
「具体的には2時間ほど。」
「長いわ!!てか何で2時間!?」
「え?理由を言えって?やだなぁホルスさんは。そんな卑猥な事、女性の居るところで話せる訳ないじゃないですか〜。」
「卑猥な事!?僕に一体何をさせる気なの!?」
「え?卑猥な事?」
事件も解決に近いという事もあり、気が楽になったため全力のコントをかますトリス。
「ふ、ふふふ…。」
ホルスの腕の中で、小さく笑い声が聞こえる。
「おやおや。そろそろ復活するかな?じゃ、ちょっと行ってくるわ。」
「なるべく早く戻ってきてね。」
新婚夫婦みたいな会話になったため、気恥しさを回避するために、トリスは全力でボケる。
「だが断る!隣の部屋の穴から覗いてるから、安心して本能の赴くままにやっちゃってください。」
「何をさ!?てか安心出来る要素皆無じゃん!」
そんな叫びを背後に、トリスは部屋を後にするのだった。
これから暑い日が続きそうですね。皆さんも、水分、電解質や糖分の補給等を忘れずに、お気をつけください。