第102話 ありふれた学園生活? 5
話の構成の都合上、大分短くなってしまいました…。すみません。
「えぇ、そうですよ。私はこのマルティナの叔母です。彼女の母方の叔母ですね。私の妹がアルムガルト侯爵家に嫁入りしたのです。そのおかげでしがない貧乏男爵家から子爵になりました。」
「へ、へぇ〜、そうなんですか。」
未だに驚きの抜けていないトリスは、呆然と相槌を打ちながらリヒャルダをよく見る。すると確かに痩せればいい線いきそうな顔立ちなので、マルティナと血が繋がっているというのにも納得が出来る。
「まさか母と娘の両者が、この学園で運命の出会いをするとは思いもよりませんでした。」
「運命の出会い!?」
リヒャルダがしみじみとした声音で言った事に、トリスは過剰に反応してしまう。マルティナのスキル『天使の囁き』から考えられる恐るべき事実を思い起こしてしまったからだ。
トリスがマルティナを鑑定してから、スキルの効果を組み合わせて考えてみると、学園で出会う事が『天使の囁き』の効果によるものが大きいと結論を出していたのだ。
「え?急にどうしたの?」
「え、私何かおかしな事言いましたか?」
急に叫んだトリスに驚きながら、ホルスとリヒャルダは聞いてくる。
「…え、あ、いや、別に何でもないっす。運命の出会いだなんて大袈裟だなって思っただけだよ。それと、そもそも俺とマルティナ先生はそんな関係じゃないですよ。」
ホルスとリヒャルダの両者に対して同時に言い訳をしているため、妙に敬語とタメ口の混じった口調になってしまう。
「本当に大丈夫なの?」
「そう、なのですか?なら良いのですが…。」
ホルスからは疑念の、リヒャルダからは心配するような視線を向けられる。
「と、兎に角、リヒャルダ先生!後はよろしくお願いします!ほら!ホルス!早く行かないと授業が先に進んじまうぞ!」
自身が不利だと悟ったトリスは、ジリジリと後退りしながらドアに近付いていくと、パッと身を翻して保健室から退散して行く。
「あ!待ってよ!…リヒャルダ先生、失礼しました。マルティナ先生をお願いします。」
ホルスは慌ててトリスを追いかけようとするが、リヒャルダを無視して出て行くのは流石にまずいと思ったのか一礼してから退出する。
「…あらあら。元気な子達ですね。ティナはトリス君のどういった所が好きになったのか、後でじっくり聞かせて貰いませんとね。」
トリス達が慌ただしく出ていく様を朗らかな笑顔で見送ったリヒャルダは、ベッドで幸せそうな顔をして寝ているマルティナの頭を撫でつつ、そう呟くのだった。