Prologue~始まりのカウントダウン~
初めまして、Scrap Heartと申します。
カーレースものの小説を読んでみたくなり、自分で書いてみることにしました。
まだまだ拙い文章ですが、楽しんで頂ければ思います。
それでは短いですが、物語の始まりです。
西暦20XX年、あらゆる乗り物に自動運転技術が採用され人間が操縦することがなくなってしまった世界。
カーレースにおいてもレーサの代わりにAIが搭載され各チームが制御技術を競う場へと変化していた。
しかし、自動運転が主流になってしまったといっても特殊な状況下を措定しなければならないレースシーンにおいて大元となるデータは貴重な物である。
そのデータを収集するための実験場として1つの島が設置された。
その島では昔と同様に人間が自動車を操り、時にAIを超えたパフォーマンスを発揮して見せるドライバーが多く育成されているという。
各国の干渉を受けながらも独自の文化を発達させ、遂には干渉を跳ね返せるまでにまで成長を遂げた。
特に、島内を取り仕切る権限を持つレーサーたちを頂点とした社会系を作り、あらゆることをレースの結果において決定する特異な文化が形成された。
その島はレーサーたちの楽園『Racer's ISLAND』と呼ばれている。
島内に張り巡らされたコースの一角において今日も快活な喧噪と共に、エンジンに火が入りマシンが咆哮をあげる。
毎日行われているクラス別レースの準備だ。
コース上に設置された簡易ゲートの前に2台のマシンが並べられ、今か今とレースの開始合図を待ち切れないとばかりに空吹かしを行っている。
空吹かしの度に周囲を吹き飛ばさんばかりの爆音が周囲に鳴り響く。
しかし、周囲のギャラリーたちにとっては馴れたものだ。
そんなことには気にも留めずレース結果を好き勝手に予想していた。
そのギャラリーたちの中に今日初めて島を訪れ、周囲の喧騒に圧倒されながらも目を輝かせる1人の青年の姿があった。
本土から島に訪れる者はそう珍しくはない。
そのため、周囲も初々しい反応を見せる見かけたことのない顔を見ても特に反応を見せない。
だが、移住する者といえば話が変わってくる。
それは島内における事故件数と死亡者数によるものだ。
毎日島内のいたるところでレースが開催されている。
通常の街中を流す程度の走行であれば何とかなるような場合であろうとも、レースとなればそうはいかない。
レース中の平均速度は一般的に初心者級と呼ばれるBeginner・Classにおいてでも優に100km/hを超える。
Lanker・Classにおいては250km/hを超えることもザラにある。
そのため、些細なミスで命を落とす者が後を絶たない。
しかし、レースを勝ち進めていくことで得られる名声と富を求めて多くのレーサーが己の命を担保にレースへ参加する。
この青年もレースに惹かれて島へとやってきたレーサー(候補)なのだ。
簡易ゲートに設けられたシグナルが赤から青へと変わっていくと共に独特の音色が流れ、それに気付いたギャラリーたちの喧騒が静まり、固唾を呑んでレースの開始を待つ。
カウントダウンが終わった。
青年の目の前でゲートが開かれ、2台のマシンがコース上へと飛び出していく、今まさにレースが始まったのだ。