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女神さまによる次回予告

 はあ~い、ここから一人称交代、愛と転生の女神ことわたくしアズイールがお届けしちゃいまぁっす!

 さて、こうして勇者は失恋の涙に濡れて城壁の外へと逃げ出したのだが、実はこの会話には続きがあるのだ。

 ヤシは、いつもならば自分のいうことを二つ返事で受け入れる姉が、これほど強情に言い訳を続けることに焦れて声を荒げた。

「なんでそんなにかたくななんだよ! まさか、あいつに本気で惚れちゃったわけ?」

 途端にデンスは恥ずかしそうに身をよじり、ほほをかすかに赤く染める。

「いや、惚れちゃったとか、そういうんじゃないんデンスよ。ただちょっと、思いのほかこのみのタイプだったっていうか、性癖ドストライクだったっていうか……デンス」

「なんで? あんな口悪い男が好みなわけ?」

「口が悪いのはあんたで慣れてるデンスよ。だから、口が悪いだけで、ホントは優しい人なんだなって思ったデンス」

「だけどあいつ、姉ちゃんのこと『ヒロイン候補』って言ったじゃん、ほかにいい女がいたら姉ちゃんを捨てる宣言だろ。そんな男のどこが優しいんだよ!」

「それでも……ダーリンは優しいデンス」

「そんなことしてると、今度こそ本当に婚期逃すぞ」

「それでもかまわないデンス。ダーリンが他の女の子にきちんと心から恋をして、きっぱりと私を振るまで、それまでの間でいいデンスから、好きにさせてほしいデンス」

「ん~、姉ちゃんさあ……」

 ヤシは眉間を押さえて深いため息をついた。

「俺は、ここまで俺を育ててくれた姉ちゃんには感謝しているし、その分、世界一幸せになって欲しいと思ってるの、わかる?」

「世界一は欲張りすぎデンスよ」

「そういう茶々入れるんじゃねえよ」

「すみませんデンス」

「正直な話、王女直属の参謀なんかしている俺の給料って、けっこういいんだわ。具体的には、行き遅れた姉を生涯養ってもおつりがくるぐらい?」

 眉間を放したヤシの表情は、少しだけ柔らかく微笑んでいた。

「だから、姉ちゃんの好きにすればいいんじゃねえの」

「ヤシ……」

「その代わり、俺、あいつ嫌いだから。姉ちゃんがちょっとでも不幸になる兆しが見えたら、全力であいつ、つぶすから!」

「わ、わかったデンス、が、頑張るデンス」

「んじゃ、ま、そういうことで」

 姉に背を向けて歩きだしながら、ヤシは自分がひどく寂しがっていることに驚いていた。

 ヤシの父親は、彼が生まれて間もなく、海の仕事で行方不明になった。その後、女手一つで家を支えていた母も病に倒れ、デンスはやっと重大に上がったばかりだったというのに、実力だけで雇用が決まる海軍への入隊を決めたのである。

 ヤシが勉学に打ち込むための学費も、病弱な母を療養させるための治療費も、すべてデンスが己の武勇の腕だけで稼ぎ出したものなのである。

 結局はそれが姉の結婚を遠のかせる原因となっていたことを、ヤシは良く心得ている。だからこそ姉には幸せになって欲しいと、これを心の底から願っているのである。

「……初恋か」

 振り向けば、楚々としたハマボウフウの花の中に立つ彼女は、今までに見たこともないほど晴れやかで優しい……女の顔をしている。

「ま、いっか。俺が守ってやればいいんだし」

 姉をババア呼ばわりした失礼極まりない若造勇者を程よく遠ざけ、姉に幸せな初恋の思い出だけが残るようにしてやろうと、彼は固く心に誓ったのであった。


 んっはー、ということで、すれ違う心と心!

 二人の恋の行方はどうなっちゃうの~?

 次回は、いよいよカニ料理のお店を立てる計画を立ち上げる勇者、しかし、ここが魚介類を食べない世界であるがゆえに問題はてんこ盛りだった。

 まずは立地問題でしょ、あと、仕入れルートの確保でしょ、店舗として成立させるための店長やオープニングスタッフとかの人員の確保に、衛生問題に……そこに迫りくる反対派住人、はたして『カニ道楽』一号店は無事に開店することができるのか?


 異世界カニ道楽2

 ~チューボーデンス・アラサーの恋は星三つ?~


 ご期待くださいよっ!


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