対龍人戦
戦闘表現下手なのですいません
カイトは鼻歌交じりに雷狼の群れを殺していた。今は新たな魔物を探して、島を探索していた。島を探索して何体も魔物と戦ったが、全て一撃も喰らうことなく屠っていった。ロック鳥のような巨大な鳥や群れで襲ってくる賢い猿、全長八メートル程の大蛇、木があろうともお構いなしに突っ込んでくるイノシシのような魔物。だが、どれも灰熊には及ばない。
「早くこの島から抜け出して、日本に帰りたい。普通のご飯食いたいなぁ」
カイトの魔力なら人族領に移動することもできるが、なぜかできなかった。何かに阻まれているようだ。
森を探索して一週間経つ今日も森を歩き、索敵範囲内に入った魔物を魔法で撃つ。
歩き続けて、不自然な場所にたどり着いた。木が規則的に配置され、道のようになっている。歩いてすぐの場所に神殿の入り口のような建造物があった。柱には苔が生え、ところどころ欠けていた。見ただけで相当前のものだとわかる。
「行くしかないか」
ため息交じりに言うカイト。だが、カイトはなんとなく予感がしていた。この島を出る手掛かりがあると。
神殿の中を進む。足音が反響して幾重にも重なって聞こえる。まるで何人も歩いているようだ。カイトは先の見えない通路に苛つきながらも歩く。そして、ようやく階段を見つけた。先の見えない螺旋階段を。
何も言わず、一段一段下っていく。どれぐらい進んでいるのか分からないという苛つきを抑えながら下っていくが遂に我慢できなくなり、手すりを飛び越え、暗闇に飛び込んだ。
ズドンと地を揺らすような音を立てながら地面を踏みしめたカイトは自分が今いる場所を確認した。
そこは半径百メートルほどのドーム型。カイトが出てきた場所と反対側にもう一つ通路がある。壁や床には修復したような後が数え切れないほどあった。壁には壁画があり、そこに描かれているのは竜人同士の戦いだった。竜人は遥か昔に滅んだ種族。
「さっきからこっちを見てるのは誰だ」
壁画から目を離さず、誰に向けてか分からない声を上げた。
「気付いていたか。伊達にここまで来れてないな」
通路から姿を現したのは壁画と同じ龍人だった。左目に眼帯を付けている黒髪金眼の三十代程の男性だった。瞳孔は爬虫類を彷彿とさせる縦長で着物姿に下駄を履き、快活に笑っている。
「あんたは竜人か?」
「あぁそうだ。龍人族の生き残りの一人、トウヤ・アルミタイトだ。君は?」
「俺はカイト・シノハラだ。色々あってここに居る」
「そうか。深くは詮索しない」
「それはどうも。ところで何のようだ」
「俺と」
そこまでいうとスラリと刀を抜いた。その目を見たカイトには次に言う言葉を想像するのは安易だった。
「戦ってくれないか」
あの目は、灰熊と戦ったときにカイトがした本気で挑む者のそれだ。ならば、答える言葉は一つ。
「受けて立ってやる」
その一言にトウヤは獰猛な笑みを浮かべた。互いにドームの中央に歩みを進める。カイトとトウヤの間が二十メートル辺りで足を止めた。
トウヤは刀を正面に構えた。カイトは居合いの構えだ。
「シッ」「フッ」
二人の姿が消えると同時に中央で金属のぶつかり合う響いたギリギリと刀を押し返そうと力を入れる。力はカイトに軍配が上がった。
「ハッ」
刀を弾くと、空いた胴目掛けて横に振る。だが、剣が当たることなく空を切る。
トウヤは一旦後ろに下がり距離を取る。カイトは再度剣を構える。
先に動いたのはトウヤだった。力強く踏み込みカイトを刀の間合いに入れる。トウヤの流麗な動きから繰り出される刀技。刀が幾重にも分裂して見える。カイトはトウヤの攻撃をいなし、受け流し、弾く。それでも全てを防ぎきることができず、皮膚を浅く斬られ、鮮血が飛び散る。
全体的なステータスはカイトの方が高いが、トウヤはそれを覆す技量を持つ。
カイトは移動して距離をとると指輪からもう一本剣を取り出した。剣技の一つ、二刀流だ。
再び剣が交じり合う。カイトはトウヤの刀を右の剣に角度を付けて流し、先程とは違い、踏み込んで突く。トウヤは半身になって躱すと斬り上げる。それを右の剣で受け止め、蹴りを放つ。トウヤは腕で受け、衝撃を利用して後ろに跳ぶ。
その距離をカイトは一足で詰める。助走を付けた右の剣を振り下ろす。それをまた半身で躱すと剣を思いっ切り踏んだ。その行動に驚きながら左の剣を横凪に一閃するが刀に止められ、膝蹴りを放つ。
右の剣を離し、左に避け、腿に右ストレートを放つがバク転で躱され、刀で浅く斬られた。曲芸のような動きだ。
「さすがに強いな」
「君もこの島を生き抜いてきただけはある」
「そろそろ本気で行かせて貰う」
「ならば俺も本気を出そう」
カイトは剣に雷を纏わせ、足に魔力を込める。そして、移動で距離をとる。
トウヤからは魔力が溢れ、体を包むように纏った。そして、腕、足、首に黒い竜鱗が浮かびあがる。そして、目についている眼帯を引き千切った。露わになったのは鈍く光る銀色の眼だった。
カイトは小さな雷球を幾つも作り出し、発射する。回転を加え、威力を上げたそれはまさに銃弾だ。
発砲された雷の弾丸は全八発。トウヤを食い破らんと向かっていく秒速150キロメートルの雷弾。だが、トウヤはまるで来るところが分かっているかのように避ける。それでも避けきれない雷弾は切り裂く。切り裂かれ、魔力へと還元されたそれを見て、カイトは小さく、あり得ないと呟く。
全部捌ききると、足に力を入れ踏み込む。地面が爆ぜ、トウヤの体がぶれる。その場から急いで移動した。
カイトが移動し、ついさっき自分がいた場所を見ると刀を振り切った状態のトウヤがいた。そこは丁度首の位置だった。ゾッとして首元を触るとヌルリと血が出ていた。高速再生で治るといっても背中に悪寒が走る。
カイトは大きく深呼吸すると雷を纏う。灰熊の時より数段強力な青白い雷だ。だが、体への負担もまた数段上だ。
地面を蹴り、カイトから仕掛ける。トウヤは正眼の構えをとる。
カイトが右の剣を袈裟に振るう。が、トウヤは分かっていたかのように体を傾けると首に刺突する。
「グッ」とくぐもった声を漏らしながら首をひねる。トウヤは突き出した刀を手首を回転させ、刃をカイトの首に向け、横に凪ぐ。左の剣で刀を受けるとそのまま横に移動して距離をとる。
「その左目には何が見えている」
雷弾を避けた時も袈裟切りをした時も来る場所を予知していたように動いていた。原因はどう考えても左目しかない。
「動きを予見できる。魔力の消費が尋常じゃないがな」
厄介この上ない能力だ。
これ以上語ることはないとトウヤは刀を正眼に構える。カイトは半身に、右の剣を下段に、左の剣は鞘に戻す。
カイトは強く踏み込み突きを放つ。しかし予測していたのか刀で剣の腹を弾き、軌道を変えるとそのまま斬り掛かる。
ガキンと硬質な音が響いた。トウヤの刀がカイトの肩口のほんの少し手前で止まっていた。否、止められていた。カイトが指輪から取り出した短剣によって。空中に固定された短剣は刀を弾く。そこに致命的な隙が生まれた。
「ハァァァア!」
裂帛の気合と共に鞘から抜き放つのは神速の斬撃。剣技の一つ、居合いだ。これは抜刀速度に1.5倍の補正がかかる。さらに最初の一撃には攻撃力に1.2倍の補正がかかる。
剣はトウヤの胸を抉るように振り抜かれた。トウヤはその場から大きく飛び退く。トウヤは見るからに重傷で口から血を吐き、胸の傷からもダラダラと血が吹き出る。
「カイト、君は俺より強い。だが、このまま負けてしまうのは龍人族の名折れ。責めて最期に一太刀入れされてもらう。可愛くない悪足掻き、つきあって貰うぞ」
苦痛に顔を歪めながらも刀を構えーーーずに手を前に出す。その手に急速に魔力が集まる。
今からトウヤが使う魔法をカイトは知識として知っていた。龍が持つと言われる龍魔法。主にブレスを吐き出す魔法で、人の形を取ると手からも出せる。
トウヤは集めた魔力の収束を始める。下手に攻撃すると魔力が暴走する可能性があるためカイトはその場から離れるしかなかった。
そして、トウヤは魔法を完成させた。収束した魔力を解き放つように腕が水平に振るわれた。
「黒龍炎」
小さく、だが確かに聞こえた声。その声を轟とかき消すように放たれた黒い炎。全方位に放たれた黒炎に逃げ場はない。
「固定」
そう呟くと今まで燃えさかっていた炎が嘘のようにピタリと止まった。だが、熱は持っているため暑い。汗が滴り落ち、カイトの左目の視界を遮る。
「ゼァァァァア!」
それは偶然か、視界が遮られたその一瞬にカイトの左から刀を構えたトウヤが現れた。体中を炎に焼かれボロボロになりながら振るわれたその刀はカイトに届いた。
カイトは咄嗟に一歩後ろに下がったが躱しきれず、額から頬まで斬られてしまった。
「最期に一太刀入れてやったぜ」
それだけ言い残すと糸が切れたようにその場に倒れた。トウヤが倒れると周囲の黒炎も魔力へと戻る。無数の黒い魔力は天井に上り消える。その光景は幻想的だった。
「あぁ、そうだな」
それだけ言うとカイトはトウヤに手を当て、ステータスを奪う。そして、トウヤから刀を借りると首を撥ねた。
「安らかに眠れ、トウヤ・アルミタイト」
それだけ言うと限界が来たのかその場に倒れた。纏っていた雷が一気に霧散して、度重なる筋肉の酷使に身体が悲鳴を上げてるのを感じた。意識は強制的に遮断された。