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魔物狩り

カイトは先程と同じように手に雷を出した。バリバリと不定形にスパークを起こす。それを球の形にしようと意識を集中させる。すると、雷が一カ所に集中しだした。だが、できたのは完璧な球には程遠いラグビーボールのような形になった。


「まぁいいか。とりあえず」


右手を木に向ける。イメージは手を大砲に、雷球を砲弾に見立て、発射する。雷球は爆音を響かせながら木々を薙ぎ倒し、森の彼方へ消えていった。焦げくさい臭いが辺りに充満し、カイトがその威力に舌を巻いた。





「これで戦略の幅が広がるな」


カイトの周りには穴が空いた木や燃え尽きて黒焦げになった草、地面にポカリと空いたクレーター。辺りにはさっきとは比べようもない程に焦げ臭さに包まれていた。


いつの間にか暗くなり、木と木の間は完全に闇に染まっていた。


洞穴に移動しようとしたとき、猛スピードで近付いてくる魔物の気配を感じた。雷狼から奪ったスキルの一つ、気配感知により大型の魔物だということが分かる。指輪から片手剣を取り出し、魔物が出てくるであろう場所に剣を構える。


やがて、木々の隙間から現れたのは体長三メートルはあろうかというほどの黒い体毛の虎だった。黒虎はニタリと笑うと闇に溶け込むように姿を消した。


猛烈に嫌な予感がしたカイトは即座にその場を飛び退くのと黒虎が姿を現し、その鋭い爪を振るうのは同時だった。カイトは背中を浅く切り裂かれていた。


カイトの背中を切り裂くとまた姿を消す。気配感知を使っても分からない。極めて高い隠密性を持つ最悪の暗殺者だ。


カイトは左手に小さな雷球をいくつか作り出すと全く別の場所にそれぞれ打つ。黒虎は警戒してか掛かってこない。カイトは放った雷球を空中に固定した。


雷球の光で今まで身を潜めていた黒虎が姿を現す。急な明るさに怯んだのか、一瞬隙ができた。その隙を逃すはずがなくカイトが右手を突き出す。右手から大きな稲妻が射出された。その不可避の雷光は狙いを違わず黒虎に当たった。


カイトが黒虎に近付くと弱々しく、だがまだ呼吸をしていた。カイトは黒虎に手を当てるとステータスを自分に移動させる。さっさとステータスを奪うとステータスを見た。しっかりスキル欄に気配遮断Lv5の文字が追加されていた。黒虎の高い隠密能力を獲得できたことに感謝しながらトドメを刺した。


カイトは移動を使い、洞穴へと移動した。本を読む程の体力はなく、そのまま横になった。


今日も今日とて森の探索をしているカイト。気配感知を使い、獲物を探す。しばらく歩いていると二体の赤毛鹿の反応を確認できた。


気配遮断を使い、赤毛鹿を視認できる範囲まで近付くと両手に雷球を生み出し、それを打ち出す。打ち出された二つの雷球は胴体に風穴を開けた。


瀕死の赤毛鹿に触れ、ステータスを奪い、殺す。もう一体の赤毛鹿に触れ、ステータスを奪う。しかし、それは叶わなかった。ステータスを奪えなかった。いや、スキルを奪えたから不発ではない。カイトは一つの答えに行き着いた。


「チッ、そういうことか。まぁ確かにこんな能力制限なしに使えるはずないか」


カイトは少し悔しそうに、だが納得したようだ。ステータスを移動できるのは同じ魔物なら一回だけ。スキルは移動可能。


カイトは赤毛鹿を殺すと新たな獲物を求めて、森を駆ける。そして、一つの反応を感知した。黒虎より大きい魔物だ。


カイトが気配を遮断して近付くと、そこにいたのは灰色の熊だった。灰熊を中心に三十メートルの円状に木が一切生えていなかった。灰熊は佇んだまま一切動かない。ただ、その場に立っているだけなのに妙な威圧感がある。


カイトは片手剣に雷魔法を付与し、灰熊の背後に移動した。視界が変わって最初に映ったのは灰熊の顔だった。それと同時に本能がけたたましく警報を上げる。カイトは灰熊の後方へと移動した。


「ッ!?」


ついさっきまで自分がいた場所の後ろにあった木が扇状に切り倒されていた。それも一本だけではなく、十本以上だ。


灰熊はカイトに向き直ると、その巨体からは想像できない速度で距離を詰めた。カイトは灰熊の後方にもう一度移動を使い、がら空きになった背中に本気の雷球を放った。


「グァ」


灰熊が雷球を手で弾き飛ばした。弾き飛ばした部分の体毛が僅かに焦げただけだった。


「グルァァァァァア」


灰熊が咆哮を上げる。大気を揺るがす咆哮は、木々を揺らし、木の葉を散らす。物理的衝撃を持つ咆哮に足に力を入れ踏ん張ろうとするが抵抗を許さず、木に背中を強かに打ち付けた。


「ガハッ」


肺の中の空気を強制的に吐き出される。一瞬、気を失いそうになりながらも自身に雷魔法を使い、意識を繋ぎ止める。失われた空気を取り戻すように必死に呼吸を繰り返すカイト。灰熊は重厚な足音を響かせながら一歩一歩近付いてくる。


クソが。声に出せない悪態をつきながら剣を構える。剣の先には大きく息を吸う灰熊の姿があった。考えるより先にその場から飛び退いていた。


解き放たれるは灰色の息吹。吹雪のように吹き荒れるそれはカイトが先程までいた場所を飲み込んだ。灰熊のブレスが止むと姿を見せたのは、石化した木や地面だった。石化した木はピキリと音がしたと思うと粉々になっていった。


この光景にカイトは乾いた笑いしか出なかった。


「ハハッ、ふざけてるな」


カイトは息を大きく吸い込むと目を開けた。


「ハァァァア!」


カイトが雄叫びを上げると同時、莫大な魔力が解放される。解放された魔力は雷となり、カイトの身体に纏わり付く。これは筋肉に負荷がかかるため使いたくなかったカイトだが、これを使わないと灰熊に勝てないと思い覚悟を決めた。


「ハッ」


灰熊の懐に飛び込むと下から切り上げる。灰熊は後ろに下がるが、それを予測していたカイトは身体に纏う雷の一部を飛ばす。細分化された稲妻を躱すことができず、感電した。灰熊の体が硬直した一瞬で大剣を取り出し、突き刺す。カイトは突き刺した勢いそのまま灰熊が後ろの木に縫いつける。


「固定ッ!」


大剣と木の両方を固定した。灰熊は暴れ、抜け出そうとする。このままだと後十数秒で大剣が限界を超えるだろう。しかし、それだけあれば十分だ。


カイトは灰熊に触り、ステータスを自分に移動させる。力が流れ込んでくるのを感じながら、灰熊のステータスを限界まで奪い尽くした。


ステータスを奪われた灰熊の抵抗は徐々に弱々しくなり、動かなくなった。


灰熊の命が消えたのを確認すると、身体に纏っていた雷の魔力が霧散した。カイトはドサリと座り込む。体中を巡る鈍痛に顔を歪めながらも気配感知を発動する。周りに魔物がいないのを確認するとその場に大の字に転がった。上に見えるのは、青く澄んでいる空だけだった。


どのくらいその状態でいたのか分からない。体の痛みが和らいできた頃、ステータスを見てみた。



カイト シノハラ 17歳 男

Lv188

HP 10200/10200

MP 9920/9920

攻撃力 12800

防御力 10800

敏捷力 13000

スキル

固定Lv5 移動Lv5 剣術Lv4【居合い】爪術Lv5【滅爪】 高速思考Lv4 並列思考Lv4 雷魔法Lv5 石化魔法Lv5 風魔法Lv1 隠密Lv5 気配感知Lv5 気配遮断Lv5 連携 高速再生 言語理解


固定Lv5

Lv4‥‥固定したものを動かせる。但し、動かしている時は常に魔力を消費。

Lv5‥‥半径五十メートル内にあらゆるものを固定できる。生物を固定することもできるが、レベルに差があると固定できる時間が短縮する。


剣術Lv4

Lv2‥‥攻撃力に1.2倍の補正がかかる。

Lv3‥‥攻撃力に1.3倍の補正がかかる。

Lv4‥‥攻撃力に1.4倍の補正がかかる。


居合い

抜刀速度に敏捷カの1.5倍の補正がかかる。

抜刀してから最初の一撃に攻撃力1.5倍の補正がかかる。


爪術Lv5

基本効果……爪の扱いに補正がかかる。

     爪技の習得に補正がかかる。

Lv1‥‥攻撃力に1.1倍の補正がかかる。

Lv2‥‥攻撃力に1.2倍の補正がかかる。

Lv3‥‥攻撃力に1.3倍の補正がかかる。

Lv4‥‥攻撃力に1.4倍の補正がかかる。

Lv5‥‥攻撃力に1.5倍の補正がかかる。


滅爪

込めた魔力を一気に解き放つことで範囲を攻撃できる。


高速思考Lv4

Lv2‥‥一秒でニ十秒分の思考ができる。

Lv3‥‥一秒で三十秒分の思考ができる。

Lv4‥‥一秒で四十秒分の思考ができる。


並列思考Lv4

基本効果……二つの思考をできる。

Lv1‥‥三つの思考をできる。

Lv2‥‥四つの思考をできる。

Lv3‥‥五つの思考をできる。

Lv4‥‥六つの思考をできる。


雷魔法Lv5

基本効果……魔力を使い、雷を操れる。魔物固有魔法。

Lv1‥‥初級魔法使用可能。

Lv2‥‥中級魔法使用可能。威力上昇。

Lv3‥‥上級魔法使用可能。威力上昇

Lv4‥‥超級魔法使用可能。詠唱省略可能。

Lv5‥‥無詠唱使用可能。


石化魔法Lv5

基本効果……魔力を使い、石化を操れる。魔物固有魔法。

Lv1‥‥初級魔法使用可能。

Lv2‥‥中級魔法使用可能。威力上昇。

Lv3‥‥上級魔法使用可能。威力上昇

Lv4‥‥超級魔法使用可能。詠唱省略可能。

Lv5‥‥無詠唱使用可能。


風魔法Lv1

基本効果……魔力を使い、風を操れる。魔物固有魔法。

Lv1‥‥初級魔法使用可能。


隠密Lv5

Lv3‥‥奇襲時、ステータス1.3倍の補正がかかる。

Lv4‥‥奇襲時、ステータス1.4倍の補正がかかる。罠を感知できる。

Lv5‥‥奇襲時、ステータス1.5倍の補正がかかる。痕跡を消せる。


気配感知Lv5

基本効果……半径三十メートル内の気配を感知できる。

Lv1‥‥半径五十メートル内の気配を感知できる。索敵範囲内の生物の形をおおまかに把握できる。

Lv2‥‥半径八十メートル内の気配を感知できる。索敵範囲内で特定の生物の形を正確に把握できる。

Lv3‥‥半径百メートル内の気配を感知できる。

索敵範囲内の地形をおおまかに把握できる。

Lv4‥‥半径百五十メートル内の気配を感知できる。索敵範囲内の地形を正確に把握できる。

Lv5‥‥半径二百メートル内の気配を感知できる。索敵範囲内なら対象の場所を把握できる。


気配遮断Lv5

基本効果……気配を消せる。

Lv1‥‥動かない場合、気配の遮断に補正がかかる。

Lv2‥‥動いている時でも気配を遮断できる。但し、激しい動きには効果がない。

Lv3‥‥地形を利用した場合、気配の遮断に補正がかかる。

Lv4‥‥特定の相手に気配を消せる。

Lv5‥‥気配を完全に消せる。


連携

共闘すると許可した場合、声に出さずに会話できる。


高速再生

傷の治りを早める。老化も遅くなる。




高速再生のお陰か痛みが完全に消え、立ち上がる。ぐるるるとカイトの腹の音が響く。灰熊を指輪に入れると、洞穴前の砂場に戻った。


雷魔法で火を起こすといつも通り肉を焼く。この肉は赤毛鹿のだ。焼けたのを確認して、雷狼より上手いことを願いながら食う。何度か咀嚼して飲み込む。不味くはないが上手くもない。カイトは微妙な表情で残りの肉も胃袋に収めた。


洞穴に戻ると今日も同じように早々に横になった。唯一違うのは、下に灰熊の毛皮がしかれているぐらいだ。灰熊の毛並みを堪能しながら眠りについた。

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