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災厄の孤島

カイトが大の字の状態で見えたのは、辺りに鬱蒼と生えている木だった。


「ここどこだ?」


もちろん返ってくる答えなどない。立ち上がり、辺りを見回しても何もない。


「とりあえず寝床でも探すか」


直感に従い、歩き出した。歩けども歩けども景色は変わらない。最早、進んでいるかどうかも分からない。だが、移動スキルのお陰か歩くのがそこまで苦にも感じず、ただ黙々と歩く。しばらくすると、木々の間から光が見えた。その光に向けて走りだした。


そして、カイトが見たのは海だった。眼前には日本などとは比べようもないほどきれいなビーチが広がっていた。海に沿って歩いていると岩山があった。小さい洞穴も。


洞穴をのぞき込んでみるも暗くてよく見えなかった。近くにある小石を投げてみても、カツーンカツーンという音が返ってくるだけ。


「入るしかないか」


身をかがめて中に入ってみると緩い上り坂になっていた。中はそこまで低くもなく普通に歩くことが出来た。中は光が届かないため壁伝いで端まで歩いてみると全長五、六メートルということが分かった。


「寝床はここで良いか」


腰を下ろすとゴツゴツした感触が伝わってくる。


それを無視して、ポケットに手を突っ込み、指輪を取り出した。それを指にはめてみると頭に中に入っている物のリストが浮かんだ。その中の一つにある物を見つけたカイトは手元に取り出した。


取り出した物は杖のようなものだ。杖の先端には赤い宝石が付いていた。それに魔力を流してみると赤い宝石が淡く光った。それを地面に突き刺し、固定した。


「光があると落ち着くな」


そう言って、また指輪に入っている道具を調べ始めた。中には、衣服、武器、本が入っていた。


カイトは本を一冊取り出した。それはこの世界の地図が載っている本だ。人工衛星がないから完璧な地図ではないが今のカイトからしたら大助かりだ。


本を開きページをパラパラ捲っていると、とあるページに目が止まった。


そこには、未開拓領域、災厄の孤島と書かれていた。その島に関する情報を読み進めていくと、どうやら本当に地獄よりも辛いようだった。生息している魔物は最低でもAランク、最高でSSSランク。


モンスターの等級は以下のようになっている。


SSS 全ステータス平均7000

SS 全ステータス平均5000

S 全ステータス平均3000

A 全ステータス平均1000

B 全ステータス平均800

C 全ステータス平均600

D 全ステータス平均400

E 全ステータス平均200

F 全ステータス平均100


ここまで読んでカイトは本を閉じた。


「ここからでるのは絶望的か」


独りごちりながら、その場に寝転んだ。背中の感触は気にせずに目を閉じて、今度こそ意識を手放した。



目を開けても映るのは岩肌だけ。いっその事、全て夢の出来事であれば良かったと思いつつも重たい体を起き上がらせた。


「水と食料をどうしようかな」


指輪の中には入っていなかった二つ。ルミネもまさかこんなに早くダッグが行動に移すとは思わなかったからだろう。


「魔物を狩らなきゃいけないのか?俺の最低ステータスでか」


深いため息一つ、洞穴の入り口へと向かった。


太陽の眩しさに顔をしかめながら歩き出した。目標として川を探すことにしたカイトは森の中に入っていった。


草木をかき分けながら進んでいくとちょろちょろと水が流れる音がした。少しペースを上げて走ると小川があった。


しかし、先客がいた。脚が異様に発達している赤い体毛と二つの長く鋭い角を持つ鹿だった。


「「「グルルルル」」」


赤毛鹿の周囲の茂みが音を立てたかと思うと、三匹の狼が鹿を囲むように現れた。どの狼も遠目からでも分かるように体表がスパークを起こしていた。


赤毛鹿の背後にいた雷狼が跳びかかった。しかし、赤毛鹿は後ろを見ずに脚を突き出した。空中ではその脚を躱せるはずもなく、蹴りが当たった頭部が爆砕された。前にいた二匹の雷狼が後ろ脚が地面に付く前にそれぞれ前脚に鋭い爪を繰り出すが、赤毛鹿の尋常じゃない脚力が体を浮かした。爪を躱され、バランスを崩した雷狼の頭をトマトを潰すかのごとく踏みつぶし、辺りに鮮血が飛び散った。


赤毛鹿が最初に殺した雷狼に顔を近づけるとその肉を喰らった。異世界では肉食のようだ。


カイトは水を諦め引き返そうとしたが、後ろから甲高いサイレンのような鳴き声が聞こえた。それと同時、地面を揺るがすような振動が伝わった。


カイトは後ろを振り返ることもせずに走りだした。木々の間を縫うように走り抜け、洞穴のある岩山を目指した。移動スキルがあってもカイトの敏捷力ではすぐに追いつかれてしまう。しかし、まだ追いつかれないのは赤毛鹿がカイトを弄んでいるからだ。


カイトもその考えが伝わっているのか、内心助かっていると思ってしまう自分を情けなく思いながらも死に物狂いで走り始めた。


そして岩山に差し掛かったとき、赤毛鹿が本気を出した。今まで二、三十メートル空いていた距離を一足で進み、確実にトドメを刺すために雷狼と同じように後ろ脚で蹴りを放ってきた。


赤毛鹿の蹴りの間合いからはどうあがいても出られないと思ったカイトは向き直り、指輪の中から大剣を取り出して地面に突き刺し固定した。そして、後ろに跳んだ。


ほぼ同じタイミングで赤毛鹿の蹴りが放たれた。蹴りは剣をへし折り、カイトの腹部に吸い込まれるように入った。そのまま吹き飛ばされたカイトは岩山の奥へ消えていった。残ったのは、へし折られた大剣とドボンという音だった。



肩で息をしながら浜辺に転がりこんだカイト。口の端に血を垂らしながらも口角を吊り上げた。


「よく生きれたな、俺」


感慨深げに呟いた。一か八かの大博打だった。洞穴まで逃げ切れても後々殺されるかもしれない。ならば殺したと思わせればいいと作戦を立て、決行した。


重い体に鞭打って洞穴に入った。五、六メートルをやけに長く感じながら、ようやく奥にたどり着いき、地面に突き刺さっている杖に魔力を流した。 


腰を下ろして、ステータスを確認してみた。


カイト シノハラ 17歳 男

Lv1

HP 9/20

MP 20/20

攻撃力 30

防御力 30

敏捷力 30

スキル

固定Lv2 移動Lv5 高速思考Lv1 隠密Lv0 言語理解


固定Lv2

基本効果……触ったものをその場に固定する。

Lv1‥‥半径十メートル内にある物質を固定できる。但し、手で触れるより効果が薄い

Lv2‥‥半径二十メートル内にある物質・非物質を固定できる。


移動Lv5

基本効果……移動が速くなる。

Lv1‥‥地形に関係なくいつも通り移動できる。

Lv2‥‥足に魔力を込めると、込めた魔力量に比例して移動速度があがる。

Lv3‥‥足に魔力を込めると、込めた魔力量に応じて目視した場所に移動できる。

Lv4‥‥一度行った場所に移動できる。遠ければ遠い程魔力を消費する。

Lv5‥‥触れているものを移動できる。


高速思考Lv1

基本効果……思考速度の上昇

Lv1‥‥一秒で十秒分の思考ができる。


隠密Lv0

基本効果……気配を隠蔽できる。


「スキルレベルの上昇がすさまじいな。それだけ壁を超えたってことか」


そこで移動スキルの効果に目を落とした。Lv4の一度行った場所への移動。この島から脱出できる算段がつき、ガッツポーズをした。


そして、もう一つ気になるのがLv5の触れている物を移動できる、だ。


カイトが近くにあった小石を掴むと移動させるイメージを固め念じてみた。すると、カイトの手の中から石が消え、目線の先に小石が移動した。


「次は・・・」


今度は自分自身に手を当てて、目を閉じて集中する。ステータスの値を振り分けるイメージ。


しばらくしてステータスを確認すると


カイト シノハラ 17歳 男

Lv1

HP 9/20

MP 20/20

攻撃力 10

防御力 10

敏捷力 70

スキル

固定Lv2 移動Lv5 高速思考Lv1 隠密Lv0 言語理解


敏捷力が上がり、その分攻撃力と防御力が下がった。HPとMP、スキルレベルは変更できなかった。これが出来るということは相手からもステータスを奪うことが出来る。


その後、細胞を赤毛鹿の蹴りを受けた部分に集中的に移動して傷を治し、再び外へ出かけた。

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