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成田勝太は小説家になりたい

作者: QB

 成田勝太(なりたしょうた)は、どこにでもいそうな高校生だ。好きな科目は地理で、嫌いな科目は英語と数学と物理と美術と音楽。両親は共働きで家にあまり帰らない……なんてこともなく、普通に主婦と公務員だ。実は血の繋がりがない妹はもちろん、可愛い幼馴染みだとかがいたりするわけでもない。変わったところと言えば人並み以上に中学時代は二次元に憧れていたくらいか。

 どれくらい憧れていたかと言えば、いつ空から女の子が降って来てもいいように外出する度に空を見上げるよう心がけたし、いつ異世界に跳ばされてもいいようにサバイバルの知識を覚えたし、伝説の剣に選ばれし勇者になってもいいように修学旅行先の京都で買った木刀を毎日素振りしていた。

 高校生になってようやく彼は二次元みたいな展開が起こらないことを認めた。しかし、憧れは中々消えず、苦悩の日々が続いた。食事は美味しいものしか喉を通らず、夜は深夜まで眠れない日々を過ごした。

 しかし、彼はある日、閃いた。

 現実にないなら創作すればいいじゃないか、と。

 彼は自分の憧れを小説にすることで妥協することを思いついたのだった。




 小説を書くことを決めた勝太は、ネットの小説投稿サイトを利用することにした。しかし、彼の野望を阻む最初の関門があった。その関門とはユーザーネーム。つまり名前である。勝太はサイトを利用する際に使われるユーザーネームを考えることに四苦八苦しているのだった。

 ネットなんだし本名をそのままというのは論外として、少しばかり中二病な名前にしてもいいかもしれない。いやいや、もう高校生なんだしオサレな感じにしたい。いやいやいやいや、カッコつけてコケたくないし当たり障りのない感じで………。

 こんなことを考えているうちに、勝太は見事に泥沼に嵌まることとなった。なんともバカバカしい状況だが、本人は真面目に悩んでいた。

 悩んだ彼が選んだ答えは……スマホだった。自分で選ぶのを諦め友人の助言を当てにしたのだ。勝太の友人は、ロリコンで色々救いようのない奴だが、意外とこういう時に頼りになる男なのだ。

 さっそく聞こうとした勝太だったが、ふと手を止めた。バカ正直に小説を書くことを伝えるのは恥ずかしいのである。そこで勝太は一計を案じた。

 小説を書くのではなく、漫才のための芸名を考えていることにする。

 それが、勝太の策だった。これによって小説を書いていることを知られることなく助言を得られるのだ。

 今までバカなんて言われてきたが、これほど完璧な計画を立てれるのだから、やはりそんな事実はないのだ。

 一人、頷く勝太。そんなだからバカ扱いされているのだが自画自賛に忙しい本人は一切気づいていない。ここまで来るともはや才能である。勝太は自身の計略に満足し、満を持して友人に助けを求めた。しかし、得てして現実は上手くいかないものである。待ち望んだ友人の答えは勝太の期待を裏切りに裏切っていた。


『ショタコン』


 勝太は激怒した。必ず、かのロリコンの友を除かねばならぬ、と。

 しかし、ここは理由を聞くべきではないだろうか。頭の中で冷静な自分の声に、確かにその通りだと、頷く。言い訳を聞き、その上で適切な裁きを下すべきである。そして、勝太の質問に対して答えが帰ってきた。


『勝太がコント略してショタコン』


 直後、勝太は右手のスマホをベッドへ投げ捨てた。

 自称完璧な計画が完全に裏目にでた瞬間だった。




 見事に自爆した勝太だったが、あっさりと立ち直った。

 起きてしまった悲劇は仕方ない。それを嘆くよりも行動することが大事なのだ。

 自身の経験からそれを学んでいる勝太だが、大抵の悲劇の原因は主に勝太の頭にあることを考えると言葉のありがたみが薄れるから不思議である。

 その後も、夕食を食べたり、入浴したりしつつ、名前を考え続けたが、いい案は浮かばず気づいたときには日が昇っていた……なんてことはなく、まぁ明日でいいか、と考えた勝太はぐっすりと眠るのだった。

翌日、勝太が芸人を目指しているという噂が、何者かの手によってクラス中に拡散されるのだが、それはまた別の話。

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