034
「報酬は20万ユルね」
「ふざけるな! そんな高額な値段を払えるはずがない」
「何それ、脅し? 怖い思いをしたから追加で5万ね」
「き、きさま……」
村の代表らしき老人が現れて、穏やかな値段交渉が始まったのが5分前。
でもたった5分で、この交渉に決着はつかないと確信できた。
最初に伝えた4千という額ですら認められないのか、老人は4百にしろと言ってきたのだ。
その額でも実は赤字ではないのだが、ここで受け入れて相場を崩すわけにもいかない。
何よりも、相場を知っていたのだから引き下がるわけにもいかなかったのだ。
まあ、茶番だった。
老人は初めからお金を払うつもりなんてなかったし、私も受け取るつもりがない。
だからどれだけ拗れたって、歩み寄るわけがなかったのだ。
「はあ……別にお金でなくとも構わないの。こんなみすぼらしい村でも価値のあるものの一つや二つはあるのでしょう?」
「……そんなものはない。仮にあったとしてもきさまには絶対に渡さんわ」
だからこれも想定内。
そもそも現金以外を渡されても困るだけだ。
「お金もダメ、物もダメ……だったらもう残っているのは一つしかないわね」
「……奴隷か」
「あら、分かってたの。……ねえピーア、一般的な奴隷の価値というのはどれぐらいなのかしら」
「それほど高いわけでもありませんよ。奴隷にも給料はきちんと払わなければなりませんから……そうですね、成人している場合で10万ユル前後、子供で1万ユル前後でしょうか」
子供の価値は連接剣とほぼ同等か。
連接剣の代わりに子供を連れて果たして魔物と戦えるのかというと、間違いなく私の負担が増えるだけ。
そう考えると奴隷というのも高い買い物に思えてくる。
「……仕事があるから奴隷も渡せんぞ」
「別に畑仕事をしてもらうつもりはないわ。私は討伐者なのだから、討伐者になりたい子供で構わないの。それに、子供に農作業なんてつまらないでしょう?」
こんな老人ではなく、直接農民の子供たちと話せるならばすぐにでも奴隷は見つけられる気がする。
私についてきたら小さな村ではなく大きな街で暮らせるし、食物も豪華になるだろう。
それが分かっているからこそ、老人だけが話し合いの場に来たのだろうけれど。
私が村の子供を連れて行くと言ったとき、視界の端でヘルダがピクリと反応した。
安心してほしい。
子供と言ったって、もちろん才能もない見知らぬ子供を引き取ろうとは思っていない。
「ねえピーア、こんな場合はどうするのかしら。私は真面目に依頼をこなしたのに、ここの人たちは依頼料を払いたくないと言ってくるの。ギルドではどんな対処をするのかしら」
「……そもそも、どうして村の代表とお話をしているのでしょうか。イルザさんがこの村に来たのはテアさんに依頼されたからですし、魔物と戦ったのはそこの男性に言われたからです。交渉はどちらかと行うべきでしょう」
「お、俺かっ?」
テアの狭い家の中、押し寄せてきた老人達の中には私たちに魔物が現れたと伝えてきた男もいた。
自分に話が振られるとは思っていなかったのか、その男は大いに狼狽する。
「お……俺は依頼なんてしていねえっ。魔物が現れたと伝えただけだっ! お前らが勝手に魔物と戦ったんだろう」
「そんなことを言うのね。あの時、討伐者なら魔物と戦えと間違いなく言われたのだけれど」
「し、知らねえよっ! 俺は何も言ってない!」
この男が個人でお金を貯めているとも思えないから、こうして反発するのも当たり前だ。
素直にお金を払ってくれるならそれで良かったのだが、認めないとなるともう一人に尋ねるしかないだろう。
「それではテアは? わたし達はあなたの依頼でこの村までやってきて魔物を倒したわ。テアはその事実を認めてくれるのかしら」
「わたしは……イルザさんに確かにお願いしました。守り手として魔物と戦う力は無く、村の平和を保つためには討伐者に助けを求めるしかありませんでした。イルザさんは依頼の通りに、魔物を倒してくれました」
「──テア!」
「そう……。それではテアは依頼料を払うつもりがあるというのね。両親はすでに亡くなっているようだけど、残された遺産でもあるのかしら」
外野は無視した。
なにせ農民たちが認めたのだ。
私が受けた依頼はテアの独断であったのだと。
「ありません。お父さんもお母さんも、村に現れる魔物を倒した時の報酬は作物でした。お金は銅貨1枚すら持っていません」
「そうなの。だったらもう払えるものは一つしか残らないわね」
「はい……。わたしは今からイルザさんの奴隷と……」
「認めん! それだけは認められん! 地の魔法を扱えるのはテアだけなのだ! テアがいなければ作物を育てるのにどれだけ手間がかかると思っておるのだ!」
ここまできて往生際の悪いことだ。
今まで考えられないくらい安い報酬でテアをこき使っていたというのに、まだ足りないというのか。
「黙りなさい。あなた方が認めたことでしょう。私に魔物を倒すよう依頼したのはテアの独断であると。ならば報酬の支払いもテアだけで行うのが当然なの」
「ふざけるな! おい、お主の子供を差し出すのじゃ。テアに比べたらお主の子供はその価値も小さいからの」
「そんな……」
「そんなの認められないわ。一度はテアがその身を差し出すと言ったのだから、せめて同等のものを用意して貰わないとね。そうね……地の魔法を扱う子供一人の価値は、普通の子供10人といったところかしら」
もちろん払えるはずもない。
この村の戸数でも10あるかないかなのだ。
すべての家に子供がいるわけでもないし、10人もの子供がいなくなれば村の未来が潰えると同じ意味になるだろう。
「だま──」
『──黙りなさい』
ここまできたら、あとは強引に話をつけるだけ。
『喋るな。動くな。いいから話を聞きなさい』
ありったけの魔力を乗せて声を出す。
今からするのはただの宣言だ。
「そもそも、今まであなた達は守り手を好きに使ってきたのでしょう? 魔物を倒した報酬が作物だけだなんて、どれだけあなた達は儲けてきたの。地の魔法についてもそう。どうして守り手であるテアが畑を拓かなければならないというの。これからこの村がどうなるかなんて知ったことではないわ。守り手を不遇に扱ってきたのだから、いなくなったところで構わないのでしょう? 魔物に襲われても何とかなると思っていたのでしょう? テアが報酬として私の奴隷になることはもう決まったことなの。あなた達が何を言おうと、もう変わらないことなの」
「……」
その場に集まった誰もが口を開かない。
喋られないからだ。
そうなるように、私がありったけの魔力を声に乗せたのだから。
「ヘルダ、ピーア、テア、立ちなさい。もう話し合いも終わったのだから街に帰るわよ」
私が立ち上がると、皆も続いて席を立つ。
動けない彼らの横をすり抜けて家を出た。
村から離れても、追いかけてくる者は誰もいない。
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「あの村はヴァルデンデにほど近い位置にありますから、あのような気質になってしまったのでしょうね」
街に戻る最中、ピーアから村の説明を受けた。
どこの村だろうと、多くの農民と少ない守り手というバランスで成り立っている。
農民は作物だけを作り、守り手は魔物と戦うだけだ。
魔物と戦い続ける守り手だからこそ、魔物に抗える力が育つから。
しかし街から近い場合、必ずしもそうなるとは限らない。
ほとんどの村は作った作物を街へと運ぶ。
そうしなければ貨幣を手にすることができないからだ。
作物は農民自身か、もしくは行商の手によって運ばれる。
街から遠く離れた村ほど行商に作物を卸すこととなる。
場所によっては街まで何日も、もしかしたら一月も離れた場所にあるのだ。
働き手である農民を作物の販売のために村から離れさせることは痛手となる。
森でなくとも魔物は現れる。
作物を運ぶときにもだ。
だから行商は討伐者を雇い、道中の魔物を退治させる。
つまり行商が多く通る場所ほど、魔物は勝手に退治されることとなるのだ。
あの村はどうだった。
街からほど近い位置にあるのだから、行商は間違いなく多く通過することだろう。
守り手が魔物を見つける前に、どこぞの討伐者が魔物を勝手に倒してくれるのだ。
そうなると守り手に意味はなく、立場も弱いものになるのだろう。
それでもたまに現れる魔物を倒すことで、飢えることだけはなかった。
しかし村への愛着はとうに失せていたのだろう。
これからあの村がどうなるのかに興味はない。
昨日のように魔物もたまには現れるのだ。
その時に村が滅びようとも、私には関係ないことだった。
「守り手がいなくなったことを国に報告しなければなりませんね」
「あら、そんな必要があるの?」
「ギルドの職員というのもいろいろとやることがあるのです。討伐者の会話にもいちいち耳を立てていなければなりませんし、報酬出揉めた時には口も出さなければなりません。そのくせお給料は少ないですからね」
「ピーアも大変なのねえ」
「それでも討伐者ほどではありません。少なくとも命を落とすことはありませんからね」
命を落とすことはないというけれど、こうして討伐者に付き添い街を離れることは命を落とすリスクにはならないのだろうか。
飢餓犬を倒す時だってピーアはすぐそばにいた。
もちろん守る自信はあったし、守らなければ討伐者としての評価も落ちるのだから真面目になる。
実は強かったりするのだろうか。
無謀といえばテアもそうだろう。
魔力もほぼつきかけていたのに魔物に立ち向かうなんて愚かなことだ。
しかも、守りたいとも思っていない農民のために身を投げ出すなんて。
片腕を失っては守り手としてやっていけないではないか。
……いや、テアは守り手を辞めたかったのかもしれない。
両親が亡くなった時点で守り手としての意義はなく、生きるためには畑を拓くしかなかった。
守り手以上に搾取される立場となって、自暴自棄になっていたのではないか。
そのテアは、私たちの前をヘルダと一緒に歩いている。
「もう少し早く歩けないんですか」
「ご、ごめんなさい……」
テアは左腕を失ったばかりなのでまだ身体の変化に慣れていないのだ。
さらには失血を止めるために焼いたので痛みもまだ残っている。
普段通り同じように歩けというのは酷だろう。
「少しぐらい遅くなっても街には余裕を持ってたどり着けるわよ」
「でも……」
「それと、今後はテアの面倒をヘルダに任せることにするから。もう少し仲良くなっておきなさい」
「……イヤです」
「ヘルダ?」
「イヤです! どうしてテアの面倒を見なきゃいけないんですか!」
「──ヘルダ!」
私の呼び声も虚しく、ヘルダはその場から駆け出してしまう。
同時に崩れ落ちるテア。
痛みと発熱でここまで歩くのが限界だったのだ。
「……追いかけなくていいのですか?」
「追いかけると言われても……無理でしょうよ。ピーアではテアを運べないし、そもそもギルド員を一人にするわけにもいかないもの」
気を失ったテアを抱えて歩き出す。
見た目以上に軽い身体だ。
ヘルダは一人でも大丈夫だろう。
行きでは魔物の一匹すら目に入らなかったし、ヘルダも戦えるようになったのだ。
もしも魔物が現れたとしても、そうそう遅れを取ることはないだろう。
「子育てって、本当難しいわ」
私にはさっぱり分からない。
ヘルダは何を嫌がったのか。
テアの面倒を見るのがそれほどに嫌だったのだろうか。
「やはり母娘のように見えますね」
「からかわないで。こっちは大変なんだから」
「ああ、ごめんなさい。笑うつもりはなかったんです」
それでもピーアは面白そうにしている。
私だって他人のことなら、子供の気持ちが分かっていないなって笑っていたのだろう。
けれど当事者になって初めて分かることもあるのだ。
ヘルダの気持ちがさっぱり分からない。
ついでに言うと相談できる相手もいない。
本当に困ったことだった。
ヘルダはどうして走り去ったのだろう。
きっかけはテアの面倒を見ろと言われたからなのだと思う。
しかし、嫌だっただけで逃げ出すものなのか。
私はそうは思えない。
最近は少しずつヘルダの人見知りも解けてきたと思っていた。
少なくとも同年代の子供に対しては会話ができていたではないか。
つまりはテアに原因があるのだろう。
ヘルダと今一番仲の良い子供はシャーヤだ。
テアとの違いはなんだろうか。
醜いということはない。
見た目が悪ければそもそもヘルダに近づけさせない。
他の違い……シャーヤは火の魔法を扱い、テアは地の魔法を扱う。
これはむしろ共通点だ。
どちらも珍しい魔法使いなのだから。
そうなると違いは二つ。
討伐者であるかどうかと、片腕があるかないか。
これ以上考えても結論は出ないだろう。
私が勝手にヘルダの気持ちを決めつけるわけにはいかないのだ。
ヘルダと話す必要がある。
でも何を話したらいいのだろうか。
子供だからと適当に話すことは許されない。
ヘルダを立派な大人に育てると誓ったのだから。
ああ……これが充足感なのだろうか。
退屈な日々から逃れるために知り合った関係だが、こうして悩んでいる時間が楽しくもあるのだ。
人らしく生きること。
ヘルダよりもむしろ、私こそが実践しているのではないだろうか。
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テアが目覚めることもなく、私たちは街へとたどり着いた。
ギルドへの報告は明日でも構わないということなので、まっすぐに家へと帰る。
門番からヘルダが通ったことは確認できた。
ヘルダのことだから、どこかによることも無くそのまま帰ったはずた。
「随分と遅かったのね」
扉を開くと鬼が立っていた。
いや、クラーラだ。
仁王立ちで、いかにも怒っていますという様子。
遅かったというけれど、伝えていたとおり三日で帰ってきたはずだ。
「ねえイルザ。私ってばいつの間に貴族になったんだっけ」
「私の記憶ではクラーラは貴族ではないわね」
「そうだよねえ。だったらなんで奴隷なんて連れてきたのかなあ?」
「……もしかして貴族になったの?」
「違うでしょ! ヘルダから話は聞いたんだからね! 勝手に奴隷を報酬にして、しかもヘルダに面倒を見させようとするなんて! ヘルダ泣いてたんだから!」
ちょっと、ちょっと待ってほしい。
ヘルタが泣いていた?
なんで?
どうして?
テアの面倒を見るように伝えたのはヘルダのためなのだ。
歪んでしまった性格を正しい道へと治すために必要なことだと考えたからなのだ。
「……どうしてイルザがそこまで驚いているのよ」
「知らなかったのよ。ヘルダがそこまで私になりたかったなんて……」
ヘルダはいつの間に私に憧れていたのだろう。
一緒に討伐者として活動していたからなのか。
私は強いから、確かに憧れてもおかしくはないけれど。
「そうじゃないでしょ……。はあ、なんだか怒っている私が馬鹿みたいじゃない。ほら家の中に入りなよ。その子──テアだっけ。寝かせてあげなきゃ話もできないよ」
そこで呆れられると私が間違っているみたいではないか。
でも確かにテアは邪魔だったので、クラーラの部屋に寝かせることにした。
……
…………
「それで、どうしてヘルダが泣いてるんだって?」
「ヘルダが私に憧れているからよ。あの子はもっとまっとうに育つべきだと思ってテアの面倒を任せたのに、どうやらヘルダは私になりたいみたいなの」
「……ヘルダがそう言ってたの?」
「いいえ。でも見たら分かるわ。ヘルダの考え方が私そっくりになっているもの」
まずは形から、ということなのかもしれないけれど、それでも私を目指すのはやめたほうがいいと言いたい。
何より私が楽しくないから。
「どうしてそう思ったのか……はいいとしても、それでどうしたらテアの面倒を見させることになるのよ」
「それはまあ色々ね。立場の違う人と接することは決して悪いことではないわ。今のヘルダの周りには討伐者しかいない。もしくはその周辺ね。悪いとは言わないけれど、幼い時こそもっといろんな人と接して、いろんな考えを知るべきだと思うの」
「テアの今後はどう考えているの」
「さあ。好きにしたらいいんじゃないかしら。一応はCランクに上がるのだし、養うことはできるでしょう。クラーラの手伝いをさせたっていいし、どこかの店に出してもいい。ただ寝泊まりはこの家で、その時はヘルダが面倒を見たらいいと思っているだけ。まあ、ペットみたいなものよ。生まれた時から自分よりも弱い立場のペットと一緒に成長すると、それなりに親心もつくっていうじゃない」
あくまでも私が抱く立派な大人のイメージだけれど。
周りの意見を聞かない人よりは、気配りのできる人になってほしいのだ。
そのためには今のままじゃいけない。
私のように自分の今年が考えないようになってはエミリアとの約束が果たせない。
「ねえ、イルザ……」
クラーラは納得してくれただろうか。
クラーラも私と同じで、今まで子育ての経験はない。
しかしクラーラにも育ての親はいたはずなのだ。
ならばこそ、ここで彼女の価値観を聞いておきたかった。
「──ペットって、どういう意味なのかしら?」
だから真面目な顔をしているのにそんな質問をされてしまうと、ガックリと机に突っ伏してしまうのま仕方のないことだと思う。
……
…………
「なるほどね。イルザの考えは分かったよ」
そもそも動物がいないのだから、ペットなんて存在するはずもない。
説明するのにも大変だった。
「まったくもう、二人して不器用なんだから。……違うかな、イルザは馬鹿なんだから」
「馬鹿ってことはないんじゃないの」
なんて酷いことを言うのだろう。
「じゃあやっぱり不器用だよ。ねえイルザ、ヘルダにきちんと説明したの? どうしてテアの面倒を見てほしいのか、ちゃんとヘルダに話したの?」
「それは……」
面倒を見ろと、そう言っただけだ。
「話してない、けど……」
「それと、イルザはヘルダの気持ちを勘違いしているよ。ヘルダはイルザと離れることを恐れているの」
「離れるって、どうしてよ」
「ヘルダからしたら、一日中付きっきりで面倒を見ろって言われたと感じたんだよ。もうヘルダの面倒を見るのにも飽きたから、あとは勝手にやってくれって言われたようなものなの」
「そんなこと、言ってないわ」
「でもヘルダはそう感じた。もしかしたらイルザは一人でどこかに行ってしまうんじゃないかって思っちゃったの」
私とヘルダの間には、つまり会話が足りなかったのだろう。
普段からヘルダは無口で、あまり会話を好まないと思っていた。
何よりもまだ壁を感じていたから、私も無理に話しかけることはしなかったのだ。
それは失敗だったのだろう。
少なくともヘルダが立派に育つまでは、私はヘルダから離れるつもりはないのだから。
「ヘルダと話をしてくるわ」
「それがいいだろうね。テアのことは私に任せてくれたらいいから」
「ありがとう……。クラーラがいてくれて助かったわ」
本当に、クラーラがいてくれなければ私はヘルダと話すことはなかったと思う。
そうして勘違いをしたまま、ヘルダと討伐者を続けていたのだろう。
それは悪いことではないけれど、そうなるとヘルダはさらに歪んで成長していたかもしれない。
本当にクラーラがいてくれてよかった。
「……イルザもさ、見た目の割には子供なんだから。おかげてお説教もできなかったよ」
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眠っているヘルダを起こし、少しばかり話をした。
どんなことを話したのかはクラーラにも秘密だ。
でも少しだけ、仲良くなれたのではと思う。




