エピローグ
―― ――
私は、貴方に会いたかったのだ。
この想いは、何にも変えられない自分自身の意思なのだと思う。貴方に会いたい、その想いだけを強め、私は生きてきたのだろう。断定しないのは、貴方に会うまでそれに気づいていなかったからだ。
貴方は、私の心を離しはしなかった。星のように瞬く、白とも銀ともつかない髪、薄く膜の張った、光る桜色の目。白く色づいた絹の肌。貴方を形成したその色達は、私を魅了してならなかった。
貴方を宿す色とりどりの花に、私は触れてみたかった。
触れてしまったらそこから貴方がぼろぼろと壊れてしまう気がした。大きな肉塊となって、貴方は容易く傷ついてしまう。そんな脆い貴方だから、私は触れることすらできない。
私は貴方に触れないほうがいいのだ。貴方は偶に、私の手を物欲しそうに眺めるが、私は禁を犯す程の勇気を持ち合わせてはいなかった。私の刃で、貴方が傷つくのだけは避けたかった。
私を見つめる貴方の瞳は、例えば幾万の星を凝集させた一つの宝石だった。多くの星を集めた、一つの可憐な花だった。薄い桜色に色づいた貴方の唇は、花弁の如く静かに開くのだった。
「私と一緒に、いてくれる?」
奏でられた声は、凍りづけになった私を救った。
私は驚愕した。私のような惨めで醜い、薄汚れた存在の人間と一緒にいたいなどと、正気を疑う他無かった。私は貴方と、遠い昔に旅立っていった大切な人の面影を重ね合わせている。そんな愚かな私と、一緒にいたいなどと。
私は凶器を向けながら、貴方はそんなことは関係ないという態度で私を見据える。
一人でずっと歩き続けてきた私は、やっと安息の地を手に入れられた気がした。
私は貴方と二人で歩いていくことに決めた。小さく細い手は、今にも割れてしまいそうな繊細さを保ったまま、息づいている。弱々しくも私を救った貴方を、護りたいと思った。
寂しそうに笑う貴方は、とても美しかった。
たとえ永遠に巡り続ける運命だとしても、必ず貴方の手を掴んでみせる。
白くて小さな手を握ると、貴方は心底嬉しそうに私の手を握り返した。




