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メイク マイ デイッ!  作者: 平野ハルアキ
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キノコ採りに出かけよう そのに

 城下町を出て北へ移動することしばし。アイシャ達は『魔の森』へと到着した。


「そー言えばこの辺に来た事なんてないんだよねー」

「……普通の人はここに用事なんてないから」

 辺りをきょろきょろと見渡すノノに、ナーニャは答える。


「確かにね。でもナーニャは来た事あるんでしょう? 案内よろしくね」

 軽く体をほぐしながらアイシャは言った。


「……うん、任された」

「さーて、楽しいピクニックと行きますかー」

「これも騎士団の仕事って事忘れないでよね、ノノ」


 案内役のナーニャを先頭に、三人は森の中へと入っていった。





 あいにく、ノノの言う様な『楽しいピクニック』とは行かなかった。

 太陽光が遮られ昼間でも薄暗い視界に、じめじめと湿気の多い空気。木の根が出っ張っているため足元にも気を付けなければならない。ツタもまるで行く手を邪魔するかの様に生い茂っており、その道のりはアイシャが漠然と想像していたよりも苦労するものであった。


「……もうちょっとで着く。頑張って」


 二人を振り返りながらナーニャは言った。その手には筒状の道具が握られてい

る。これは魔物が嫌う波長を発する魔法具の一種であり、同様のものは街や街道などにも設置されている。


「なんていうか、陰気な所ね。気分まで暗くなっちゃいそう」

「そんなアイシャに、ノノちゃんの太陽の様な笑顔をプレゼントしたげるよ」

「はいはい。とっても明るい気分になったわ」

「ちなみに料金は一回五〇〇〇ウルム」

「高っ!? って言うかそれプレゼントって言わないから!!」

「……すごいぼったくり価格だね。……っと、目的地はもうそこだよ」


 ナーニャにうながされ、二人は前に出る。少し開けた場所には、大量のキノコが群生していた。


「うわー、凄い一杯生えてる……」


 量もさることながら、その色合いにアイシャは呆気に取られた。

 赤やら青やら黄色やら白やら。良く言えばカラフル、しかし彼女にとっては極彩色としか言い様のない光景であった。


「……ここでよく採取してる。研究室御用達の場所なの」

「そうなんだ。……って言うか絶対食べられないキノコばっかりだよね……」

「……ううん。食べられるよ」

「え? そうなの?」


 意外そうにアイシャは尋ねる。ナーニャは手近なキノコを指差しながら説明を始めた。


「これは食べるとお腹が痛くなるキノコ。これは食べると猛烈な吐き気に襲われるキノコ」

「……」


「……そっちのは食べると幻覚が見えるキノコで、その隣は食べると異様にハイになるキノコ」

「…………」


「……向こうにあるのが呼吸困難になるキノコで、更に向こうにあるのが心機能が停止するキノコで、その左に」

「…………あのねナーニャ? 『食べられる』って言うのは『胃の中に収められ

る』って意味じゃなくて、『美味しく胃の中に収められて、なお且つ異常が出な

い』って意味だからね?」

「……それを最初に言って欲しい。アイシャのうっかりさん」

「さも私の方に落ち度があるかの如く!?」


 何ともズレまくった会話を繰り広げる二人に、ノノが声をかけた。


「ほらナーニャ、どれ採れば良いか教えてよー。アイシャも反省は後で良いじゃ

ん」

「……うん、分かった」

「だから私に何の落ち度が!?」


 そんなアイシャの叫びはスルーされ、キノコの採取が開始されるのであった。






「しっかし、ホント大量に生えてるよねー(ぷちっ)」

 手でもぎ採ったキノコをリュックに入れながら、ノノは言った。


「……このあたりは特に魔力濃度が高いみたいだから(ぷちっ)」

「つまりキノコにとっては栄養豊富な場所って事?(ぷちっ)」


 ナーニャの方に視線を移しながらアイシャは尋ねる。作業自体は単純なので、手元を見なくても支障はない。


「……そう思っておけば間違いない(ぷちっ)」

「なるほどね。量だけじゃなくて大きさが凄いのもそれが理由なのね(カプッ)

…………………………………………『カプッ』?」


 何やら違和感を感じたアイシャが視線を手元に戻して見ると――


『ガジガジガジガジ』

 やたらとでかいキノコが、アイシャの手にかじりついていた。


「喰われてるーーーーーーっ!?」

「……ああ、なんだ。魔物化したキノコね。茂みに隠れてたみたい」

「へー、こんなのも居るんだー。じゃあ逃げようか」

「なんだ、で済ませないで!? つーか見捨てないでーーーー!?」


 えらく冷静な二人に対し、パニック気味にアイシャが叫んだ。


「……って言うか、離しなさいっ!」

 空いた手で剣を引き抜いて、一突き。キノコは奇声を上げて倒れた。


「あー、ビックリしたー。『魔物除け』が効いてなかったのかな?」

 かじられた手をヒラヒラとさせながらアイシャは言った。幸い、大した怪我はなかった。


「……あるいは元々この場に居た奴が逃げ切らない内に私達がやって来たか。そして『魔物除け』の波長がかえって刺激になって――」


 ナーニャとノノが自分の後ろに視線を向けている事に気付いたアイシャは、振り返る。


 そこには先程よりもはるかに巨大な魔物化キノコが大口を開けていた。


「――こっちに襲い掛かって来た、と」

「逃げろーーーーーーーーっ!!」

「あれ? いきなり逃げるのは騎士道精神に反するんじゃなかったの?」

「ごめん私が間違っていた!! とっとと逃げるべき!!」

「……置いてかないでー」


 三人は慌てふためきながら、一目散に逃げるのであった。

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