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メイク マイ デイッ!  作者: 平野ハルアキ
38/39

大会始めました そのご。

「……なあ、見たかよ!」

「ああ、凄えじゃねえか!」

『幻影世界』内部の様子を映し出したスクリーンの内の一つを前に、称賛の声が沸き上がった。


 脱落した参加者、見学だけの見習い騎士、魔法研究員。立場はそれぞれであったが、目の前の映像に興奮している点に関しては共通していた。


 映されていたのは、魔物に拘束されたノノの脱出劇だ。


 鳥型の魔物にかっさらわれると言う絶望的状況に陥りながら、上空にて必死の反撃を試み、見事に危機を脱したのである。


「あのノノって子、ナーニャの友達なんでしょ? 凄いじゃない!」

「いやー、カッコ良かったわ!」

「……うん」

 同僚達の褒めはやす声に、何となく照れくささを感じながらナーニャは頷いた。


「本当、良かったわよね!」

「うん!」


「しっかし、良かったよな!」

「ああ!」


 部屋のあちこちから上がる熱気を帯びた声が、ナーニャの耳に届く。友人が讃えられるさまが、我が事のように嬉しかった。


「「最後まで諦めない、あの戦いぶり!!」」


「「服がイイ感じにめくれ上がった、脱出直後の状態!!」」


 そして熱気の内容に、大いなる隔絶が存在する事を知った。

 まだ年若い彼らの、悲しきサガであった。






「……なんでノノが空から降って来るの?」

「……空の高さを確かめてたから?」

 唐突なる遭遇から三秒後。呆然と尋ねるアイシャに、ノノは婉曲に答えた。


「まーこれで、アイシャと戦うまで脱落しないって約束果たせたかなー。足掻いた甲斐もあるってもんだー」

 体中に付いた土や葉をはたき落としながら、軽い調子でノノは言った。


 だがアイシャは『足掻いた』と言う単語を、軽くは受け止めなかった。

 何があったのか、完全には把握出来ない。が、それなりに冷静さを取り戻した

今、先程の上空の様子から大体は察する事は出来た。


 自分との勝負の約束のために、ノノは『足掻いた』。見た感じ、楽な状況ではなかったはずなのに。実際に出会えるとも限らないと言うのに。状況的には仕方がないとは言え、ノノとの約束を果たすのを半ば諦めていた事を、アイシャは少し恥じた。


 もっとも、そんな内心は表には出さなかった。代わりに出したのは、


「そりゃどうも。でも、決着を付けるまでが約束よ」

 笑顔と、右手だった。


「そーだね。じゃあ早速、勝負しよーか」

 まだ地面に座ったままであったノノは、差し出されたアイシャの右手を己の右手で掴み、


「隙ありぃ!!」

「だと思ったわよ!!」

 左手に持ち直していた剣でノノは突きを繰り出すも、瞬間右手を離してアイシャは側方に回避した。


「ありゃー? 行けると思ったのになー」

 素早く身を引き、反撃に備えつつノノは首を傾げる。


「剣を左手に持ち替えた時に、不自然に腰を捻らなきゃ行けたかもね」

 剣を抜いて体勢を整えながら、アイシャはそう返した。ノノの戦術は卑怯と言えば卑怯だ。が、別に腹は立たなかった。


 ノノはルールの範囲内であれば、手管にはあまりこだわらないタイプだ。それは一種の強みである、と言う事はアイシャも認めているし、彼女の場合そのあっけらかんとした性格が、陰湿な印象を与えない一助になっている。

 そして、だからこそ警戒もしていた。「多分、こう来るな」と。


「うーん、残念。じゃー正攻法で勝っちゃおーかな」

「それは楽しみね。期待してるわ」

 一拍の間。そして、


「てやぁーーーーーー!!」

「はあぁーーーーーー!!」

 同時に動いた。


 ノノが袈裟に斬り下ろすのを、アイシャは受け止める。構わずノノは攻め立て

る。二合、三合。

 四合目を受け流し、隙を付こうとする。見切られた。ノノは咄嗟に身をかわし、剣は空を薙ぐ。


「やっ!!」

 しかしアイシャは止まらない。踏み込み、追撃の一閃。ノノは踏ん張りながら受け止め、鍔迫り合いに持ち込んだ。


「や、やるじゃんアイシャ……!」

「そっちこそ、ね……!」


 均衡を保ちながら、互いに言い合う。しかし力はアイシャの方が上で、しかもノノは体勢を崩し気味だ。徐々にだが確実に、状況はアイシャ優勢に傾いていった。

 行ける! 勝利への手応えを感じ、胸中でアイシャは拳を握った。


 直後、ノノは押し込まれる勢いを利用して、わざと自身の体勢を崩し側方へと逃れる。急な動きに対応出来ず、アイシャは前方へつんのめって地面に倒れ込んだ。


「……っ!」

 倒れたまま必死に視線を巡らせ、ノノの姿を追う。


 無理のある動きにノノ自身も倒れ込んでいたが、復帰は彼女の方が早い。腕の力で体を起こし、膝立ちになろうとしていた。


 アイシャは倒れたまま地面を転がり、ノノから距離を取る。視界の隅で、膝立ちの姿勢のまま剣を突き出そうとするノノの姿が見えた。

 転がる勢いで素早く膝立ちになる。綺麗とは言えない姿勢だったが、構わず剣を持つ手に力を込める。


 ノノが迫る。こちらも可能な限りの力を振り絞り、突きを繰り出した。


 渾身の剣と剣とが交錯し合い――


「うっぎゃああああああああああっ!!」

『ボアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 横合いからすっ飛んで来た悲鳴と雄叫びに、二人は思わず視線を横へと向ける。


 何故だか、魔物の背に乗って爆走するオウカの姿が飛び込んで来た。


「「……あれ?」」

 声を重ねる両者へと、暴走ロデオが突っ込んだ。


 空に映されている残り参加者数が二人分減って、一となった。






「……はーい、と言う訳で、優勝者のオウカさんへのインタビューでーす。今の気分はいかがかしら?」

「いやー、最高の気分ですね」

「ズバリ、勝因は何だと思う?」

「やはり、日頃の努力によって積み重ねて来た、技術の差だと思います」

「大会中は一体、どのような気持ちで戦っていたのかしら?」

「相手に勝つと言う事以上に、まず自分自身の弱い心に勝つんだ、と言う強い気持ちを持って」


『ただ逃げ回ってただけじゃねえかーーーーーーーーっ!?!?!?』


 イリーナのインタビューにキメ顔で答えるオウカへ、部屋中から怒気の篭った心のハリセンが振り下ろされた。


「……映像見てたけど、結局オウカ一度も剣を抜かなかったよ」

「…………それはそれで凄いかもだけどさ……」

「…………アタシらの苦労は……」

 ナーニャの声に、げんなりとした様子でアイシャとノノは答えた。


「しかし、団長殿がこの結果を認めたのは意外でござったな……」

 うーむ、と腕組みをしながら呟くコジローに、


「まあ、ルール違反ではないですからね。それよりも、僕としては師匠と勝負をしたかったと言う気持ちの方が大きいですよ」

 王族としての気品を取り戻したカイルが答えた。


「……勝負と言えば」

 カイルの言葉を聞いたナーニャが、アイシャとノノの方へ顔を向ける。


「……結局さ、アイシャとノノの勝負は、どっちの勝ちだったんだろうね?」

「あー、決着が付く前にお互い脱落しちゃったからねー」

 ノノは肩をすくめながら続ける。


「だからさ、コイントスで決めない? 表が出たらアタシの勝ちで、裏が出たらアイシャの負けって事で」

「さも公平そうな言い方で、私にとって著しく不公平な前提条件を提示しないでくれる!?」

「分かった分かった、アイシャがそこまで言うんだったら仕方がないや。アタシの勝ちって事で良いよ」

「そしてさも譲歩してるような言い方で、とんでもなく図々しい事言わないでくれる!?」


 取りあえず神経の太さに関しては勝ち目がないと確信しながら、アイシャは喉からツッコミ声をほとばしらせた。

 そんな彼女の様子を苦笑交じりに見るナーニャの耳に、


「まー素直に認めるのも、ちょっぴり悔しいしねー」

 気のせいだろうか。そんな声が聞こえて来たような気がした。


次回、最終話です。

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