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メイク マイ デイッ!  作者: 平野ハルアキ
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研究は発表してナンボ

「イリーナと――」

「……ナーニャの――」


「「フロイデ魔法研究所、新作魔法具発表会ーー(……かいー)!!」」


「……何ですか、これ……?」


 中庭に集められた、見習いを含めた騎士達が見守る中、突然始まった催しに対しアイシャが投げ掛けた言葉は、その場の皆の意見をこれ以上なく代弁したものであった。


「良い質問だ、アイシャちゃん!」

 ビシッ! とアイシャを指差し、魔力で声を増幅する魔法具『マイク』を片手に言い放つイリーナ。


「最初に言った通り、研究所で開発した魔法具の新作を発表しよう! ……って試みよ」

「ええ、それは分かります。何故それを騎士団でやるのかが分からないんです」

 アイシャがそう言うと、イリーナはふうっ、と溜息を付き、遠い目をしながら答えた。


「……だってぇ、研究所内でやったって面白くないもん。皆新作の事知ってるし。知らない人相手にやった方が楽しいじゃない」

「つまり私達、単に所長のお遊びに巻き込まれてるって事ですね……」

「遊びじゃないもーん! 私達の行ったレヴェリアの未来のための研究を皆に伝えたい、って言う崇高なる理念の元で行われる発表会だもーん!」

「駄々を捏ねる子供よろしく手足をバタつかせながら崇高とか言われても!?」


 所長としての威厳どころか、大人としての体面すらも丸めてポイしたかのようなイリーナの姿を見て、レヴェリアの未来が明後日の方向へと振り切れやしないかと内心思うアイシャであった。


「よーし、場が暖まったところで、早速行ってみよー!」

「ここに居る騎士達が醸し出す、達観した雰囲気を見てから言って下さい!?」

 その場に集まった数十人の騎士達の「うん、もう良いや細かい事は……」的空気を全く無視して、イリーナはマイクに向かって叫んだ。


「まずは一つ目、じゃじゃーん! どうぞー!」

「……じゃじゃーん」

 そう言ってナーニャが取り出したのは、一振りの包丁であった。


「一見すると、ただの包丁。しかぁーし、実は徹底した安全対策に取り組んだ、魔法の包丁なのでーす!!」

「安全対策……ですか?」

 首をひねるアイシャの反応に気を良くしたのか、イリーナは上機嫌で解説を始める。


「そう! 料理中、うっかり指を切っちゃって痛い思いする人も居るかと思いま

す。まあその時は、絆創膏貼って『アナタのために苦手な料理に挑戦してみたの』アピールするチャンスなんだけどね。だけど数が多すぎると逆効果になるから、」

「お願いですから包丁の話に戻って下さい」

「もう、ここからが良いところなのにー。……まあ良いか、この包丁はそんな痛い思いとはオサラバ出来る魔法の包丁! なんと、騎士団も御用達の『安全装置』を付けた包丁なのでーす!! 効果はこの通り、ほら……!」


 そう言って、用意した大根に向かって包丁を振り下ろす。刃が大根に触れるも、接触面に光の壁が現れ、それを押し止めた。


「……このとおり、全く切れません! これでもう怪我の心配なく、安心して料理が出来ますね!!」

 包丁を天に掲げながら言うイリーナと、「……わーわー、ぱちぱちぱちー」とわざわざ口で言うナーニャ。

 そんな彼女らに対し、アイシャは挙手して一言。


「……それで、どうやって料理すれば良いんですか?」

「ん?」


「いやですから、『安全装置』付きじゃ食材は切れませんよね? それじゃ、料理したくても出来ませんけど」

「あ、その時は『安全装置』解除してね」


「…………それで、どうやってうっかり指を切るのを防げば良いんでしょうね?」

「だから、この『安全装置』付き包丁を使えばそんな心配とはオサラバよ」


「………………堂々巡り、って言う言葉知ってます?」

「知ってるけど、それが?」


「………………………………………………………わー素晴らしい魔法具ですねー」

 どこから突っ込めば良いかと考えた挙句、色々と諦めたアイシャは虚ろな目でそう呟いた。


「よーし、じゃあ次行ってみよう!! 二つ目の魔法具はこれ! じゃじゃーん!!」「……じゃじゃーん」

 次にナーニャが取り出したのは、一本のホウキであった。


「これまた、一見すると普通のホウキ。ところがどっこい、ゴミやホコリを掃く能力を魔力の力で大幅にパワーアップさせた、魔法のホウキなのでーす!!」

「パワーアップって、具体的にどんなですか?」

 一つ目の魔法具がろくでもない代物であったためか、疑わしげな目をしながらアイシャは尋ねる。


「ふふふ、凄いわよー。掃ける範囲と力を強化してるのよ! これでお掃除もラクラク!」

 ナーニャから手渡されたホウキをグッと突き出しながら、イリーナは言った。


「まあ、どんなもんかは実演あるのみ! つー訳で、うりゃー!!」

 イリーナが地面を掃わいた瞬間、ブワッと猛烈な風が起こる。舞い上がったホコリが風と共に騎士達へと襲いかかった。


「うきゃぁーーーーーーーーっ!?」

「どわぁっ! め、目にホコリがぁーー!?」

「ゲホッ、ゴホッ……」


 混乱の渦に飲まれる騎士達を尻目に、イリーナは自慢げな様子で説明を続ける。


「どう、このハイパワー! これなら、お掃除もあっと言う間に終わるわよ!!」

「代わりにこっちがえらい目にあってますけどね!! かえって周りが汚くなってませんかこれ!?」


 むせ返りながらアイシャは叫んだ。

 そんな彼女の声はスルーして、


「まあそう言う訳で、今回の新作魔法具は以上でしたー! 気に入った魔法具があれば、ぜひ研究所まで一報を! それじゃあ、イリーナと――」

「……ナーニャの――」


「「フロイデ魔法研究所、新作魔法具でしたーー(……でしたー)!!」」

 嵐の如く二人は立ち去って行った。

 

後に残されたのは、ようやく混乱が収まった騎士達のいたたまれない空気。


「…………じゃ、お仕事に戻りましょうか……」

 アイシャのため息混じりの一言に、もそもそと平常運転へと戻って行く騎士団であった。

 

 



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