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メイク マイ デイッ!  作者: 平野ハルアキ
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燃えよ木剣

「もののふとして、何か必殺技が必要だと思うのでござるよ!」

 見習い騎士達が自主訓練を行っている最中、コジローが突然そんな事を言い始めた。


「ひ、ひっさつわざ……?」

 唐突過ぎる宣言に、アイシャは気の抜けた言葉で返すしかなかった。


「おー、必殺技。良いじゃん、カッコ良さそうだし」

 一方のノノは、お気楽な調子でそう答える。彼女の返答に気を良くしたのか、コジローは握り拳で力説し始めた。


「そう、カッコ良いのでござる! ロマンでござる! 夢でござる! あとついでに、多分強いでござるよ!」

「いや、最後のが一番重要だからね?」

 目を輝かせて語るコジローの言葉に、アイシャはささやかなツッコミを送る。熱弁を振るう彼はもちろん聞いていないが。


「良いじゃーん、アイシャ。一緒に考えてあげよーよ。コジローの必殺技を考えてあげる事で、ひいてはアタシ達自身の成長のきっかけが掴めるかも、とか何とかの理屈でさー」

「……つまり普通に訓練するよりは楽そうで良い、と。大体あんたの考えが読めるわよ……」

「気にしないのー。……と言う訳でコジロー、早速始めよー」


 ノノの言葉にコジローは感激した様子で頷いた。


「ありがとうでござるノノ殿! 折角の機会、二人の必殺技も一緒に考えるでござるよ!」

「あー、アタシは良いの。もう既に必殺技持ってるから。そう――」

 一旦言葉を切って、


「――この可愛らしい外見こそが、アタシの最強の必殺技なのだーー!!」

 バチンッ、とウインクをしながら、猫なで声&決めポーズで宣言した。


 その姿にコジローは、

「え? 何でござるか、それは?」


 キョトンとしながら、心底意味が分からないと言った風に聞き返した。


「………………」

「まあ、良いでござる。早速取り掛かるでござるよ」

「……うーん、何だろうなー。この、ついカッとなって鈍器のようなもので殴り掛かりたくなるかのような感情は?」

「恋じゃないの?」


 十文字の青筋を額に貼り付けるノノを、アイシャはため息をつきながらなだめるのであった。






「……と、言う訳で、まずは拙者の持ち技、一文字斬りを繰り出して見るでござ

る。何か問題点があれば、そこを指摘して欲しいでござるよ」

「りょーかーい。取りあえずアタシが受けて見るから、アイシャは横で見ててー」 木剣を構えるコジローとノノの言葉にアイシャは了解とばかりに頷いた。


「では行くでござる! ……虚無の海に揺蕩たゆたいし虚ろなる魂よ……」

「ある程度予想してたけど、まずその口上は技の威力と何一つ関係ないからね!!」「その……スーパーサンダーデラックスファイアーブリザード……」

「そしていきなり口上のレベルが初等部並になっちゃったよ!? 取りあえず雷なのか、火なのか、吹雪なのかはっきりさせて欲しいわ!!」

「ウルトラデラックス無慈悲なる裁きを示せ!! 必殺一文字斬り!!」

「ははーん、コレさては最初と最後だけ思い付いてて、その途中は適当に誤魔化したな!?」


 ひとしきり振り下ろされるアイシャ伝家の宝刀、心のハリセンをよそに技を繰り出すコジロー。地を蹴り、ノノへと迫りながら木剣を横に一閃――


「よ、っと」

 するも、あっさりとノノに受け流された。


「むむぅ、通用しないでござるか……。一体、何が問題でござろうか……」

 首をかしげながら尋ねるコジローに、ノノは木剣の切っ先を向け、プラプラと小さく上下に振りながら指摘する。


「問題も何も、剣の軌道がバレバレ。横から来るって分かるから、防ぐのなんてよゆーだよ」

「って言うかそもそも、口上自体要らないから。これから技出すの簡単に分かっちゃうし、実戦なら言ってる間に攻撃食らっちゃうし」

 ノノの言葉にうんうんと頷きながら、アイシャが付け加える。ついでに、ちらちらと様子を見ていた他の見習い騎士達からも「だよねー」との声が聞こえて来た。


「ぬぬぅ……。では、新たなる必殺技はその辺りを改善する必要があるでござるな……」

 そう言って、何やら考え込むコジローの姿を見ながら、アイシャは口を開く。


「まあ、そんな簡単に思い付く訳でもないし、取りあえず私達は訓練に戻り」

「閃いたでござる!!」

「早っ!?」

 そんな簡単に思い付いたらしいコジローが顔を上げて叫ぶさまを、アイシャは驚愕を持って返すばかりであった。


「拙者の一文字斬りの弱点は、剣の軌道が見切られてしまう事。ならば、軌道を分からなくすれば良いのでござるな!」

「うん、そのとーり。問題は、どうやって分からなくすれば良いか、だよねー」

「いや本当の問題は、口上の方を問題点として取り上げてない所だと思うけど」

 二人の問いに、コジローは自信ありげに大きく頷く。


「その問題を克服した、軌道を見切られない方法……」

「うん、口上は改善する気皆無と言う事が分かったわ」

「……それは、何も考えずにひたすら剣を振り回せば良いでござる! 自分にも剣の軌道が分からないのだから、相手にも分かるはずがないでござる!!」

「それが問題克服だと思える根拠が一番分からないわ!?」


 コジローの示した改善案と呼べるのかさえ怪しい発想は、取りあえずはアイシャからの予想、と言う形で見切られる事はなかった。


「大体、適当に振り回しているだけじゃ実際の所通用しない……」

「果たしてそうかな、アイシャ? やってみなきゃ分からないよ!」

 何故か偉そうに言い放つノノの言葉に応じ、コジローは剣を構える。


「その通りでござる! と言う訳で新必殺技十文字斬り、行くでござるよーー!!」「行け行けー!」

「振り回してて十文字に斬る事なんて出来ないと思うよ!? ……って、わわ! 危ない!?」


 ノノに煽られやたらめったらに木剣を振り回し始めたコジローに、思わず逃げるように離れるアイシャ。確かに軌道は見切り辛いが、突然やられては迷惑千万である。


 しかし、新必殺技を編み出してハイになっているのか、コジローはますます勢いを強め、振り回す。周囲の見習い騎士達も「危ねっ!」と騒ぐやら、「いいぞやれやれー!」と煽るやらで、段々と収集が付かなくなって来た。


「はっはー、どうでござるか! これぞ我が剣の冴え、向かう所……あ」


 なるほど、確かにその剣を見切る事は困難であったのだろう。


 その証拠に、勢い余ってコジローの手から「すぽーんっ」と飛んで行った木剣

は、見事に様子を見に来たレイナールの顔面に直撃したのだから。


「「「……………………」」」

 凍り付く一同を前にしばらく無言で佇んでいたレイナールは、やがてゆっくりと口を開いた。


「いやあ、コジローさん。しっかりと訓練に励んでいるようですね。他の皆さんも楽しそうで何よりです。ふふふ」

 そう言って、にっこりと笑顔を浮かべる。


「「「あははははハハハハハハハハハ」」」


 アイシャ始め、見習い騎士一同からも、笑い声が上がった。






 その後の惨劇を語る術を、筆は持たない――

 



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