無慈悲な審判
もしここが、配役のまずい劇場であったなら。この歪な舞台で、あといくつふざけた役どころを演じなければならないのだろうか。
目の前にそびえる法壇を見て、誰も助けてくれないんだと実感した。
咳1つ立てることすらためらわれる、厳かな空間。法廷の被告人席に立つ少年は、自分の位置よりずっと高い場所に座る裁判長をぼんやり見上げた。
少年を軽蔑する冷たい瞳。時折そこにいたぶりの色がよぎっても、少年はもう動じなかった。
どこもかしこも痛めつけられた。身体も、心も。外からは見えない部分だからこそ、ズタズタにされた。
自由なんてどこにもない。必死で願った救いは叶わなかった。
本当は立っているのすら辛くて、被告人席の手すりを握って耐えていると「ふらふらするな」と叱責された。
グッと歯を食いしばって、無理やり背筋を伸ばす。
よどみなく耳に入ってくるのは、傍聴席の奴らが交わす囁きと、身に覚えのない犯行を読み上げる青年の声。耳を塞いで嘘だと喚きたくても、そんな気力すら残っていない。
ひどくみじめで、滑稽だ。
裁判長が、罪状を認めるか尋ねてきた。
刹那、少年の胸に熱が灯る。
――――護らないと。あの子を。あの子まで巻き込まれるわけにいかない。
何もかも奪われた自分の、せめてもの意地。最後のよりどころだった。
駆け巡るのは、かけがえのない笑顔。無邪気な声。
護れなかった、小指の約束。
離れ去りぎわに零した涙を、どうして拭ってやらなかったのだろう。
諦めと後悔が喉を突き上げ、少年は口を開いた。