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裁きの庭  作者: いずれけす
第二章 囚われた過去と閉ざされた日々
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無慈悲な審判


 もしここが、配役のまずい劇場であったなら。この(いびつ)な舞台で、あといくつふざけた役どころを演じなければならないのだろうか。



 目の前にそびえる法壇(ほうだん)を見て、誰も助けてくれないんだと実感した。


 咳1つ立てることすらためらわれる、厳かな空間。法廷の被告人席に立つ少年は、自分の位置よりずっと高い場所に座る裁判長をぼんやり見上げた。

 少年を軽蔑する冷たい瞳。時折そこにいたぶりの色がよぎっても、少年はもう動じなかった。

 どこもかしこも痛めつけられた。身体も、心も。外からは見えない部分だからこそ、ズタズタにされた。


 自由なんてどこにもない。必死で願った救いは叶わなかった。


 本当は立っているのすら辛くて、被告人席の手すりを握って耐えていると「ふらふらするな」と叱責された。

 グッと歯を食いしばって、無理やり背筋を伸ばす。

 よどみなく耳に入ってくるのは、傍聴席の奴らが交わす囁きと、身に覚えのない犯行を読み上げる青年の声。耳を塞いで嘘だと喚きたくても、そんな気力すら残っていない。


 ひどくみじめで、滑稽だ。

 裁判長が、罪状を認めるか尋ねてきた。

 刹那、少年の胸に熱が灯る。


 ――――護らないと。あの子を。あの子まで巻き込まれるわけにいかない。


 何もかも奪われた自分の、せめてもの意地。最後のよりどころだった。

 駆け巡るのは、かけがえのない笑顔。無邪気な声。

 護れなかった、小指の約束。

 離れ去りぎわに零した涙を、どうして拭ってやらなかったのだろう。

 諦めと後悔が喉を突き上げ、少年は口を開いた。



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