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最後のぬくもり
命を賭して護り抜く。
高らかに謳われ、全てを左右する審判。背くことは許されない『正義』の名の下、決意を胸に立ち向かう。
精一杯あがいてでも、私はこの道を選んだのだ。
いい子にして待っているんだよと、頭を撫でられた。すぐ帰ってくるから、って。
聞き分けの悪かった私は、その袖を掴んで離さなかった。泣いて、叫んで。周りの人にどう思われようが構わない。縋りついていればその人はずっといてくれると思った。
泣いてばかりの私に呆れたのかもしれない。息を詰めたその人は一度だけぎゅっと抱き締めてきたあと、袖に思い切りシワをつける私の指を一つ一つ、そっと外していった。――――何も、手に残らなくなった。
覚えているのは、屋敷の周りを取り囲んで騒ぐ街の人々と、怖そうな顔つきの男の人たち。涙のせいで、おかしくぼやけていた。
そして、遠ざかっていく兄の背中。
貴方は今も帰ってこない。