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 もちろん、自分が持つ専門知識を武器にする、深くまで調べ抜いて専門用語をちりばめることで雰囲気を出すというテクニックもあるのですが……ここにも罠がある。

 歴史など調べると良くあることですが、一つの事実に多説が存在することがありますよね? 

 光秀に織田信長を討たせた黒幕がいる説や、徳川の埋蔵金は極秘裏に掘り出されていた説、他に有名どころは……義経は奥州では死んでいない説か?

 一時、そういった歴史ミステリー系のテレビ番組がはやったが、そのうたい文句は「新事実が発見されました!」と言うようなものであった。

 アザとー、正直せせら笑い。発見されたのは『新事実』ではなく、『新資料』だっつーの。

 歴史こそフィクションの多い分野で、太閤秀吉が自分の誕生の逸話を、意図的に書き換えたことなどはあまりに有名である。同時代に生きていたファンが、二次創作しちゃった話も史実に紛れてたりするのではないかと、アザとーは密かに思っている。

 もしかして、何気ない書状を解読してみたら、暗号で書かれた暗殺指示書だったりして……というコトだって無くはないだろう。

 書き手を目指すなら、それを『ネタ』にするテレビに踊らされるのではなく、その姿勢をぜひとも見習いたいところである。

 例えば歴史系番組の基本は、一つの説だけに絞って切り込むことである。

 諸説紛々ある中で『信長暗殺、黒幕存在説』を採用したとしよう。深く深くまで切り込んだ事実など必要ない。必要なのは『黒幕の存在』を指し示す資料だけだ。

 ざっと見回し、黒幕に為り得る人物に集中して調べれば、使えるネタはいくらでも見つかるだろう。多少のこじつけでも……


 小男はアゴを抱えてしまった。

「ワシの方が天下人に向いとるか? ほんでも、恩義もあるでなぁ……」

 彼こそが後の太閤となる男、その人である。

「光秀に文でも送ったるか、ワシからだと分らんようにしたってよお」

 彼は文箱を引き寄せた。


「で、これがその文です」

 とやれば、番組の構成上はばっちりである。

 あとは史実の中からそれに繋がるエピソードをいくつか拾うだけでいい。

 秀吉悪人説を採用するなら、善人であるというエピソードすらも悪意ある目線で解析する、後年の奇行も罪悪感によるものにしてしまえ……というように、全てを秀吉悪人化のためのネタにしてしまう。

 論文を書くわけじゃないので、その情報の信頼度や最新であることは二の次。『事実』でさえあれば利用可能なのです。

 ただし、一つの作品に取り入れるのは一説だけ。

 どんなに優秀な理論にだって異論が存在するのだから、この世の全ての異説を取り入れたりしたら、大変なことになるのです。


 紀元3000年の地球に美男美女しかいないのは、ダーウィンの進化論どおり、自然選択の結果である。

 しかし、彼女の進化論は少々違っていたようだ。

 汚染された大気を処理するための大きく開いた鼻の穴、遮光率の高い細い目、より貪欲な食餌のために発達した分厚い唇、身体はぼってりと丸く、異常にくびれた腰……


 ね? 大変な生物が誕生しちゃったでしょ?

 冗談はさておき……現実にある一説をそのまま利用するにせよ、いくつかの説を組み合わせて独自の理論を組むにせよ、それは『物語の設定』上の問題に過ぎないのです。

 集めた資料に振り回されること無く、自分に必要な事象だけを意図的に抽出するという悪意ある行為が、書き手サンには許されているのです。

 リアルの生活でまでやってはいけないのですが、ね?


 ごめんくださ~い。

 ○○教育のものですが、ただいま1,200円にてお子様の全国平均がわかる実力テストを行っておりまして……え? いえいえ、教材の販売ではないんですよ。

 2008年の学習指導要領の改正に伴ないまして、学力基準が大きく変化しており、ゆとり教育のときに行われたテストで十分な点数をとっていたお子様の、実に15パーセントが新基準の学力テストではその実力を発揮できない『潜在的おちこぼれ』であるという報告がなされております。それを見極めるための小学校6年間の要点をまとめたテストなんです。

 いえ、普通の学力テストと変わりはございません。学校のテストと同じように1教科1枚程度にまとめられているのですが、全国の平均値を考慮しまして、本当に必要な基礎の問題だけを抽出してありますから。


 やべえ、俺、適職詐欺師って占いで言われたことあったわ。

 実はこの一言、ツッコミどころ満載なのではあるが、それをやっちゃうと俺が詐欺師になったときに困るので細かくは言わない。

 ただ、ここでのテーマに沿って言うなら『潜在的なおちこぼれは15パーセント』と算出した資料と『全国平均』は同一のものだ。テストの要点はたった15パーセントのおちこぼれにあわせて作られたものであり、そもそも『全国』ではなく『抽出』だろうと俺は思うのだが……

 要するに小説などこれと同じ。抽出された情報が想像世界での全国平均としてまかり通るのだから、事実を精査するよりも利用できる情報を募った方が良いに決まっている。

 ただし、一からの嘘を構築するのはアカン。ある程度きちんとした裏づけと認知度のある情報を組み込んでこそ、虚構はリアリティと生彩を放つのである。

 資料は広く集めよ、そして選び出せ。選んだ後は誰かが物申しても「そういう設定だから」と開き直ってしまえ。でなきゃ虚構など作り出せない。ですな?


 さあ、資料集めはこれでばっちりっすね?

 より多くの資料を集め、あなたも立派な詐欺師……うにゃにゃ、書き手さんになってくださいね? 


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