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黒い竜と白い竜  作者: タカチ
第2章
24/24

紺色と銀色


じりじりと焼け付くアスファルトを踏みしめアーサーの家に向かう。

夏らしくて良いのだが非常に暑い。蝉の鳴き声も心なしか空元気に聞こえる。



「梗夜―?」

家の前で立ち止まりなぜかクロは庭の方に声をかけた。

なぜインターホンを使わないのかと思っていると、低木の脇にしゃがみ雑草を抜いている梗夜さんを見つける事が出来た。


「雛様!お待ちしていました。ヒマワリが綺麗に咲いたので庭でお茶でも飲みませんか?」


庭の手入れに勤しんでいた梗夜はクロを見つけると綻んだ笑みを浮かべて庭に案内してくれた。その後ろをすごすごと雄輝が歩き、雄輝の影に隠れるように銀二が後に続く。

木漏れ日の下にテーブルとイスが用意されておりアーサーがお茶を入れているようだった。


「こんにちはー」

「おー、今お茶を入れているからちょっと待っていてくれ。梗夜が風で涼しくしてくれているが水だしの紅茶にしてみた。気分的にも熱いのより冷たいほうがいいだろ?」


「そうですね、ここは涼しいんですが道中が暑かったので冷たいほうが助かります」


俺はアーサーさんの元に行き、茶菓子のセッティング等を手伝うことにした。


(だって向こうの空気怖いんだもん!)


この場合の向こうの空気とは梗夜達がいるところを指している。

ニコニコしているけど、こめかみに青筋を立てている梗夜さんと、鼻先を地面に向け耳を垂らしている銀二さん、クロはヒマワリを眺めていた。


「ところで雛様、そこに連れている野良犬の如き姿の者は銀二君で宜しいのでしょうか?」


「ええーと、そうだよ。昨日見つけたのさ。梗夜が銀二に用事があるって言っていたから連れてきた」


(クロよ、梗夜さんの目を見て話した方がいいと思うよ。クロが怒られているわけじゃないんだから。あと、銀二さんが可哀そうだからフォローしてやれよ!)


心の中で呟いてクロに伝わっていることを願う。


あ、ちらっとこっち向いたから気づいているな。



「いつまでそんな姿でいるつもりですか?」

「いやー、久しぶり!」


「私は犬と会話している変人に思われたくないのですよ?」

「狼なんだけ……ど」


銀二さんがしゃべるごとに風が強くなっていく気がする。

今はヒマワリがゆらゆら揺れている程度だが……。


「まあまあ二人とも落ち着きなさい。銀二ここは貴方が折れるべきところよ」


クロもこれ以上風を強くさせるのは不味いと思ったのか二人の重ーい空気に割って入った。

銀二さんは渋々というような感じで、クーゥンと一声鳴き人間の姿をとった。


くすんだ銀色の髪に赤い目、そしてなぜかパンク系ファッション。

凄く似合っている!でもなんだろうこの激しく残念な気持ちは!!


「はぁ、まだそんなチャラチャラした服を着ているんですか。でもまあ良いでしょう。ちょっとあの木元気がないので様子を見てもらってください」


「いやいや、呼びつけておいて用事が木の世話かよ!!もっとなんか重要な用事とかじゃねえのかよ!?」


「は?なに言っているんですか?これも大切な用事です?というよりこれが終わったら、今までどこに行っていたかお説教タイムですよ?」



銀二はくーぅんと一声また鳴いてしまった。




「アーサーこのお茶はうまいなぁ!お菓子もうまいし、今日は良い日だなー」


決して後ろを振り向かないクロとアーサーさん。

俺は視界にちらちら映る暴力沙汰を見てひやひやしている。

梗夜さんのお説教に耐えられなくなった銀二さんが逃げようとしたのが原因だ。



「いやいや、クロちょっと現実見てよ!お前の子分達あっちで殴り合っているからね!!アーサーさんも梗夜さん止めてください」


「俺には怒った梗夜を止めることは出来ない」


「うむ。梗夜はねちっこいから怒らせると大変なんだよ。だから気が済むまでらせておけばいい」




彼らは龍に似つかわしくないような肉弾戦を繰り広げていた。

主に攻撃を受けているのは銀二さんだが。


梗夜さんは銀二さんの攻撃を紙一重でよけカウンターを与える。

一発一発の梗夜さんの攻撃は弱いようだったが、相手に不快感を与えるには十分な威力だった。

銀二さんはそろそろ忍耐力の限界なのか攻撃が大きく重くなってきた。上段のけりで顎を狙ったのだろうが交わされ、軸足を払われる。地面に吸い寄せられるように激突し、梗夜さんはすかさず銀二さんを踏みつけた。


「攻撃が単調で面白くありません、しばらく見ない間にここまで落ちているとは思いませんでした」

銀二さんに足を乗せ体重をかけながら人の悪そうな顔で笑顔を浮かべている。


「うっせーな!!ちまちました攻撃より一発で片づけた方が楽だろうが!あとその足どけろ!!」


踏みつけられてもがくが抜けられないようだ。


「そのわりに地面と仲良くやっているみたいですけどね。因みに逃げようとしたらただではおきませんよ?」


そういうと梗夜さんは足をどけて、スタスタとこっちに向かってきた。


「ふー、やっぱり運動の後は甘いものですよね」

「ハハハー、そうだなー」


龍2匹が楽しそうにお茶をしているなか、俺とアーサーさんは庭の隅で丸くなっている銀二さんに同情してしまった。


「おい、うさぎー、そんなところにいたらアーサーに紹介出来ないでしょ。さっさとこっちに来なさい」


クロ空気読めよ!もうちょっと落ち込ませといてやろうぜ!!と心の中でアーサーさんと俺は顔を見合わせてしまったが抗議はしなかった。




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