試験
「失礼します」
ここは俺たちが勉強している棟の隣にある実習棟だ。ここは、属性にあった能力の使い方を学ぶところでよくお世話になっている。
普段使っている棟も一般の学校に比べるとかなり頑丈に作られていて、ファイヤーボールやサンダーボール程度の初級の術なら傷などつかないが、大きな力を練った術は防ぎきれない。
実習棟は棟自体に結界がかけられていてちょっとやそっとじゃ壊れないようになっている。
結界というのは便利なもので攻撃の防御はもちろん探知や、侵入者を防いだり様々な役に立っている。
「いらっしゃい。学年、クラス、名前、属性を教えてください。尚、この会話、映像は現在ここにいる教員と校長以外には公開しないのでご安心ください」
うん、湯沢が言っていた通りの人数で、今しゃべっていた先生は基礎龍術の関野先生だ。龍術とは預かっている龍の力から属性を外し、オーラとして飛ばしたり、回復(麒麟ほどの完全な回復は不可能だ)等に使ったりする。
因みに巨乳である。俺はそれほどでもないが、湯沢やそのほかの男子からは絶大な支持を得ている。
あと、属性は隠しきれなくても切り札となるものや、発動の癖など隠しておきたい人もいる。そのために先ほどの約束が必要とされるのだ。
「はい、1年、特殊クラス、高取雄輝。属性は重力操作です」
俺はよどみなく答えた。そう、俺の能力は重力操作らしい。いまいち良くわかっていないのはクロの能力の汎用性が高すぎて扱いにくいせいだからだ。その中で比較的まともに使えるのは重力操作だと俺は思っている。
「はい、では高取君、自分の出来る属性の技を見せてください」
ここでの技とは攻撃だけではなく防御や、サポートなど様々なものを指している。
「はい」
自分を集中させるために返事は短くした。
「まずは物体の重力変化を行います」
そう言って前もって用意してもらっていた100kg程度の石の前に行く。
能力を見せるための備品なら学校の申請が通れば用意してくれるのだ。
俺は石から2mほど距離をおき、両手を石に向けた。別に行動に意味があるわけではないが、クロの勧めでそうしている。
これには意外とコツがいり、見ただけでは重さなんてわからないので力加減が難しく、いきなり軽くしすぎて天井にぶつかるようなことがあったら減点ものだ。
ぐらっとバランスを崩したように石が揺れた。下を見ると床から30cmほど離れ、空中に浮いている。浮かびあがる際に重心が真ん中になるように動いたのだった。
そのまま、ゆっくりと上昇させ、1mほどの高さにとめる。
おー、と試験官達から感嘆の声が上がった。
「ちょっと乗ってみてもいい?」
関野先生が俺に問いかけた。
「どうぞ」
関野先生は石の前に移動し、両手をつき体重をかけた。石は少し沈んだが先ほどの高さに戻る。
「もう十分よ。ありがとう」
先生が離れたところで石をその場に下ろした。
この後は過重化や、人間の三半規管のかく乱、自身の一部過重化等気軽に見せてポイントの高そうなものをいくつか披露した。
「もう、いいわ。ありがとう。次の人を呼んできてちょうだい」
関野先生から終了の声がかかる。一つやり残していると思うので声をかけた。また受けに戻って来いとか言われたくないし……。
「龍力測らなくっていいんすか?」
俺は入り口付近にある細長い黒曜石のような石を指差した。
「あれは、いいわ。君は規格外だからね。感知専門ならこれくらいはわかるのよ。それにまた壊したいとでも言うのかしら?」
あれは微笑んでいるけど怒っている時の顔だ。ゴゴゴーと鬼気迫るオーラが出ている。
あの石はかなり高いらしく、関野先生の授業が自習の時に使った事がある。その時に俺は自分の龍力を測定しようと手をかざし、次の瞬間炸裂させてしまったのだ。俺はクラスの男子(湯沢)を巻き込み、教室の壁に激突し石の破片でズタボロになったわけだ。
関野先生は石の責任など始末書をいっぱい書かされたらしく、こうして俺に嫌味を言ってくるときがある。
「うい……。すんません」
次の人呼んできまーす。と俺はすごすご教室に帰って行った。
因みにクロも形だけは試験を受けている。
もちろん合格出来ないわけがないのだが、何やら帰りが遅かった。
心配して話を聞いてみると、先生方の龍と話をしていたらしい。
何やら最近西のほうできな臭く、馬鹿な民族主義を掲げる国の人間や鬼たちから嫌な感じがすると。
そうゆう空気を読むことの出来ない若い龍がこの国から出って言ったきり帰ってこないらしい。なるべく近づくなと言ってあっても血気盛んな連中は言うことを聞かなくほとほと困っている。と愚痴られたそうだ。
俺は何も起こらないと良いなと思い、きっとこの願いは叶わないということも薄々感づいていた。
UPします。
さむいなりー。