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黒い竜と白い竜  作者: タカチ
第2章
17/24

瞑想

「アーサー、大丈夫でしたか?」


梗夜はそう言ってアーサーの頬に出来た傷の周りの血を拭う。傷口はもうふさがり乾いた血だけが残っていた。


「ああ、傷はもう平気だ。最初の攻撃のとき、砕けた障壁が掠ってな。それより、攻撃が見た目や雰囲気よりも質量があって驚いた」


黒いオーラを放ちながら迫ってきた球体にそれほどの力が込められているとは思わなかった。実際第二第三の球体のほうが大きく空気のゆがみも激しかったのだ。


「それは雛様の特性ですね。これから雄輝君と鍛えていくことになりますから追々わかると思いますよ」


やっぱり教えてはくれないか。基本属性でないことはわかるが対処した事の能力は不安だ。きっとこれは契約したての雄輝とのハンデの意味合いもあるのだろう。


「あ……、うらやましい!」

「なにがうら……!」

羨ましいと言った梗夜の視線の先には雄輝をお姫様だっこしたクロがいた。

何やら雄輝は暴れているようなので本人的には不本意な体勢のようだ。


「べっ別に抱っこくらいいつでもしてやるぞ!」

「いえ、雛様にしてもらいたいのでいいです」


アーサーの羞恥心と努力が無に帰った。






「さて、雄輝もぼろぼろなので休憩を入れましょう」

アーサーたちの元へ着くとクロは提案した。ちらちと雄輝に目をやり軽いプレッシャーをかける事を忘れない。


「はい、では梗夜が雛様のために腕によりをかけて作ったお弁当を食べてください!」


そう言って梗夜はバスケットの中から大きな水筒と3段のお重箱を取り出した。中には卵焼きやポテトサラダ、お稲荷さんなどクロの好物でひしめきあっていた。


「じゃあみんなで」

「「「「いっただきまーす」」」」


「やっぱり梗夜が作るご飯はおいしいね。私の嫁になることを許そう」

お稲荷さんをもぐもぐしながらクロは尊大な態度で梗夜をほめる。

「本当ですか!?」

嬉しそうに梗夜は顔をほころばせる。

「いやいや、ちょっとおかしいから。お二人さん性別間違えていませんか!?」

雄輝は一般的な問題を指摘したが、アーサーにいたっては先ほどから心ここにあらずだ。


「私はお嫁さんでいいです!」

「そう本人も言っているのでいいんじゃない?」


ねえ?とクロと梗夜はお互い首をかしげる。


「全然良くない、梗夜さんは夫じゃないと不味いでしょ」

「そう言っても、私自分より強い相手じゃないといやっていうか。ほら、旦那を守らなきゃいけないのっておかしいじゃない?」

「そうですよね……、私まだ雛様より弱いから」



なんだか梗夜まで落ち込ませてしまったぞ!

「じゃあ嫁でいいんじゃいですか!?大体クロより強い龍ってそうそう要るもんじゃないし」


俺はここであえて具体的な名前を出さなかった。穏やかな空気を壊すのも悪いと思ったし、今の俺ではクロにとって何の役にも立っていないからだ。




「では、食べ終わったのでまた訓練を開始したいと思います」


クロは長い髪を梗夜の持ってきたゴムでポニーテールに髪形を変え、マネージャー気分を楽しんでいる。

ほんとに梗夜さんは準備がいい。むしろストーカーなのではないかとさえ思う。


「えーと、今度やるのは瞑想だ。さっきのぶっつけ合いでかなり力を消耗していると思うので瞑想をして地脈から力を分けて貰おうと思います」


地脈?瞑想?なにそれー。

どうやらアーサーも初耳の様で真剣に聞いている。


「私たちの様な龍から加護を貰っていると元々の力が強いのであまりこの技を教えません。教えても使わないからね。でも雄輝は私の力に振り回され気味なのでこっちの使い方も学んで貰います」


なるほど。必要ないけどあったほうが便利ってやつか。


「アーサーさんは必要ないんじゃないの?」

「はい、雄輝君その通りです。でもアーサーもいい機会なので学んでもらおうと思います。これは龍の気配を消したいとき、おもに隠密行動の時に役に立ちます」


ふむふむ、とアーサーさんはうなずいている。

梗夜からはアーサーさんについての注意事項が述べられた。


「因みに、梗夜はこれが苦手だからアーサーには教えられなかったのだー」

「ちょっと、雛様それは言わない約束では!!」


ふふふーといってクロは誤魔化しに徹した。




「まず胡坐をかき、リラックスする。そして、自分と世界の境界線をあいまいにして溶かしていくイメージを作る。まずはここまでやってみて」



俺たちは芝生の上に胡坐をかきイメージしやすいように目をつぶった。リラックス、リラックス。


あははははー。うふふふ。


「ちょっとうるさいんですけど!」


クロと梗夜は梗夜が持っていたマンガ本読み抱え腹を抱えて笑っていた。


「いやーごめんごめん、気を付けるわ」

「すみません」


二人して謝っていたが絶対に反省なんかしていない。現に忍び笑いが聞こえているし。

きっとこれも訓練の一環なのだろう。そう思いあきらめた。


そう、最初はこれだけの妨害だったが、後々どんどん酷くなっていった。


じーっと見つめる。これは自分と世界を曖昧にしようとしているときにやられると大変困る。なぜなら見つめられる事で自分を意識してしまい、ぼかす事が出来ないからだ。目を閉じればいいと思っても龍の目を甘く見てはいけない。


視線が利かなくなると直接触れるなどの妨害もあった。




「今日はここまで、二人ともよく頑張りました」

「「ありがとうございました」」


二人揃ってクロと梗夜にお辞儀をした。


「ところでアーサーはなんでそんなにぼろぼろなんですか?」

そう、一緒に瞑想していたはずなのになぜかアーサーだけぼろぼろになっていた。


「梗夜とクロが気を抜くと軽い攻撃を仕掛けてきてな。カードしながらだったんだ。さすが梗夜の師匠だけあってスパルタだな」


そんな事実があったとは!?きっと俺もそのうち餌食にされるのだろう……。



訓練の後篇です。


次回からは訓練部分は短くします。

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