スタートライン その7
《七月 二十日 PM0:45》
「どうすんのさーエナ、二人に声をかけて二人とも仲間になってくれなかった。元々全員が仲間になってくれなくちゃ部員の人数が足りないのにー」
「ふふ、夏休みは長いよ。その間にゆっくり説得して行こうよ」
そう言いながら二人は二年A組へと向かう。
二年A組についた瞬間、秋村がどこにいるかはすぐにわかった。
なぜなら、秋村のいる机を中心にぽっかりと穴があいたように人が存在しなかったからである。
秋村本人は静かに自分の席で参考書を開いていた。
「すごい迫力だね」
秋村からはまるで寄らば切るというようなオーラが漂っていて、話しかけでもすればすぐさま食い殺されそうな雰囲気があった。
人垣が引いているのもうなずける。
「じゃあ話しかけるよー」
しかし、デュオは怖気づいた様子もなく、秋村に近づいて行った。
「あなた、秋村源一郎ね。ちょっと話があるんだけど」
その言葉に反応し秋村がギロリと視線を動かす。
「…………話? 俺にか?」
「そ、そうだよ」
エナの声が若干おびえ気味である。
「君を私達のグループに誘いたいんです」
「…………俺を? なんの?」
「学校に喧嘩を売るためのグループだよ」
秋村は怪訝そうな顔をした。
「まるで、なんで嫌われ者の自分を誘いに来たのかって言うような顔ねー」
「…………だが実際にそうだろう。何か裏でもあるのか?」
「べつに裏なんかないよ。ただ単に君が優秀だということを聞いてきたから入ってもらおうと思っただけだよ」
「…………優秀? ただ勉強ができるだけだ」
「それだけじゃないよね。それだけじゃ文武両道をうたっている西栄高校に在籍してトップクラスの成績を残すことはできません」
「…………」
秋村はエナの顔をまじまじと眺める、それに対してエナは笑顔のままだ。
「…………そこまで知っているなら俺がなんで学校を追い出されたかも知っているだろう。親友との喧嘩。俺は親友を病院送りにするほどの怪我を負わせた」
「それで」
その続きを待つかのようにエナが促す。
なぜエナがそのことを知っているのか、それについてデュオは何も聞かない。あえて聞かないのではなく、気にすらしていないのだろう。
「…………俺はお前たちのそのグループに入ることはできない。入るわけにはいかないんだ」
それから後、秋村は一言たりとも口を開こうとはしてくれなかった。




