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次への希望

《九月 十六日 PM7:30》

 夜、校長室には二人の人間がいた。

「待っていてありがとうございます」

「……貴様!」

「校長先生がそんな汚い言葉を使ってはいけませんよ」

 片方は校長、そしてもう片方はエナだった。


 校長はデュオと話していた時の温厚さはなく、怒りをあらわにしていた。

「貴様らのグループのせいでどれだけうちの高校が被害をこうむったか!」

 そのセリフを聞きながらもエナは妖艶な笑みを崩さない。


「それは災難なことですね。でも今日はそのこととは関係のないお話をしに来たんです」

「どういうことだ?」

 校長の顔に疑問符が浮かぶ。

「無様に逃げ出したらしいが実行犯の名前を公表すれば貴様らは全員捕まるのだぞ」


「浅井さん、五十嵐さん、岡安さん、黒木さん、佐々木さん」

 エナが名前を羅列すると、さっきまで怒りをあらわにしていた校長の額を、言葉とは裏腹に汗が伝う。


「校長先生、ずいぶんと顔が広いですね。ああそれと僕が持っているこのテープ、今回の事件とはまったく関係ないんですけどね。今日、事件が終わってホッとしてあちこちに電話をかけたあなたの声と」

 校長の額の汗の量が増す。

「どこかの高校の校長とある議員の会話が入っているらしいんですよ」


 さっきまで赤かった校長の顔は心なしか青く見える。

「どうも来週にある選挙のために議員の票集めを校長であることの人脈を利用して手伝う代わりに多額のお金を受け取るっていう話をしているらしいんですけど」

 エナは一度ここで言葉を切る。


「…………何が目的なんだ?」

 校長の顔は青を通り越して白。

 脂汗にまみれ泣きべそをかいたような顔をしている校長は哀れを通り越してどこか滑稽だった。


 エナは校長のそんな様子をさげすんだ目で見る。

「選挙が来週で焦るのもわかりますが盗聴器があるのかどうかくらいは確認したほうがいいですよ」

 エナが学校を一回、全て占拠させたのは、校長室に盗聴器を仕掛けるためでもあったのだ。

「な、なんでもする。だから公表だけは」

 土下座でもしかねない勢いで校長がエナに懇願した。


「大丈夫ですよ。僕が頼むことはあなたに対してそこまで損な話ではないと思います。それをしていただければこのテープは差し上げます」

「……ちゃんとマスターテープでコピーはないんだろうな」

 テープを渡すと聞いて校長が少し余裕を取り戻す。


「安心してください。ちゃんとマスターテープですよ。コピーもありません。ただし、もしも約束を守らなかったら議員の方を脅して自白させます。そうしたらあなたも道連れです」

「解った。ならば願いを聞こう。その願いとはなんだ」


――弱みを握られているにしてはでかい態度だな。

 この校長自分の立場が解っているのだろうかとエナは思いつつ。

 エナは校長の態度の変化に少々興ざめしていた。

 しかしそれは顔には出さなかった。


「その願いはですね――


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