機動隊 その3
《九月 十五日 AM11:00》
「おっしゃあ。投石トラップ成功」
石ではないが、とまわりにつっこまれながらもトラップの指揮を任されていたペンデははしゃいでいた。
そこにテセラが屋上まで上がってきた。
「エナさんからの伝令です。トラップ成功したら三棟前は放棄して渡り廊下から二棟へ移動。渡り廊下を封鎖したら 第二トラップの用意をするように、だそうです」
「よしわかった。撤収」
そう言うが早いが生徒達はもっていく荷物を持つとあっという間に走り去り、三棟屋上には誰もいなくなった。
《九月 十五日 AM11:10》
「何? 三棟前がもぬけの空だと」
「そうです、生徒達は三棟前を放棄し二棟前まで前線を後退。そのまま待機しています」
「妙だな……」
本来ならこちらが退いて、態勢を立て直している間に三棟前を取り戻せるはずなのに生徒達はそれどころか二棟前まで退却している。
「きっと恐れをなして逃げたんですよ。隊長、攻め込みましょう」
「お前はさっき痛い目を見たのにまだ懲りないのか」
「と言いますと?」
隊長はさっきとは違い、今度は盛大にため息をついた。
それを見た副隊長は少しむくれる。
「罠の可能性があるな。まずは三棟前に人数を並べて、三棟内を探索、そして二棟内に入って生徒達がいるようだったら捕獲しよう」
「と、向こうは思っているんだろうね」
「でも、あんな罠に引っ掛かるかなー?」
「大丈夫だよ。きっと機動隊はあのトラップを前に立ち往生する」
《九月 十五日 AM11:20》
「三棟と二棟をつなぐ渡り廊下は防火扉が閉まっていて開けることができませんでした。向こう側にバリケードでも積んであるものと思われます」
「そうか二棟へは入れなかったか……なら、三棟内に異常はなかったか」
「ありませんでした」
機動隊の陣営では隊員が三棟に入った時の様子を隊長に報告していた。
「むぅ、これでは生徒達が何やってるのか解らなくてうかつに攻め込めませんね」
「そうだな。二棟を三棟から見た時はどうなっていた」
「二棟には生徒達はいましたがどんな罠を仕掛けているかは確認できませんでした」
その報告を聞いた隊長は心の中で舌打ちを一つついた。
「……仕方がないしばらくこのまま待機して生徒達の動向を探ろう」