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スタートライン その3

《七月 十三日 AM6:30》

 エナが朝ごはんを食べていると唐突にインターホンが鳴った。

 エナがドアを開けるとやっぱりというかなんというか、デュオがいた。

「へーい! エナ起きてる?」

「目の前にいるのにその挨拶は変だと思うよ」

「おー、そう言えばそうだ」

「それに私はたいていこの時間には起きているよ」

「エナは早起きだ」

 デュオが中に入り靴を脱いだ。

「例のこと。大まかな計画はできたよ」

 まだまだ準備には時間がかかるけれど、という言葉をエナは付け足しながら、狭い六畳間の真ん中を陣取る背の低いテーブルの前に座るようにデュオに促し、自分も座った。

「で、どんな計画?」

「計画もいいけど、まず必要なのは立て籠もる理由だね」

「なんで?」

 間髪いれずにデュオが聞いてくる。

「普通は理由があるから立て籠もるんだけどね。理由もなく立て籠もっても外にいる人たちにはどうしようもないでしょ。飲む要求がなければ降伏のしようがない。ける要求がなければ戦いようがない。ただの愉快犯じゃ何も始まらないよ」

「じゃあどういうのを理由にするのさー?」

「デュオも自分で少し考えてみて」

「えーと……」

 デュオはしばらく考えていたが思いつかなかったらしく素直にホールドアップした。

「デュオ、リーダーになる気はない?」

「なんの?」

「これから私たちが作るチームの。チームといっても部活だけどね」

 そう言ってエナは生徒手帳を開き、エナは部活動の決まりが書かれているページで手を止めた。


1、部の名前が決まっていること。

2、部長がいること。

3、部員が部長も含め五人以上いること。

4、顧問の先生がいること。

5、活動内容を明記すること。


 以上の五点を部活動登録用紙に書き校長に提出し校長の許可を得れば部活動として認められる。

「この部活動を校長先生に却下させれば(・・・・・・)これを認めさせるという口実を得られるよ」

「でももし校長が認めちゃったらどうするのさ?」

 するとエナはいたずらっぽく微笑んで一枚の紙をデュオの前に置いた。

「認められないものにすればいいんだよ」

 その紙は部活申請用紙。

 そして活動内容のところにはこう書かれていた。


・活動内容について

 学校でのトラブルの解消。

 学校が起こした問題で生徒が困っているとき、生徒の代わりに学校を懲らしめます。


「これはいい! これなら認められるわけないし、万が一認められたとしてもこれなら楽しくなる。早くやろう」

 デュオは興奮して立ちあがり、玄関に向かって走り出した。

 否、走ろうとした、だ。

 走り出そうとしたとたんデュオは盛大に転んだ。

「なにすんの!」

 エナがデュオの足を掴んだからだ。

「まあ落ち着いてよ。ここまでやるからには私はこの戦争に勝ちたいよ。勝ってこのチームを作りたい。だから私たちは勝つための戦争をしようよ。たった二人で立て籠もっても見向きもされないよ」

 エナは微笑みながらデュオをなだめる。

「じゃあどうするのさ?」

「学校の生徒全員を人質にするんだよ」

 デュオはぶつけた鼻をさすりながら少し動きを止め、次に大きく息を吸い込んだ。


「えぇぇぇぇ!!」


「声が大きいよ。近所迷惑になっちゃう」

「あ、ごめん」

 デュオはエナに叱られ黙る。

「でも何で」

「私たちだけが立て籠もっても大人たちは最悪の場合、無視すればいいでしょ。それで実害はないし。でも生徒を人質にしているとなれば話は別。でも一人や二人だと話のもみ消しにかかるかもしれない。だからだよ」

「なるほどね」

 デュオがうなずいているとエナが部活動の申請書を取り出した。

「部長はデュオがなるんでいいよね。部員と顧問の先生は私がどうにかするよ」

「わかった。部長は私でいいよ」

 デュオはエナに期待をこめた視線を送る。

「私たちの戦いはここから始まるんだよね?」

 それに対してエナは微笑み返しただけだった。


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