体育館での説得 その2
《九月 十四日 PM4:15》
「はい、どうぞ」
エクシはそう言ってエナにいちまいの紙を渡された。
「…………これは?」
「これに書かれたとおりに行けば安全に二棟のその印の場所に行けるよ」
その紙には一棟から二棟二階、二年D組の教室までの道が赤い線で記されていた。
「…………ここに行くと何があるんだ」
「向こうの切り札」
エクシはしばらく考えていたがすぐ顔を上げた。
「…………鶴田教師か」
「正解」
今のところ教師の中で最大の駒である鶴田が捕まったという報告はない。
エナは教頭だったら鶴田をどこに待機させるかを予想したのだ。
「…………わかった。行ってくる」
エクシはエナの手から紙を受け取り、一棟の中へと進んでいった。
《九月 十四日 PM4:25》
あちこちで教師が捕まり捕縛されていた。
「おいエナ、これ以上はさすがに警察沙汰になる。学校側も警察沙汰にはしたくないだろうし。今もう一度交渉を持ちかけた方がよくないか?」
「まあ普通ならそうなんだけどね」
バリケードの向こうにいた教師はロープで縛られて正門から放り出された。
そして、一棟の中にいた教師達も同じような運命をすでに たどっていた。
「おい、普通ならってどういうことだ?」
その中でペンデは疑問をエナにぶつけていた。
「私達の目標は部を認めさせることだけじゃないから」
「まさか、機動隊に勝てるって言うのか」
ペンデのその声はこころなしにか震えていた。
「勝てるよ」
「それにそこまでやらなきゃつまらないしねー」
そこへデュオも会話に入ってきた。
「だけどっ」
「はい、そこで終了ー」
デュオはペンデの言葉をさえぎる。
「あとはエナが何とかしてくれるよ」
「なんとかって……」
そこでペンデがエナを見るとエナは不思議と無表情だった。
「やっぱりまだ怖い?」
ペンデは自分が唾を呑む音が聞こえたような気がした。
「――――いや、大丈夫だ」
ペンデは踵を返してエナから少し距離を取った。
そして、教師側はほぼ壊滅、学校は生徒の手によって占拠された。