開戦 その4
《九月 十四日 PM2:35》
結果から言うとエナと鶴田の鬼ごっこはあっけなく終わった。
エナはお手製のペイントボールを鶴田の顔に投げつけて、用意していた縄梯子で校舎を降りたのだ。
そして今、エナは体育館に着いて一休みしているところである。
体育館にはたくさんの生徒達が集まってきた。
その様子をエナは静かに眺めていた。
(体育館に集められた人たち、縛られているわけでもなく、扉に鍵をかけているわけでもないのに一人いとして出ていかない)
その様子が今の教育が生徒達からどう思われているかをはっきりと物語っていた。
そう思っているとエナはポケットの中に振動を感じた。
ポケットから携帯電話を取り出し通話ボタンを押す。
『エナ、一応のバリケード出来たよ。ちゃんとパイプいす同士を結束バンドで繋いでそれを門に結束バンドでくくりつけたよ。でもこれくらいだとすぐに撤去されちゃうんじゃない?』
電話してきたのはデュオだった。
「お疲れ様、それで大丈夫。ひとまず外から中が見えなくて、撤去するのに手間がかかればいいよ。そこにテセラもいるよね。一緒に撤収してきてよ」
『わかった』
電話が切れ、エナは携帯電話をポケットの中にしまった。
(ペンデからの連絡がない)
その事実がエナの不安を掻き立てる。
(捕まっちゃったのかな)
その時、体育館に備え付けられたスピーカーから音が出始めた。
『えー、この騒動の犯人に告ぐ。お前達の仲間を一人捕まえた。返してほしければ今すぐこの馬鹿騒ぎをやめろ!』
(やっぱり)
その時、スピーカーから妙に元気な声がした。
『あー、エナ、悪りぃ。捕まった』