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開戦 その3

《九月 十四日 PM2:00》

 エナが教師と鬼ごっこを演じていた時、デュオは椅子や机を運んでいた。

「どりゃぁぁぁ!」

 エナに体育館にあったパイプいすを正門に積み上げバリケードを造るように頼まれていたからだ。

 両手に女子とは思えないほど、否、男子でも持ち上げるのすら困難な量の椅子や机を走って運んでいた。

 デュオが正門前につくとシュールな光景が目に飛び込んできた。

 正門から入ってすぐにの広くなった場所に犬が、猫が、鳥が、その他多くの動物が大量にひしめいていた。

「な、何これ」

 デュオが呻くとその声に反応したように周りの動物がデュオに向かって襲い掛かって来た。

「ストップ、その人は僕の友達です」

 デュオはそのままの体勢で足を使って迎撃しようとしたが横合いに掛ってきた声に動きを止めた。

「あ、テセラ」

 動物達の中にたたずむようにしてテセラが広場の中央にいた。

「何これー」

 デュオはさっきと同じ言葉を繰り返す。

「エナさんにデュオさんがバリケード造るまでは人を近付けないようにって言われたんです」

「なんか嬉しそうだねー」

「友達に何かお願いされたのって初めてですから。なんだか少し嬉しいです」

「いじめを受けていたから?」

 デュオは言ってから自分の失言に気づいた。

「あ……ごめん。いじめなんて他人に知られたいものじゃないよねー」

 テセラはそのデュオの反応に苦笑した。

「いいですよ。どうせすぐにばれることですし。教室のアレ、見られてましたしね」

 テセラの顔に影が落ちる。

「僕の場合、まあ、いじめのこともありましたが積極的に友達を作ろう、って思わなかったんです」

 いつになくテセラが饒舌に話す。

(もしかして、聴いてほしいのかな)

「だからこそペンデさんみたいな人がうらやましいんです」

「どうして?」

「彼は、僕と違って人と話すのが得意です。デュオさん達とも初めて会ったはずなのにまるで前から知っていたかのように会話することができる。それができてうらやましいんです」

 テセラは話し終えると視線を落とした。

 そしてデュオは、左手を大きく振りかぶって――――

――――テセラの背中を思いっきり叩いた。

「痛ぁっっっ!!」

 大きな音がして周りの動物達が飛びかかりはしなかったが戦闘態勢に入った。

「しけた顔をしない」

「な、何で?」

「人としゃべるのが苦手だって言ってたけど」

 デュオは笑顔を作ると言い放った。

「今、私にたくさん話してくれたじゃん」

「…………」

「もう私達は友達なんだからさ」

 だから。

「友達がいないなんて悲しいこと言わないように」

 デュオが自分の掌を鳴らす。

「はい、わかったらさ。バリケード造るの手伝ってよー。ここを守るのは動物達がいれば十分でしょ」

 そう言うとテセラの顔がぱっと輝いた。


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